オフィスオーガスタ 森川欣信 勢いのあるリーダーは公私ともフルスロットル①

シンガー・ソングライターのさかいゆうとミーティングを行うのは、音楽プロダクション、オフィスオーガスタ社長の森川欣信さん。ビジネスだけでなく、プライベートもすこぶる真剣。その多面性や探求心の旺盛さが、周囲から一目置かれる。

 「ものすごい才能と出会うと、僕は作品づくりに猛烈に介入したくなってね、我慢できない」
 森川さんはRCサクセション全盛期のディレクター。その後に手がけたBARBEE BOYSが解散し、ソロになった杏子とともにスタートしたのがオーガスタだ。そして、山崎まさよし、スガ シカオ、元ちとせ、スキマスイッチ、秦基博など新しいアーティストを生みだしてきた。
 さかいゆうも、アルバム『Coming Up Roses』がヒット中。シングル曲「薔薇とローズ」は車のCMで流れ話題になっている。
 そんな森川さんのルーツとなる本が、16歳の時に出会ったハンター・デイヴィス著の『ビートルズ』だった。ビートルズの後期、1968年に出版された、メンバー4人が公認した唯一のバイオグラフィである。
「枕もとに置いて、20年間毎日繰り返し読み続けました」
 音楽制作からメンバーのプライベートまでを描くこの本の影響で、森川さんは音楽制作の専門家を志す。学生時代の1974年には1年休学してアルバイトにいそしみ、そのお金を手にサンフランシスコへ。本物のロックを体験するためである。為替が1ドル300円台の時期だ。

ON 神様に肩を叩かれた才能の持ち主が音楽家になる/ゴスペルテイストの「薔薇とローズ」がヒット中のさかいゆうと歌詞を再点検。ライヴではCDとは違う言葉に替えて歌うこともある。

「本心は自分が音楽を演奏し歌いたかった。でも、アーティストは神様が肩を叩いた特別な才能の持ち主がなるものです。さかいみたいなね。だけど、せめて音楽の仕事をしたかった。その延長線上が今の会社です」
 森川さんは東京・渋谷で、楽器店、ロックTシャツ店、ギャラリー、アンティークインテリア店からなる「TOKYO QUADRO MARKET」も手がけている。
「僕の時代は音楽から影響されてファッションが生まれたり流行ったりした。僕のベースはすべて音楽なんです」
 大好きな音楽を自分のビジネスにして、音楽を通してファッションに強く興味を持ち、それをまたビジネスへと還流させる。それを象徴するのが、音楽とファッションをクロスオーバーした右の4枚の写真である。
 どこまでがビジネスで、どこからがプライベートなのか──。ONとOFFの境界線があいまいなのが、森川さんの強みだ。
「やりたくないことはやらない。その代わりやりたいことにはONだとかOFFだとかはまったく意識せず徹底的にいきます」

OFF 音楽からファッションに、ファッションもビジネスに/左上:トム ブラウンのスーツでギャラリーへ(ローリング・ストーンズ写真展)。右上:大戦時のB3ジャケットは実物、オリジナルのマリアンヌ・フェイスフルのTシャツで。左下:コム・デ・ギャルソンのローリング・ストーンズ仕様のスーツ。ブライアン・ジョーンズなりきりのウィッグ(Panoramica x FUNDOM)のテイスト。右下:西陣着物を羽織り、作家気取りで『ビートルズ』を翻訳本と原書で読む。
Yoshinobu Morikawa
1952年生まれ。ワーナー・パイオニア、キティエンタープライズでディレクターとしてRCサクセション、BARBEE BOYSを手がける。'92年オフィスオーガスタ創業。山崎まさよし、スガシカオ、元ちとせらを輩出する。

Text=神舘和典 Photograph=坂田貴広、大森 直

*本記事の内容は14年2月1日取材のものに基づきます。価格、商品の有無などは時期により異なりますので予めご了承下さい。14年4月以降の記事では原則、税抜き価格を掲載しています。(14年3月以前は原則、税込み価格)