巨匠・操上和美が捉えたあの偉人たち①【イサム・ノグチ&ロバート・フランク】

クロムハーツのノートカバーで作られた“アルバム”は、写真家・操上和美が自分自身のためだけに作ったもの。ページをめくると、今は亡き偉人たちの命が輝いていた。

LAで見つけたクロムハーツのノートカバー

カバーに縫いつけられたクロスが、まるで偉人たちに祈りを捧げる十字架のように見える。カバーをめくると、そこに並ぶのは操上和美がこれまでに撮った人物の写真。その共通点は、すでに亡くなった方ばかりということ。だいぶ古いものもあれば、つい最近のものまで。世界に1冊しかない、この“写真集”は操上が自分自身のために編集したものだ。

「亡くなってしまった方のなかで、特に好きな人、影響を受けた人の写真をまとめています。ファイルに整理しているだけだと、どうしても埋没してしまう。だから時々アーカイブから引っ張りだして、このアルバム用に写真を選んでプリントして収めています」

すでに亡くなった人ばかりが並んでいるにもかかわらず、操上によって選ばれ、丁寧にプリントされた写真が感じさせるのはまぎれもなく“生”の瞬間だ。

「撮影は、ある意味で命のやり取り。僕は命がけで彼らの“生”の輝き、輝いている一瞬を撮るし、そうやって撮った写真は、被写体が亡くなってからも輝きを失うことはない。たまにこのアルバムを眺め、皆さんが教えてくれたことを、ひとつひとつ思いだすようにしています」

彫刻家 イサム・ノグチ(1904-1988)

1988年9月27日撮影/雑誌『VOGUE PARIS』  1989年発行

鋭くて優しいその目に、彼の豊かさ、人間性を感じた。
撮影する前からイサム・ノグチを敬愛していた操上。印象に残っているのは、その目。グリーンとブルーが混ざったようなその目に、イサム・ノグチさんの生きざまを見たという。「年を取っても眼光は若者のように鋭く、でも澄んでいてすごく優しいんです。幼いころからアメリカで大変な苦労をした方なのに、それをまったく感じさせない。豊かな表情、優しい人間性に触れ、心の底からカッコいいと思いました」(操上)

写真家 ロバート・フランク(1924-2019)

1992年6月15~17日撮影/雑誌『SWITCH』   1992年9月号

操上が“おとうさん”と呼んだ「人生を教えてくれた人」
操上にとっては若いころからの憧れの写真家。日本語で“おとうさん”とも呼んでいたという。「一番、影響を受けた写真家です。NYの自宅兼オフィスで撮影させてもらい、その後、カナダの別荘にも行きました」。来日時には、操上の父の墓参にも同行し、ともに北海道を旅した。「ロバートは家族を悲しい事故で亡くしたり、苦悩を抱えながら写真を撮り続けた人。人生とはなんたるかをたくさん教えてもらいました」(操上)

Photograph=操上和美 Text=川上康介