デザイナー森田恭通「第六感を生かし、柔軟に将来をシフトチェンジ」

デザイナーとして、多くの経営者の経営展望や理念、彼らの求める機能やニーズに応えてきた森田恭通氏。そのなかに見えたのは、経営者こそが持つ、オリジナリティ溢れるセンスと美学だという。「経営」と「美」の関係性、その先にあるものとは?

今こそクリエイティブから刺激を受け、第六感を働かせよ

新型コロナウイルスによって4月、緊急事態宣言が発令されました。僕らの仕事も2月半ばから影響が出始め、3月には「これはやばいぞ」と、かなりの危機感を覚えました。

デザインは直接命に関わらないものだけに、後に回されがちです。徐々に経済が動き始めましたが、クライアントはまだ半分も動いていません。彼らが軌道にのり「また新しいことをやろう」という気持ちになり、環境が整うことを願うばかりです。

過去、リーマンショックや大地震が起きた時、あらゆる機能が止まるという体験はしましたが、それが世界規模なのは僕も初めてのこと。グローバルに仕事をしていた人ほど、予想外であり、大きなダメージを受けているように感じます。実際に僕も案件がストップすると、しばし呆然としてしまいました。

そして自粛期間は、アナログの僕が、テレビ会議によるプロジェクトの打ち合わせや、コロナ禍で見えてきたデザイン業界の現状についてのミーティングに追われる日々。でも時間に余裕ができたのも事実で、今まで時間がなく見られなかった書籍やアート関連の資料をゆっくり見ることができたのはありがたいことでした。

もちろんコロナ禍でも動く案件もあり、リモート対応にできなかったものもあります。サンプルを画面越しに見せられても、質感などのディテールがわからない。やはり現場に行くしかありません。

一方、コロナで制限された生活を強いられ、人間の本能が研ぎ澄まされたのか、多くの人の感覚が鋭くなった気がします。周りを見ると、アートや食、デザインという、人の感覚を刺激するクリエイティヴなものを求めている人が多くみられる。味覚で喜び、嗅覚で安らぐなど、五感を使って幸せになるのと同時に、改めて第六感と呼ばれるシックスセンスが今こそ大切だと感じています。

なぜなら感覚が敏感な時ほど、いい刺激を受け、今まで出てこなかったアイデアが出てくるからです。まさにチャンスです。現状を柔軟に捉え、どうシフトチェンジできるかで、コロナ後の仕事のあり方が変わるのではないでしょうか。

周りの経営者と話していても、一様に元の生活には戻らないと言います。そのなかでも一番変わるのは、オフィスのあり方ではないかと思います。リモートワークの可能性や利便性に気づき、それは経営側も同じように驚いた。そうなると広いオフィスが果たして必要なのだろうか。

デザインする僕らも密にならないレイアウトを考えるなど、新しい需要が生まれることでしょう。とはいえ、やはりビジネス上で、会社という実態は必要。だったら商品を展示するショールームやプレゼンテーションルームを持ち、運営する。大きいモニターに必要な人材をリモートで揃え、きちんと対応するのでもいいかもしれない。

実際、僕らも不意にできた時間を利用して『これからのオフィスのあり方』という構想をつくり、3月からプレゼンを始めました。ありがたいことに、とてもいい反応をいただいています。すぐには動かないかもしれませんが、将来的には動くと確信しています。

働き方は絶対に変わる。だからよりよい未来を見据えて、僕たちは今から動いていく必要があるんです。

リモート会議にも参加する森田氏の愛猫トリュフ。ある日、図面に座り参加していた。


Text=今井 恵

森田恭通
森田恭通
1967年生まれ。デザイナー、グラマラス代表。国内のみならず、海外へも活躍の場を広げ、2019年オープンの「東急プラザ渋谷」の商環境デザインも手がける。その傍ら、’15年よりパリでの写真展を継続して開催。
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