【岡田祥吾×山碕峻太郎】期待の若手が二人三脚で描く! AI翻訳時代のプログリットの勝算とは?

20代のふたりが考案した「英語を教えない」で英語力を伸ばす方法。それが経営者やビジネスマンの間で話題となり、急成長を遂げている。「プログリット」創業者コンビが語る、新時代で生き残るための英語勉強法とは――。

多くの日本人が挫折する英語学習を根本から覆す

グローバル化が進むにつれ、多くのビジネスマンがぶち当たる英語という壁。サービスが乱立する英会話業界を飛び越え、今、日本で最も英語力を伸ばすのはここだ! と言われるのが「プログリット」である。英語を“教える”はいっさいなし。科学に基づいた、正しく生産的な英語学習の提案を行い、コーチングで学習を継続させるという新しいアプローチ法なのだ。

「そもそも僕自身、大学時代にアメリカに留学していたにもかかわらず、就職したマッキンゼー・アンド・カンパニーで英語に苦労したんです」そう語るのは、プログリット代表取締役社長CEO岡田祥吾。その岡田と同時期にシアトルに留学し、学友として知り合ったのが、共同創業者で取締役副社長COOの山碕峻太郎である。

2011年シアトル留学中に出会ってから約10年。山碕は岡田を「とにかくピュア。自分の欲求に素直で動物的な勘も働く。さらに目標が常に高く、いろいろな意見が出てもブレない」と評する。

「在学中から、正反対の性格のお互いをリスペクト。卒業後は互いに会社勤めをしていたんですが、岡田から家事代行サービスの会社を作らないかと誘われました。僕自身、そのニーズを感じ、すぐに同意しました。そしてふたりで投資家にプレゼンを始めたんですが、そううまくいくものではなかったですね」と苦笑する。

「プレゼン先でも『マッキンゼーっぽいプレゼンだね』と言われて。それは褒め言葉じゃなく、『論理的だけど、まったく刺さりません』という意味。自分たちには何かが足りないと」(岡田)

岡田は「山碕は物知りでロジカル。リーダーシップがあり、会社ファーストな男。安心できるしありがたい」と話す。

「英語」×「やり抜く」の先に見えたものは

ふたりはその時、「これをやりたい」「これをやりきらねば」という“思いドリブン”が欠けていたと反省する。やはり生半可な思いで人を動かすことはできない。そこでまずは、自分たちが一体何を大事にしているか、ふたりで徹底的に議論した。

「一致したのが『英語ができれば世界が変わる』という考えと、『やり抜けば何でも成果がでる』というお互いの実体験です。僕の前職のリクルートキャリアでも『やり抜く』を大事にしていたし、岡田もマッキンゼーで『戦略を作ることと、やり抜くこと』を学んできました」(山碕)

「英語」×「やり抜く」の図式でビジネスパーソンの英語力を伸ばすことができれば、ビジネスとして成り立つと確信。何より自分たちでも驚くほどすんなり、進む未来が目の前に開けた。

まず、何を達成したいのかをヒアリングで深掘りし、精度の高い目標を設定。そして受講者の英語力を分析し、英会話を強化するのか、単語力を上げるのかといった明確な学習プロセスを提案。週に1度の面談や24時間対応のチャットで学習状況と進捗を細かくチェックし、導く。また、どんなに忙しい人でも1日3時間の学習時間を捻出するための学習計画やスケジュールも考える。

「毎日○分の学習でいつの間にかペラペラなんてことは絶対にありえません。英語学習はやはり自分の努力。しんどいものほど効果があるんです。僕自身もそうして身につけましたから。でも手探りだったから、ものすごく遠回りをした。これをもっと短期間で身につける方法を教えたい。さらにやる気と続ける忍耐力も必要。それをコーチングという形でサポートして継続させることができれば英語力は身につくはずだ、という考えに行き着き、生まれたのがプログリットなんです」(岡田)

プログリットを動かし始めるまでに要した期間は約1ヵ月。

「最初は僕らふたりきり。集めた30人の生徒へのサポートや質問には、24時間、30分以内に対応すると決め、それはもう息つく間もない忙しさ」「大変だったけど、楽しかったな」「密な時間だったな」と、その頃を付き合いたてのカップルのようだったと笑うふたり。会社としてやっていけると思ったのは、どの段階だったのだろうか。

