「それ、会社病ですよ。」続々と出る新しいネット企業やネット事業だがどのビジネスモデルも何も新しくはない Vol.4


2012年はフェイスブックの上場が大きな話題になりましたが、ネットビジネスに関して理解しておかなければいけないことがあります。それは、実はビジネスモデルとしては根本的な新規性はない、ということです。
 フェイスブックにしてもグーグルにしても、基本は広告モデル。パーソナライズ化は多少できるといっても、テレビや新聞の広告がネットに置き換わっただけです。アマゾンも平たくいえば通販。アメリカではスーパーマーケットが台頭する以前にあった業態で、超大昔のモデルです。
 そしてネットで儲けている通信会社にいたっては、100年前にベルが作った月額通信料金モデルが今も変わっていない。サービスのイノベーションが起き、結果として社会的な影響はありましたが、お金を儲けるメカニズムにはイノベーションなど起きていません。
 人間は基本的に無形物に有形物と同じお金は払いません。ネットはリアルより物流などの中抜きでコストが減ります。コストがかからなければ、事業者が利用者からお金を取る意識も緩くなる。結果的にどんどんタダ化していく。タダに慣れれば、ますますお金を使わなくなる。結果、マーケットはシュリンクしていくのです。

元来、消費者からお金を取るというのは、本当に大変なことなのです。しかも、人間の消費行動は意外に保守的です。無駄な買い物はしないし、消費形態も変えない。ネットが出てきても、銀座や渋谷から買い物客が消える、なんてことはない。リアルとのトレードオフではないのです。
 となれば、事業者が目指す典型的な戦略は伝統的な大規模化です。設備や顧客基盤でスケールメリットを追求し、誰も追いつけなくなるようにする。今、まさに全世界で起きているのが、この競争です。ビジネスが原始化しているのです。
 コンテンツ産業では、ネットでは味わえないライブの人気が高まっています。フェスもライブハウスも、ここ数年ですごい数になった。複製する技術によって異常な大金持ちのアーティストが生まれたのがこの数十年でしたが、より原始的な生演奏にビジネスモデルは回帰している。
 そしてこの数カ月、タブレットリーダーが各社から出て話題になっていますが、これも特に新しい動きというわけではありません。原始的な顧客の獲得競争にすぎない。ただ、興味深いのは、キンドルです。実はアマゾンは、割安なデジタルコンテンツが売れてしまうと、困ったことになるからです。有形物の書籍こそ、彼らの儲けの柱だから。デジタル化は、いってみれば、敵に塩を送っているようなもの。相反する事業になるということです。
 しかし、これこそがアマゾンの、もっといえばアメリカのネット企業の強みといえるのかもしれません。ワンマンのトップが、自社の既得権益を毀損しかねない大胆な決断をしてしまう。これが日本企業だったらどうか。社内の抵抗勢力による徹底的な反対に遭って、相矛盾するような意思決定などできないでしょう。
 ビジネスモデルに本質的な新規性はない。だからこそ、経営の力量が問われる。これもまた、ネットビジネスの本質です。


Text=上阪 徹 Illustration=村田篤司
*本記事の内容は12年12月取材のものに基づきます。価格、商品の有無などは時期により異なりますので予めご了承下さい