"史上最もクールな大統領"バラク・オバマのタキシード【伊達男のオーダー列伝①】

古今東西のウェルドレッサーと称される男たちをつぶさに観察すると、ある共通点に気づく。誰しも服のブランドが前面に出ることなく、いっときの流行とも無縁ということだ。そして、そんな彼らが必ずと言っていいほどたどり着く到達点がオーダーメイドなのである。


「絶望を感じない最良の方法は、立ち上がり、何かをすること」

人生最高の大統領は誰か。昨年アメリカの成人を対象に行われたこんな世論調査で、第1位に選出されたバラク・オバマ前大統領。

就任中に行われた調査では戦後最悪との結果が出たこともあったが、悪名高いアメリカの医療保険制度に一石を投じ、核廃絶を訴えてノーベル平和賞を受賞するなど、その人道主義や平和主義に立脚した功績は賞賛に値するだろう。

またオバマは"史上最もクールな大統領"と評されることもある。若く長身でスポーツをこよなく愛し、スーツをスマートに着こなす姿は非常にモダンで洗練されており、世界中でケネディ以来の憧憬を抱かせた。

そんなオバマを陰で支えたミシェル夫人は、退任後にある秘密を"暴露"した。2009年1月の大統領就任式後の舞踏会用に、オバマが地元シカゴの老舗店ハート・シャフナー・マークスで15年ぶりに誂えたタキシード。

彼はそれを在任中の8年間、ずっと着ていたというのだ。頭のてっぺんからつま先まで注目され、一度着た服を再度着ただけで話題となった夫人が当時の大騒ぎを揶揄したジョーク的暴露だったが、そこにオバマの美学を垣間見る。身体に合ったオーダータキシードを8年間もスマートに着続けるには、ストイックな摂生が不可欠だからだ。

「絶望を感じない最良の方法は、立ち上がり、何かをすること」 

これはオバマが在任中に語った名言だ。その言葉が示すように、彼の偉大な功績と凛々しい佇まいは、世界一多忙な男として忙殺されながらも自己を律して研鑽を怠らず、困難に立ち向かい続けた結果に違いない。

Barrack Obama
1961年米国ハワイ州生まれ。コロンビア大学卒業後に弁護士などを経て上院議員に選出。2009年に第44代合衆国大統領となる。歴代大統領史上、初めてのアフリカ系であり、20世紀後半生まれ。2016年には現職大統領として初めて広島を訪れた。


Direction=島田 明 Text=竹石安宏(シティライツ) Photograph=Getty Images