読書も感情移入で「アウトプット」となる!? 作家・森博嗣の人生を最高に面白くする方法

膨大な情報に囲まれ生きる現代社会。私達の「面白さ」に対する感覚が知らず知らずのうちに麻痺してしまっていないだろうか。人気作家の森博嗣に「面白く生きる」コツを聞いてみた。2回目はアウトプットがテーマ。


アウトプットすれば「面白さ」は何十倍に

「アウトプットする『面白さ』はインプットする『面白さ』の何十倍も大きい」と、これまで300冊以上の著作を世に送り出してきた作家の森博嗣さんは言う。アウトプットで得られる「面白さ」は本質。インプットで得られる「面白さ」はダミイなのだという。

アウトプットでなぜ「面白さ」が得られるのか。それはアウトプットすることで自分の成長につながる、という点が大きい。

「沢山の音楽を聴くよりも、自分で演奏し、歌った方が『面白い』し、またそうすることでしか上達できない。この成長がまた『面白く』感じられる要因として加わる」

そういえば森さんは大学の教授だった時期もある。「教える」というアウトプットの重要性も経験した。

「教えられている立場では、なかなか頭に入らなかったものが、人に教えると一度で自分の身につく。僕は、教壇に立って学生に二十数年間講義をしたが、教室にいる誰よりも、僕が一番勉強になった」

受け身な読書も"感情移入”でアウトプットになる

さて、わたしたちに身近なところでは、「読書」も一見インプットの行為に思えるが、それに熱狂し、本の世界に没入することで、アウトプットにできる可能性もあるという。

「小説を読むことはインプットである。ただ文字を読むだけでは『面白く』はない。その物語に入る、いわゆる『感情移入』ができると、頭の中でイメージが作られる。これはアウトプットだ。感情が誘発されるのもアウトプットである」

考えられる、少しだけ恐ろしい未来

現代は、インターネットというテクノロジーの発達によって、誰にでもアウトプットができるようになった。そしてそれを実践する代表例が、ツイッタラー、ユーチューバー、インスタグラマ―といった人々だ。しかしネット、SNSでのアウトプットにはひとつの危険性がある。

「今のところ、『いいね』などのサインを出し合って、お互いに『インプットしていますよ』という仮想を抱いているようだ。まるでお金のように『いいね』が世間を巡っているけれど、実際のところ、ほとんどの人は他者のことをしっかりと見ていない。インプットしている者はほとんどいない」

だから“炎上”が起こる恐れがあるのだ。思考停止状態で、他人のアウトプットをとらえる人がいかに多いことか。

「たまに真剣に見てみれば、他者の感情に簡単に同調し、クレームを重ね、『炎上』となってしまう。もともと素人がやっていることだから、どうしてもその種の防御が手薄なのだ。最初から『燃えやすい』ものがばらまかれているのである」

そして、恐いのは、ひとたびこうした炎上が起こってしまえば、何十年後になってもずっと痕跡が残る恐れがあるということ。

「これからは違う。監視するのはAIだ。しかも、過去の膨大なデータも含めて関連したものを見つけ出すだろう。検索できるのは、文字だけではない。映像も動画も、簡単に検索できるように、もうすぐなる。恐いのはこれからだ」

とすると、これからはむしろ“リアル”なアウトプットの重要性が増していくに違いない。その方法を自分で思いくつくことができれば、人生は最高に「面白く」なる。

Hiroshi Mori
1957年愛知県生まれ。作家。工学博士。国立大学工学部助教授として勤務するかたわら、'96年に『すべてがFになる』で第一回メフィスト賞を受賞し、作家としてデビュー。以後、次々と作品を発表し人気作家として不動の地位を築く。現在までに300冊以上の著書が出版されている。近著『面白いとは何か? 面白く生きるには?』が絶賛発売中。


『面白いとは何か? 面白く生きるには?』
森博嗣著
¥830 ワニブックス刊



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