年収17億円を失った米マクドナルド社長に学ぶ! 新時代の"社内恋愛"ルール

最近、説明や謝罪時の、違和感のある言葉遣いが話題になりがちだ。当コラムでは、実際の発言を例にとり、公私の場で失敗しない言葉の用い方を考える。ビジネスパーソンのための実践言語学講座69、いざ開講!


「自分は次の場所へと動く時期だという役員会の判断に合意した」―――部下との社内恋愛が原因で解任された米マクドナルド スティーブ・イースターブルックCEO

凄腕の経営者と言っていいだろう。2015年に米マクドナルド社の社長兼CEOとなったスティーブ・イースターブルック氏は、就任以来メニューや店舗の改革を実施。デリバリーサービスやモバイル決済にも注力して売上を伸ばし、株価を就任時の2倍にまで上げた実績を持つ。だが、そんな凄腕は部下との社内恋愛を理由に解雇されることとなってしまった。

セクハラがあったわけではない。不倫関係だったようだが、同氏はすでに離婚しているということで、家庭内に大きな問題が起きたとも思えない。それでも会社の判断が厳しいものになったのは、マクドナルド社には「課長格以上の従業員が直接的および間接的に上下関係にある部下と恋愛関係になることを禁止する」規定があるため。スティーブ・イースターブルック氏は、従業員と「合意に基づく関係」を持つという「誤った判断」をしたと認めており、退職金も支払われる“円満退社”になるようだ。

「マクドナルド社の価値観に照らし合わせ、自分は次の場所へと動く時期だという役員会の判断に合意した」

彼は、この解雇によって2018年度の約17億円という莫大な報酬を失うことになった。マクドナルドがファミリーをターゲットにしたビジネスだということを考えれば、当然の判断なのかもしれない。だが、アメリカでは昨年インテルのブライアン・クルザニッチCEOも従業員との恋愛関係を理由に辞任に追い込まれている。経営に携わるものに厳しいモラルを求める傾向は、今後も高まっていく可能性が大きい。

日本は、社内恋愛、職場恋愛に寛容な国のように思う。国会議員の職場恋愛もあれば、社内恋愛・社内結婚を推奨する職場もある。もちろん金融機関など社内不倫はご法度という会社もあるが、それを理由に解雇されることはないだろうし、「本人たちさえよければ見て見ぬふり」という会社も少なくないはずだ。このマクドナルドの規定が気になるのは、不倫であろうとなかろうと、上司と部下が恋愛することを禁止していること。それは社員に対して、社内において人間的な感情を持つことを禁止するのと同じ意味ではないだろうか。

スティーブ・イースターブルック氏もブライアン・クルザニッチ氏も、部下に恋をすることが、どんな結果を招くか気がついていたはずだ。彼らがそれでも感情を抑えきれなかったのは、彼らが健全な欲望を持った人間だったからだ。不倫のようなインモラルな恋愛によって社業に悪影響を及ぼしたとするならば、その事実だけをもって処分すればいい。恋愛すること自体が“悪”ということになってしまったら、会社というコミュニティから感情をなくすことになりはしないだろうか。

もしこの規定を真似する日本の企業が増えてきたら……日本の少子化はますます進むことになるだろう。個人的には、恋愛には無縁のカタブツ上司より、恋愛でつまづいたことのある上司のほうが人間的に信頼できるようにも思うのだが、そんな考え方もいずれ時代遅れになってしまうのかもしれない。


Text=星野三千雄 Photograph=Getty Images


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