大塚久美子社長の空虚なポジティブ発言~ビジネスパーソンの言語学75

最近、説明や謝罪時の、違和感のある言葉遣いが話題になりがちだ。当コラムでは、実際の発言を例にとり、公私の場で失敗しない言葉の用い方を考える。ビジネスパーソンのための実践言語学講座75、いざ開講!


「今までの日本にない暮らしの新しい選び方をヤマダ電機さまとご一緒に提供してまいりたいと思います」―――経営危機が叫ばれるなか、ヤマダ電機の子会社になることを発表した大塚家具の大塚久美子社長

記者会見というのはコミュニケーションだ。登壇者は記者を通して、世間にメッセージを発する。対峙する記者の仕事は、そこに嘘やごまかしがないかを厳しくチェックすることだ。だが、12日に行われた大塚家具のヤマダ電機子会社化の記者会見では、登壇者の大塚久美子社長がコミュニケーションを拒否しているように見えた。

「時代に合った大塚家具にするために、あえて父の時代のやり方を変えなければならないこともありました。そのような観点から今期までの抜本的な構造改革を行い、おかげさまで黒字まであと一歩というところまでくることができました」

「家電と家具という異なるジャンルですが、暮らしをトータルに提案するというゴールは同じです。今までの日本にない暮らしの新しい選び方をヤマダ電機さまとご一緒に提供してまいりたいと思います」

世間が聞きたいこと=会社を倒産危機、身売りにまで追い込んだ経営責任への説明や反省は一切なく、ヤマダ電機との"コラボ"についての明るい未来を語る。自身の続投については、「引き続き頑張って、貢献をしたい」と語るのみ。その場にいた記者はもちろん、世間がポカンとしてしまったことに大塚久美子社長自身は気づいているのだろうか。

彼女いわく、この子会社化は、「これからの日本の住生活の向上に一番いいことをやるための提携」だという。だが、社長就任以来、わずか5年で会社を経営危機に追い込んだ経営者が、「日本の住生活」を語ることの違和感はぬぐえない。まずは足もとで苦しんでいる社員の生活を守ることが彼女の責務だろう。受け入れ側のヤマダ電機・山田昇会長が「チャンスを与える」と言うのだから、彼女の続投については外野が口をはさむ問題ではない。それでも大塚社長は続投するだけのまっとうな理由を世間にメッセージとして発するべきだった。

会見を通して感じたのは、大塚社長の経営者としてのコミュニケーション能力の低さだった。記者側の質問の意図を無視し、ひたすら自分の言いたいことだけを話す。しかもその内容は空虚なものばかりだ。そんな経営者が消費者の“声”を聞き入れ、応えることができるとは思えない。ヤマダ電機のおかげで一息ついたとはいえ、大塚家具の危機はまだまだ続くのではないだろうか。


Text=星野三千雄 Photograph=The Asahi Shimbun/Getty Images



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