「著名なエンジェル投資家の瀧本哲史さん(故人)というマッキンゼーの大先輩がいて、起業直後にお会いし僕らの業務を説明したところ、その場で投資する!と即決してくださって。瀧本さんに認められたのは、ものすごく励みになりました」(岡田)

人間もクルマと同じでガス欠する。そのときガソリン補給と同じ働きをするのが“成長実感”。例えばスピーキングの速度をデータ化し、成長を見せ、実感してもらう。そうしてPDCAをしっかり回すことで効率的な成長をし、やり抜ける。

さらに2018年には心強いサポーターが生まれた。

「ある方との食事の席に、たまたまサッカー選手の本田圭佑さんが来たんです。『僕らの事業をご説明させてください』と言ったら『わかりました。5日後なら時間が作れます』と言われ、『行きます!』と返事をしたら場所がロサンゼルスでした(笑)。もちろん行きましたよ」(山碕)

そこで本田選手が抱える英語の課題を知り、プログリットを受講してもらうことに。自身の英語力向上でシステムが気に入った彼は出資を決め、いまだ受講も続けている。

現在、プログリットは第三フェーズだという。

「起業する際にふたりでたくさんの英語論文や研究結果を分析し、ひとつのフレームワークを作った。次にお客様からのフィードバックを加え、少しずつカスタマイズした。今は上智大学言語教育研究センター長の吉田研作特別招聘教授という専門家と一緒に、プログラムをさらに向上させています」(岡田)

今後増えるであろう英語ニーズのマーケット

創業3年目で売り上げを17億円まで伸ばしたが、「会社としてはまだまだ」と話すふたり。しかし、未来は誰もがAIの翻訳を利用して、コミュニケーションができるようになるといわれている。実際、2016年にGoogle翻訳がニュートラルネットワークを使用した翻訳アルゴリズムを採用し、精度が飛躍的に向上。近い将来、英語力は必要ではなくなるかもしれない。

「いや、むしろ英会話のニーズは増えていくと感じます。通訳者を帯同できるのは、エグゼクティブと呼ばれる人たちのみ。

留学時代の岡田。大手の外資系企業に就職しながらも「3年で辞めて起業する」と考えていたという。

それ以外の人は英語力がなければ外国人とのコミュニケーションを諦めるしかなかった。だけどAIのおかげでコミュニケーションが取れる。その楽しさや喜びを知った方々が、さらに上を目指そうと考えるようになると思うんです。なぜなら実際に多くのエグゼクティブが『自分で会話したいから』とプログリットにいらっしゃる。コミュニケーションのよし悪しって、内容より、声や話し方で判断されていると思うんです」(岡田)

AIの進化が引き金になり、コミュニケーションへの欲求が高まるとふたりは分析するのだ。

「今後は人×テクノロジーをさらに展開していくことが課題。開発中のアプリを使い、お客様がいつどんな教材で、どのぐらい学習し、どこで間違ったかのデータを集めます。それを分析し、カリキュラムを改善すれば、さらなる英語学習の生産性向上が見こめるはず」(山碕)

社員とは常にフラットな関係。それぞれが自筆で目標を書いた壁は会社のシンボル。

そのために注力するのが、コンサルタントなど人材の育成だ。

「ふつうの会社は90%業務で研修は10%程度でしょう。でもこの会社では、就業時間の25%は研修に充てています」(岡田)

岡田+山碕=2ではなく無限大。正反対のふたりがタッグを組んだからこそプログリットの躍進があるのかもしれない。

Shogo Okada(左)
プログリット 代表取締役社長CEO。1991年大阪府生まれ。大阪大学工学部を卒業後、マッキンゼー・アンド・カンパニーに入社。日本企業の海外進出、海外企業の日本市場戦略立案などに携わる。2016年GRIT(現プログリット)を創業し、代表取締役社長に就任。ハマっているのは、筋トレ、そして山碕とともにゴルフ。

Shuntaro Yamazaki(右)
プログリット 取締役副社長COO。1989年愛知県生まれ。大学時代にシアトルに留学し、共同創業者の岡田と出会う。卒業後はリクルートキャリアに入社し、中小企業向け求人広告の新規開拓営業、インフラ、自動車、金融業界などに対する人事課題のコンサルティング営業に従事。退職後、プログリットを創業。

Text=今井 恵 Photograph=柏田テツヲ