モチベーションを上げる技術~中野信子 Passionable Brain~ 第2回

Passionable(常熱体質)とは、Passionとableを組み合わせた造語。仕事や遊びなど、あらゆることに対して常に情熱・熱狂を保ち続けられる=”常熱体質”である。今回は、戦国時代のキリシタン大名、大友宗麟(おおともそうりん)をキーパーソンに「モチベーションを上げる技術」とは何か。その秘密を脳科学の視点から解き明かす。

Key person:大友宗麟

組織のリーダーの仕事で最も重要なことのひとつは、チームの士気を高めることでしょう。士気の高さはビジネスの成果に直結します。その方法として有効なのはリーダー自身のモチベーションを上げること。組織はよくも悪くも上に立つ人間の影響を受けるので、トップの熱意は周囲に伝播します。裏を返せば、リーダーのモチベーション低下はそのまま組織全体の衰退にもつながってしまうわけです。

戦国時代のキリシタン大名、大友宗麟をご存知でしょうか。豊後国府内(現在の大分県大分市)に生を受けた宗麟は1550年に大友家当主となると、立花道雪(どうせつ)や高橋紹運(じょううん)といった優秀な家臣にも恵まれ、破竹の勢いで勢力を拡大。その10年後には九州の約80%を支配下に置き、大友家は全盛期を迎えました。しかし、そんな前半生とは一転、後年は領国経営の意欲も意思も失い、ひたすら信仰にすがって生きるようになります。戦があっても戦場に行かずに後方で礼拝に明け暮れる。そんな姿に家臣たちは反感を募らせ、領民の反乱も相次ぎ、結局島津氏によって滅亡寸前まで追い詰められました。当主の急激なモチベーションの低下が領内の混乱を招き、それが引き金となって大友家は衰退していくことになったのです。

モチベーションに大きな影響を与えるホルモンがテストステロン。脳内でのドーパミン生成を促してバイタリティを高めてくれます。宗麟の場合はおそらく、ストレスや環境の変化などがテストステロンの著しい減少を招き、ドーパミンの分泌が減って意欲や野望を失ってしまったと思われます。テストステロンの分泌を促進する方法として挙げられるのは筋トレ、亜鉛・ビタミンDの摂取など。また、高級外車に乗ると精神が高揚しテストステロン値が上昇するというユニークな研究もあります。

人のメンタルは脳内の物質によって左右されるので、その分泌を正常に戻すような外的刺激を入れることで状態改善の糸口を摑むことができます。そうした知識や技術を活用し自身のモチベーションを高める努力をすることが、成功する組織を作るには重要といえるでしょう。

Composition=宮寺拓馬(ゲーテ編集部)


中野信子
中野信子
脳科学者。1975年東京都生まれ。東京大学大学院医学系研究科脳神経医学専攻博士課程修了フランス国立研究所にて博士研究員として勤務後、帰国。現在は、東日本国際大学特任教授。脳や心理学をテーマに、研究や執筆を精力的に行う。著書に『サイコパス』、『脳内麻薬』など。『シャーデンフロイデ』(幻冬舎新書)が好評発売中。新刊『戦国武将の精神分析』(宝島社)が話題になっている。
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