【連載】スタジアム外のスポーツマンシップ 第1回「HEROs」アンバサダー 中田英寿

昨年10月、アスリートによる社会貢献活動の輪を広げていくことなどを目的に「HEROs SPORTSMANSHIP for THE FUTURE」(以下、「HEROs」)が日本財団によって創設された。同12月には「HEROs AWARD 2017」が開催され、サッカーの宮本恒靖氏(現ガンバ大阪監督)によるプロジェクト、ボスニア・ヘルツェゴビナのスポーツアカデミー「マリモスト(小さな橋)」がHEROs of the year賞を受賞した。 GOETHEでは『スタジアム外のスポーツマンシップ』と題した連載をスタート。 初回は、アンバサダーのひとりである中田英寿氏に活動の意義を聞いた。 


多岐にわたるジャンルのメンバーが次々と賛同

「HEROs」の最大の特徴。それは、スポーツに関わる人々が各々の競技団体やチームに縛られることなく、次々と手を挙げ、プロジェクトに賛同していることだろう。

「HEROs AWARD 2017」

アンバサダーには、松井秀喜氏(野球)、井上康生氏(柔道)ら既に現役を引退した元アスリートに加え、村田諒太氏(ボクシング)、佐藤琢磨氏(モータースポーツ)、田臥勇太氏(バスケットボール)ら第一線で活躍中の選手も名を連ねる。さらには、日本パラリンピアンズ協会会長の河合純一氏、海洋冒険家の白石康次郎氏など、ジャンルは多岐にわたる。そうしたメンバーから賛同を得ることができた意義について、アンバサダーのひとりである中田氏はこう説明する。

「現役時代は他のスポーツ選手に会う機会がなかったが、活動を通して様々な競技のアスリートに会えることが、僕の気持ちを盛り上げてくれます。この先、多くのアスリートと繋がっていけるでしょうし、社会貢献とは辛いもの、何かをあげなければいけないこと、手伝わなければならないことではなくて、自分たちが楽しんでやれるもの、そういったものになっていく社会になればいいなと思っています」

昨年末には、最も社会とつながるスポーツマンシップを発揮したアスリート、チーム、NPOを表彰し、次の活動へとつながる支援を行う「HEROs AWARD 2017」を開催。会場のスクリーンでは、さまざまなアスリートによる多岐にわたる社会貢献活動の映像が流れ、中田氏は改めて本プロジェクトの意義を見い出したのである。

「社会貢献活動というのは、なかなか情報を仕入れにくく(それぞれの活動を)映像で観ることもないんです。ただ、観てみるとすごく面白くて、自分も“こういうことはできるかな”と影響を受けました。映像を観て、強くそう思いました。アスリート同士が一緒にやればもっと大きいことができるし、みんながつながれば情報を見つける場所ができる」

これまで、社会貢献活動を「面白い」や「楽しい」と表現した日本人がいただろうか? そもそもアスリートは、各々の競技団体やチームに縛られることなく、横の繋がりで社会貢献活動の輪を広げる必要がある。そして、なによりもアスリート自身が、実はそういった機会を求めているのではないか。ヨーロッパで活躍していた現役時代、世界的なプレーヤーがピッチ外でも積極的にスポーツマンシップを発揮している姿に感銘を受け、自身も次々とアクションを起こしてきた中田氏だからこそ「社会貢献活動=楽しむもの」という発想に至ったのである。

「僕は運よく、現役時代から機会があって、チャリティマッチなどに呼んでいただき、自分がやっていることを違う形で見せるだけで社会貢献になるんだなというのを知ることができました。そのために、HEROsの活動を通して、いろいろな人に情報とやり方を伝えたり、この活動が広まっていけば、引退した選手と現役の選手の交流の場も増えていきます。それは楽しみだなと思います」

