錦織圭はショートケーキ派で常に眠いー滝川クリステル いま、一番気になる仕事

リオ・オリンピックでは銅メダルを獲得し、全米オープンでも快進撃を魅せた錦織選手。「24時間すべてをテニスに力を注いでいる」という彼に、旧知の仲である滝川クリステルが迫ります。

今求めるのは安定感と爆発力

滝川 お会いするのは今年5月の全仏オープン以来ですね。お元気そうでなによりです。リオを前に、現在は何に主眼を置いて過ごしていますか?

錦織 技術面でも戦術面でも、直すべきところは次々に出てきます。ランキング1位になっても完璧とはならないでしょう。コーチをはじめ、サポートチーム、そして自分の身体と相談しながら、日々調整の連続です。

滝川 現在のコーチ陣は、5年にわたってフルタイム帯同しているダンテ・ボッティーニ氏と、2013年から加わったマイケル・チャン氏の2人体制。コーチングのイメージは正反対という噂も聞きました。チャン氏は鬼コーチとして有名ですよね?

今回の銅メダルを機に、東京オリンピックも期待したいと思います。(滝川)

錦織 マイケルはかなり細かいですね。言い方もきついので、「そんなに怒らないで」と思うことも多々ありますけど(笑)。

滝川 契約時には特にメンタル面の強化を課題として掲げていましたが、最近ではどんなアドバイスが多いのでしょうか。

錦織 戦術面も細かく指摘されます。「なんであそこで攻めなかったんだ」とか。「自分でもわかってるよ!」って、一瞬ムムッとなることもよくありますが、それも愛情なので。「厳しく言ってくれたおかげで今の自分がある」と思うことがこれまで何度もありますし、なるべく素直に聞くようにしています。

滝川 ダンテ氏は逆におおらかな方針だと聞いています。きっとバランスのよい信頼関係ができているのでしょうね。

錦織 今年特に感じたのは、左脇腹のケガを抱えながらウィンブルドンの4回戦まで行けたのは、コーチふたりの強いプッシュがあったからこそだと。彼らの手助けがなければ、あそこまで戦えなかったと思います。

滝川 よく雨による中断が以降のゲームの流れをがらりと変えることがあります。それもコーチとの対話が影響しますか?

劣勢の時はまったく違う景色が見えてくる

錦織 自分で見えていない部分を教えてもらえるのはすごく大きいです。特に劣勢の時はまったく違う景色が見えてくるきっかけになりますから。

滝川 コートに入ったらひとりきりですものね。冷静ではいられなくなる時も......。

錦織 そうですね。急に相手がプレーを変えてきたりすると。

滝川 そういう時、第三者の視点で自分に声をかけるとしたらどんなアドバイスをしますか?

錦織 緊張感は保ちつつ、気持ちを落ち着かせてリラックスする。当たり前ですが。そのうえで試合状況を冷静に判断し、いかに戦術を整理して臨めるかが、大きなカギになると思います。

滝川 フィジカル面の調整はいかがですか。トレーナーは変わらず中尾公一さんですよね。

錦織 今年からはロビー(・オオハシ氏)にも帯同してもらい、体幹トレーニングに加えてストレッチに時間をかけています。比較的ケガなくやれているので、この調子をキープできれば。

滝川 意外と食事制限はしていないんですよね。ストレスになることは極力避けると。

錦織 はい、最低限のバランスにだけ気をつけて。オフになれば何でも食べます。僕はB級グルメみたいなものが好きなので、たこ焼きとかラーメンとか甘いもの、ケーキも好きですし。

試合後の会見でも、よくあくびするのは?

滝川 確かショートケーキ派。

錦織 そうですね、シンプルに。

滝川 お話しをしていていつも思うんですけど、オンコートと外の差がすごく激しいですよね。今は集中してないと思うけれど。

錦織 集中してますよ(笑)。

滝川 試合後の会見でも、よくあくびしてるでしょう。

錦織 英語は気が張っているんですけど、日本語だと確かに緩みますね。僕、試合後に限らず眠いんです。常に一日中、眠い。

滝川 それだけ極度の集中をするからなんでしょうか。集中するコツ、集中をキープするコツって、何か意識していますか?

