それっぽい言葉はもういらない! 二期目の小池都政への心配~ビジネスパーソンの言語学103

各界のトップランナーたちのコメントには、新時代をサバイブするヒントが隠れている。当コラムでは、ビジネスパーソンのための実践言語学講座と題して、注目の発言を独自に解釈していく。103回目、いざ開講!

「コロナ対策を優先しながら大会準備も進めていきたい」ーーー再選を果たした小池百合子都知事が延期された東京オリンピック・パラリンピックについてコメント

混乱の真っ只中でリーダーが変わることを東京都民は望まなかった。東京都知事選では、現職の小池百合子都知事が再選を果たしたが、目の前には難問が山積している。新型コロナウイルスは再び感染の勢いを増しつつあり、かといって経済活動を止めることもできない。小池都知事は、「夜の街だから」「ホストクラブだから」「若者だから」「検査数を増やしたから」とさまざまな理由で感染者の増加について説明し、蔓延しつつあることをなかなか認めようとしていないが、その言葉を真に受けている人間は少ないだろう。事実、新宿や池袋を中心に繁華街への人出は、ふたたび減少しているという。

そんな小池都政の大きな課題のひとつが1年延期された東京オリンピック・パラリンピックだ。来年の今ごろ、世界中からアスリートや観客が集まった大会を開催することができるのか? ほとんどの人が実現できると思っていないのではないだろうか。それでも東京オリンピック・パラリンピック組織委員会の森 喜朗会長と会談した小池都知事は、開催へ前向きの姿勢を見せた。

「コロナ対策を優先しながら大会準備も進めていきたい。都民や国民の皆さんの理解が得られる、納得いただけるような形でどのような大会を開催するかは知恵の出しようかと思うので、連携して進めていきたい」

小池都知事は「言質をとられる」ことを異様に恐れる。あれだけ大々的にPRした「東京アラート」も感染者が増えるとみるや数的根拠をなくして、曖昧なものへと変更した。カッコいいことは言いたいが、言質は取られたくない。だからその発言は常になんとなく“それ”っぽいが、なにを言いたいのかわからないものになる。「都民や国民の皆さんの理解が得られる、納得いただけるような形」とはなんなのか、どういうものなのか。開催のためには追加予算がいくら必要で、それをどこから捻出するのか。コロナ対策はどうするのか? 海外からやってくるアスリートや観客をどのような基準で受け入れ、どう水際対策を講じるのか。そもそも世界各国のアスリートは、2021年のオリンピック開催を望んでいるのか?

たとえば、世界各国に来年のオリンピックに参加できるかどうかを確認してみればいい。もし来年がリオ・デ・ジャネイロ五輪だったとしたら、コロナが蔓延しているあの国に日本政府は選手を送るだろうか。きっとボイコットしたのではないだろうか。世界が日本を、東京をどう見ているのか、IOCとは別に日本独自の調査を行ってもいいだろう。その結果、何カ国が参加を表明し、何カ国が不参加となるか。それによって、まずは「開催か中止か」を判断すべきではないだろうか。

今年1月、まだコロナが「対岸の火事」だったころ、この国はオリンピック開催に向けて邁進していた。あのとき医療対策をしっかりしていたら、また違う7月を迎えられていただろう。組織が盤石なときは、こういうイメージ優先のリーダーでもうまくいくことはある。だが、今の日本、東京は誰もが不安を抱えている有事だ。二期目の都知事には、「なんとなく“それ”っぽい」ではなく、しっかりと現実を見た具体的な政策を実行してほしい。「やっているふり」だけでは、ウイルスはごまかされることはないのだから。


Text=星野三千雄