2014年に開かれたチャリティーマッチで、ペルージャ時代のチームメートと再会。

現役時、中田氏はスペインの名門チームであるFCバルセロナのホームスタジアム、カンプ・ノウで行われたチャリティーマッチ「欧州選抜vs.世界選抜」に出場。チャリティーマッチの趣旨を完璧に理解していたわけではなかったが、とにかく様々な国の選手がスタジアムに一堂に集まり、ともに汗を流し、会話をすることが「楽しかった」と振り返る。その後も何度もチャリティーマッチに呼ばれ続けたことにより、世界規模でサッカー選手同士の横のつながりが生まれたという。そうした貴重な経験が、現在のHEROsの活動に影響されている。

「HEROsは、多くの人が繋がるためのプラットフォームだと思います。アワードは第1回で、まだまだこの活動自体も知られていないので、多くの人に知ってもらって、HEROsに人が集まってくるという形になればいいなと思っています」

社会貢献活動だからといって、難しく考え過ぎたり、周囲の声を気にする必要はまったくない。「楽しい」や「面白い」という自らの心の中にある素直な感情に従い、そしてアクションを起こし、そして輪を広げていく。中田氏の考えは、単純明快なのである。

Hidetoshi Nakata
元サッカー日本代表。引退後100以上の国や地域の旅を経験した後、2009年より日本国内47都道府県の旅を開始。旅の中で発見した、日本酒、そして工芸の素晴らしさや面白さ、魅力を多くの人々に知ってもらうことを目的に、'12年ロンドン五輪、'14年ブラジルW杯、'15年ミラノ万博と、日本文化や日本酒の魅力を世界で伝えるプロジェクトを実施。「株式会社 JAPAN CRAFT SAKE COMPANY」を設立し、酒蔵やその数々の銘柄、そして文化を、成長し続ける世界市場に向けて発信するために、一大プロジェクトである“SAKE”イベント「CRAFT SAKE WEEK」を定期開催。また、コンサルティングやプロモーションなど、日本酒業界の国内外での繁栄を多岐にわたってサポートしている。


【HEROs AWARDとは?】

社会のため、地域のため、子供達の未来のため、競技場の外でもスポーツマンシップを発揮している多くのアスリートたちに注目し、称え、支えていくためのアワード。その年、最も「社会とつながるスポーツマンシップ」を発揮したアスリート、チーム、団体を表彰し、次の活動へとつながる支援を行う。


【HEROs AWARD 2017受賞者】

■HEROs of the year賞■
スポーツの力を活かした社会貢献活動のモデルにふさわしい、もっとも優れた「アスリート」を表彰。アスリート部門より1名を選出。

宮本恒靖:~スポーツを通じた民族融和プロジェクト~ボスニア・ヘルツェゴビナのスポーツアカデミー「マリモスト(小さな橋)」の挑戦

■HEROs賞■
スポーツの力を活かし優秀な社会貢献活動を行った「アスリート」「チーム・リーグ」「NPO」を表彰。アスリート部門:3名、チーム・リーグ部門:1団体、NPO部門:1団体を選出

<アスリート部門>
アスリートが自発的・主体的に取り組んでいる社会貢献活動を対象とする。
(NPO法人等の立ち上げ、または他の社会貢献活動団体と連携して実施している事業を含む)

・鳥谷敬:「RED BIRD PROJECT」
・アンジェラ・磨紀・バーノン:「Ocean’s Love」
・坂本博之「こころの青空基金」


<チーム・リーグ部門>

チーム・リーグが主体となって、競技、スポーツに関連する資産等(選手、チーム、スタジアム等)を活かして行う社会貢献活動を対象とする。

福島ユナイテッドFC(サッカー):風評被害払拭活動「ふくしマルシェ」


<NPO部門>

NPOが主体となり、スポーツの力を活かして行う社会貢献活動を対象とする。

一般社団法人世界ゆるスポーツ協会:すべての人々にスポーツを


※各部門の活動動画はHEROs AWARD 2017Webサイトで視聴可能


Text=鈴木 悟(ゲーテWEB編集部)