錦織 プレー中は自然に入っていきます。集中するコツ......、目の前のことだけ、1ポイントをとることだけ考えるようにすることが、集中につながっているかもしれません。でも正直それも、楽しくないと難しいです。

滝川 理屈ではなく感覚派なんですよね。では現時点で一番プレーしていて楽しい相手、強く対戦を望む選手は? 

錦織 やはりフェデラーです。ずっと尊敬していて、僕の目標でもある。あんな天才で、試合中にも遊び心を持って魅せるテニスができる選手は他にいません。陰の努力があってこそとわかっているんですが。

フェデラーと全力でぶつかり合うような試合がしたい

滝川 持ち物を真似したり?

錦織 それはないです(笑)。でも、もしももう対戦できないとしたら困るし落ち込むし、少しモチベーションが下がると思います。少なくともあと2、3回はお互い全力でぶつかり合うような試合がしたい。

滝川 自分では今、何が一番の課題だと考えていますか?

錦織 昔からの課題としてあるのは、安定感を高めることです。特にここ2、3年は大会毎のアップダウンをなくすことを強く意識していて、少しずつ身になってきている実感はありますが、まだまだ足りない。安定感を上げつつ、プラス爆発力のようなものがちょっと出てきたらいいなと、今は思っています。

滝川 グランドスラムで、やりやすいコートとそうではないところってあります? 全米は相性がいいともいわれていますが。

「錦織選手の試合そのものが、メンタルは強くしていけることを証明しているようですね」

錦織 どこも対等ですが、全仏だけは雰囲気がちょっと(笑)。

滝川 アウェイの選手には徹底して意地悪だからね......。

錦織 別にフランスの人は嫌いじゃないですよ。まあ僕はそこまで騒音が嫌なタイプではないので、それも慣れです。ちょっと頭をアホにして、ヤジも自分の応援だと思うようにすれば、そこまでつらくありません。

滝川 ヤジを応援と思うの?

錦織 はい、そうしないと。

滝川 すごいポジティブシンキング。でも前回の全仏では実際に、アウェイ戦でも錦織選手への声援が増えていましたよ。本当に世界から期待されてる。

プロプレーヤーとして常に心がけていること

錦織 自分でも少し感じました。直近の課題として、やはり大きな大会でどれだけ早くタイトルを獲得できるかがあります。ウィンブルドンでラオニッチが決勝に進んだように若手がかなり伸びてきていますし、そのなかでなるべく早く上位に出ないと。

滝川 そのために必要なこと、プロプレーヤーとして常に心がけていることはありますか?

錦織 ひとつの道を究めようと思ったら、犠牲になることも多く出てきます。24時間テニスのことだけを考え、自分のすべてをテニスに注がなければいけない。その犠牲を惜しむことなく、ただ進むことですね。

Kei Nishikori
1989年島根県生まれ。日清食品所属。5歳でテニスを始め、2003年米フロリダ州のIMGアカデミーに留学。07年プロ転向。ATP世界ランキング自己最高位シングルス4位(アジア人男子歴代最高位)。9月13日現在、5位。


この対談はリオ・オリンピック直前に実現しました。錦織選手とはテニスを通じた共通の知り合いがいて、私がフリーになる前から交流があります。世界のトップ選手として活躍し続けていることが本当に嬉しい!リオ・オリンピックは全試合リアルタイムで観戦しました。一緒に戦っているような気持ちだったので、試合が終わった後も興奮して眠れず、寝不足でしばらく体調不良に(笑)。錦織選手のブログに「3位でこれだけ喜ぶっていうのも不思議な経験」と書かれたのを見て、私はそこに大きな意味を感じました。個人競技であるテニスは、コンディションを理由にオリンピック辞退する選手も珍しくありません。でも彼は「チームジャパン」の思いを強く感じてくれたのだと。さらに全米オープンでは、金メダル獲得のマレー選手に勝利し、ベスト4進出。4年後の東京オリンピックでの活躍はもちろん、さらなる飛躍に繋がると信じています。 滝川クリステル
滝川クリステル
滝川クリステル
Christel Takigawa 1977年フランス生まれ。WWFジャパン 顧問。東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会 顧問。一般財団法人クリステル・ヴィ・アンサンブル代表。現在、『教えてもらう前と後』(TBS系)でMCを務める。2018年、2度目となるフランス国家功労勲章「シュヴァリエ」を受章。インスタグラム:@christeltakigawa
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