【独占告白】川島永嗣が仏ストラスブールに移籍を決めた本当の理由

サッカーW杯で3大会連続日本代表の正GKを務めた川島永嗣が、フランス1部リーグ・アンの古豪、ストラスブールに移籍した。移籍決定翌日の8月30日、雑誌「ゲーテ」編集長・二本柳陵介が、現地で独占インタビュー。川島永嗣による新著『耐心力 重圧を制御する方法がある。(仮)』発売(10月11日)を前に、移籍に至るまでの心境や、新しいチームへの思いなどを赤裸々に語った。


「契約するチャンスが来た時には、すごくいい話だと思いました」

今回の欧州出張の主な目的は、スペイン・ベティスに所属する乾貴士選手と、ドイツ・ブレーメンに所属する大迫勇也選手にロングインタビューすることだった。

無事に取材を終えた8月28日、川島永嗣選手の新チームが決まるかもしれない、というニュースが私の元に入ってきた。そして、8月の欧州の移籍マーケットが閉まる直前の翌29日、GK川島永嗣選手の移籍が決まった。

新チームはフランス・ストラスブール。ドイツに近い、フランス北東部の街で、前所属であるメッスからは車で90分ほどの距離だそうだ。

私は29日、フランクフルトで打ち合わせがあり、30日は別の取材が入っていたのだが、そちらがキャンセルとなり、ストラスブールに向かうことにした。フランクフルトからは約2時間だった。

ちょうど現在、10月11日発売に向けて、川島選手の書籍を作っていることもあり、新チームに決まるまでの軌跡は当然ながら、原稿の微調整が発生するので、打ち合わせもしなければならなかった。

30日には、初めての練習に参加し、入団会見を開いた。

「ここの雰囲気は昨シーズンも気に入っていましたし、家族と一緒にストラスブールに来たこともありました。契約するチャンスが来た時には、すごくいい話だと思いました」

そうメディアの前で話したそうだ。

そのあとは、一度ホテルに戻って、ルーティンである15時からの昼寝をした。

起床後、市内の大広場にあるコーヒーショップで待ち合わせて、話を聞いた。その表情は、本当に晴れ晴れとしていて、こちらもホッとさせられた。

「今回の移籍も本当に大変だった。なかなか決まらないから、メッスの家にいても気がおかしくなりそうで、家族でバルセロナ旅行に出かけたくらいです。バルセロナ、良かったですよ。将来的に住みたいくらい」

移籍決定翌日、ストラスブールの街の雰囲気をつかむために散策をした。

信頼していた代理人からは、「欧州で川島を欲しがるチームはない」と言われたそうだ。しかし、他の代理人や川島本人には欧州をはじめとするいくつかの国からの打診があった。

「その中のひとつは本当に素晴らしいオファーで、かなり進展していたんです。細部を詰めて、あとはサインというところまでいったのですが、チームと急に連絡が取れなくなって……。気がついたら、他のGKを取っていたんですよね」

川島は、浪人を経験するなど、日本人GKの移籍に関しての難しさを身をもって知っている。

「またか! となりますよね」

でも、8月上旬から興味を持っていてくれたというストラスブールと数週間、毎日やりとりを続け、ついに正式なオファーが舞い込んだ。ちなみに、前所属のメッスでは、去年ストラスブールと2回戦った。

「(メッスの)ホームで勝って、アウェイで引き分けました」

直接対決のポジティブなイメージというのも今回の契約を引き寄せた要因のひとつかもしれない。

欧州5大リーグのひとつ、リーグ・アンでまた戦える。

W杯を優勝したフランスで、レベルの高い戦いに挑める。

「前回メッスに入った2年前は、少し肩の力が入っていたんですけど、今回はとてもリラックスしている。今回は、本当にもう楽しみでしかない」

当然、家族で住む家も決めなければならない。

「ちょっと街を散策しませんか? 街の雰囲気を掴みたくて。こんな都会に住めるのは初めてで、ここで暮らすのは本当に楽しみです。スタジアムの雰囲気もいいし、ファンも熱狂的なんです」

実際に街を歩いていると、数人のファンから声をかけられた。

「今回は1年契約です。欲を言えば2年契約が欲しかったのですが、普通に1年やれば、契約延長はできそうだな、という感触はあります。ゆっくりやりますよ。それに、できると思っています。手応えしかありません。ここから、コンディション上げていこうと思います!」

そう力強く、話してくれた。

W杯後に私は川島選手に、くだらないと思いつつ聞いた。

「あなたがiPhoneだとしたら、今は残り何パーセントですか?」と。

彼は即答した。

「3パーセントです」と。

つまり、ギリギリの状態だった。モチベーションも、心の体力も、消耗しきっていたのだ。

残りの充電を経て、新たなる目標を得て、日本の守護神が、さらなる飛躍をとげようとしている。

Eiji Kawashima
1983 年3月20日生まれ。埼玉県出身。浦和東高校卒業後、大宮アルディージャに加入。名古屋グランパスエイト、川崎フロンターレを経て、2010 年にベルギー1部のリールセSKに移籍。2011 年から2年連続でチーム年間最優秀選手に選ばれる。その後、同1部の名門スタンダール・リエージュやスコットランド1部のダンディー・ユナイテッドを経て、2016 年にフランス1部のFCメスに移籍。’18年8月29日、フランス1部リーグ・アンの古豪、ストラスブールに移籍した。代表は、GKとして歴代2位の88 試合出場(2018 年9月1日現在)。ワールドカップは、2010 年から3大会連続で出場し、日本代表のゴールを守った。185㎝、74kg。今年10月11日に新著『耐心力 重圧を制御する方法がある。(仮)』(幻冬舎刊)を発売予定。


Text=二本柳陵介