ナパの第一人者による進化と継続の赤ワイン「コンティニュアム」とは?【ティム・モンダヴィ】

カリフォルニアワインの父と呼ばれた故ロバート・モンダヴィの次男のティム・モンダヴィが4月上旬、2年ぶりに来日し、メディアセミナーを行った。2005年設立の「コンティニュアム・エステート」の創立者であり醸造家でもあるティムは、自身のワイナリーで作るたったひとつの赤ワイン「コンティニュアム」の魅力を力説。ワインジャーナリストの柳 忠之氏が、醸造家としてのティムのキャリアを振り返るとともに、この日のセミナーの様子をレポートする


父と同じ53歳で迎えたターニングポイント

カリフォルニアワインの発展に貢献し、ボルドー5大シャトーのひとつ、ムートン・ロッチルドとコラボレーションして『オーパス・ワン』を成功させた故ロバート・モンダヴィ。その次男にあたるティム・モンダヴィが『コンティニュアム・エステイト』を立ち上げて14年が経つ。

父ロバートが、経営方針の違いから家族所有の『チャールズ・クルーグ・ワイナリー』を飛び出し、ナパ・ヴァレーのオークヴィルに『ロバート・モンダヴィ・ワイナリー』を設立したのが1966年。当時、ティムはまだ15歳の少年だった。その後、ワイン醸造の名門、カリフォルニア大学デイヴィス校に学び、在学中からワイナリーで父をサポート。卒業後の74年、ワインメーカーとして正式に入社した。

79年にオーパス・ワンがスタートした際も、ムートンの醸造責任者を務めるルシアン・シオノーとともにワイン造りの中心的な役割を担ったのがティムである。95年にはイタリアはトスカーナのフレスコバルディ家とタッグを組んで『ルーチェ』を生み、さらに同時期、チリでは『エラスリス』のチャドウィック家とともに『セーニャ』を造り上げた。

「世界各地で最高の造り手と仕事し、トップのトップを目指すことを学びました。私はつねにブドウ栽培やワイン醸造の中心にいたおかげで、多くの人々から知識や助言をもらうことが出来たのです」とティムは述懐する。

しかし、父ロバートがそうしたように、ティムもまた経営方針の相違を理由に、2004年にロバート・モンダヴィ・ワイナリーを去った。時にティム、53歳。奇しくも父ロバートがチャールズ・クルーグを去った時と同じ年齢に達していた。ロバート・モンダヴィ・ワイナリーが、コンステレーション・ブランズに売却されたのはその直後である。

この日のセミナーではコンティニュアムの垂直試飲を実施。プリッチャード・ヒルの自社畑のブドウ100%で造られた新ヴィンテージ2016年と2014年、自社畑のブドウに他のブドウをブレンドして造られた2009年、設立2年目にオークヴィルのブドウで造られた2006年の4種類が用意された。

モンダヴィを去ったティムは、2005年に自身のワイナリーを設立。それがコンティニュアム・エステイトだ。ワイナリー設立にあたってティムが思い描いたのは、フランス・ボルドー地方のシャトー。ボルドーのシャトーでは、原則としてひとつのワインしか造らない。ティムはモンダヴィの失敗の原因が、商品構成の無闇な拡張にあったと考え、ボルドー流のコンセプトを踏襲することにした。したがって、コンティニアム・エステイトから造られるのは、カベルネ・ソーヴィニヨンとカベルネ・フランを主体にプティ・ヴェルドやメルローをブレンドした、ボルドースタイルの赤ワインただひとつと潔い。

設立当初はロバート・モンダヴィ・ワイナリー時代に最高のワインを生み出してきた、ト・カロン・ヴィンヤードのブドウを購入してワインを醸造していたが、2008年から09年にかけてナパ・ヴァレーの東側の山あいに位置するプリチャード・ヒルに自社畑を購入。12年以降のヴィンテージはそのプリチャード・ヒルの自社畑で収穫されたブドウ100パーセントから造られた、正真正銘のエステート・ワインになっている。

ところでティムが山あいのプリチャード・ヒルにこだわるのはなぜか?

「ここはナパ・ヴァレーでも標高410~490メートルの高地にあります。土壌は表土が浅く、鉄分の混じった赤褐色のローム層で痩せています。そのような条件のおかげで、谷間の平地と比べ、房も粒も小さく凝縮感に富む一方、ミネラルやフレッシュ感を備えたブドウが収穫できるのです」

2年ぶりに来日したティム・モンダヴィ。自身のワイナリーで作る「コンティニュアム」の魅力を力説した。

興味深き4つのヴィンテージを飲み比べ

ト・カロンのブドウから造られた、コンティニュアムとしてはセカンド・ヴィンテージにあたる2006年、ト・カロンにプリチャード・ヒルの自社畑のブドウを加えた'09年、プリチャード・ヒルのブドウが100パーセント使われている'14年、'16年の4ヴィンテージを並べて試飲してみると、その進化のほどは明白でじつに興味深い。

'06年はリッチでパワフル。ナパ・ヴァレーの赤ワインとしては間違いなく一級品だが、やや荒削りな印象も否めない。ところがヴィンテージが若くなるにつれ果実がピュアな形で表現され、緻密な骨格を備えつつ、磨き抜かれた洗練度が感じられるようになる。'16年にいたっては、アルコール度数が15.1パーセントまで達するにもかかわらず、ある種のフレッシュ感さえ抱かせるのだから恐れ入った。

「コンティニュアム」はラテン語の「Continuus」(継続・継承)が語源という。祖父チェーザレ、父ロバート、そしてティムへと受け継がれたワインメーカーの血。それはティムの息子であるダンテやカルロへと、つねに進化しながら継承されていくのだろう。


Tadayuki Yanagi
1965年神奈川県生まれ。ワイン専門誌記者を経て、1997年に独立。フリーのワインジャーナリストに。山梨から地球の裏側のチリまで、世界中のワイン産地を訪問。現地の最新ワイン事情を伝える。数々のワイン専門誌、ライフスタイル誌にも寄稿。


Text&Photograph=柳 忠之