歌手で役者で演出家の王子様! 城田優 ~野村雅夫のラジオな日々vol.36

現在、大阪のFM802を中心に、ラジオDJや翻訳家などさまざまな領域で活躍する野村雅夫さん。この連載は、野村さんのラジオというメディアでDJをすることの醍醐味や、ラジオで出会ったアーティストとのエピソードを披露してもらう。今回はマルチに活躍する、実はスペイン国籍の城田優さん。


新作ミュージカル『ファントム』では主演&演出

かつて僕がまだDJとして駆け出しでFM802の深夜番組を担当していた頃、女性リスナーからこんなメッセージが届いた。「雅夫くんの番組も好きなんですけど、城田優さんのオールナイトニッポンと放送時間がかぶっているので、あちらが終わったら、また802にチャンネルを変えますね」。これにはまいった。城田優に勝てる要素が見当たらない。あれから10年ほどが経ち、城田優さんが僕の番組に生でゲスト出演してくれることになった。メインの話題は、彼が主演のみならず演出まで手掛けるというミュージカル『ファントム』についてなのだが、実際に会ってお話をしてみると、淀みなく自分の考えを言葉にできる方で、ますます勝てる要素が見当たらない結果となった。なんとも素敵な方だ。今回は8月26日(月)に放送したFM802 Ciao Amici!での対話をお楽しみいただく。

こんばんは。城田優です。

優さん、チャオ!

チャオ! お願いしま〜す!

――自然なチャオが出ちゃったよ。

チャオって言いますからね。

――スペイン語でも使いますもんね。「オラ」とどう違うんですか?

チャオはお別れの時に言うイメージですね。

――そうか。使い分けがあるんだ。「オラ」は?

「オラ」は「こんにちは」ですね。

――ちょっとしたスペイン語講座、超初級編開講って感じだけど、僕も知らなかったです。ほら、ラテン圏はあちこちでチャオを使うじゃないですか。

使いますね。僕の勝手なイメージでは、チャオはバイバイです。

――あ、そうだったんだ。なるほど。そう言われると、この番組のタイトルはスタートした時からバイバイなのかって感じになっちゃいますけど……

ハハハ! 「さよなら」っていう番組かなって。

――イタリアではね、24時間、出会いでも別れでも使えるということなんですよ。

そうですよね。使えますもんね。

――そんなチャオ・アミーチに初登場で、よろしくお願いします。城田優さんについては、紹介の必要はないだろって感じで、大胆に端折っちゃいますよ。

いやいや。軽くでも、紹介してください。

――1985年、東京のお生まれ。2003年のデビューの後、舞台を中心に映画、ドラマでももちろん活躍をされまして、舞台では2010年に『エリザベート』の主役トートを史上最年少で務められました。以降、端折りまして、数々の演劇賞を受賞! で、今日の話に関わるところで言うと、2016年にミュージカル『アップル・ツリー』で演出に初挑戦されました。ここは頭に置いておいていただいて、先月は大阪でもミュージカル『ピピン』を上演されましたね。さっきご登場の前にクリスタル・ケイさんの曲をなぜお送りしたかと言えば、その『ピピン』の話でこの前お越しいただいたからなんです。

ありがとうございます。お世話になりました。

――なおかつ、その時に優さんの話が出たわけですよ。もちろん共演するからってのもあるけれど、クリスタル・ケイさんがミュージカルに出演するきっかけを作ったのは、「私をキャスティングしたのは城田優だと言っても過言ではない」とおっしゃったからなんです。本当なんですか?

ほぼほぼ、ほんとですね。『ピピン』が日本で上演されるってなった時に、最初にピピン役に僕が決まったんですけども、その次にリーディング・プレイヤーというクリスタル・ケイがやった役を誰がやったらいいだろうかってことで、スタッフが僕と一緒に試行錯誤と言いますか、話し合ったんですね。その中で、クリスタル・ケイがいいんじゃないかと、僕からもですし、スタッフからも名前が挙がって、「じゃあ、僕が一回連絡してみます」と言ったんです。

――個人的にね?

はい。友達だったんで。もう10何年来の友達だったんで、「クリ、ブロードウェイ・ミュージカルに興味ない?」みたいな感じで話したら、「え〜、何やるの?」って彼女が言って、「『ピピン』っていう作品をやるんだけど」って伝えたら、本人もブロードウェイで既に観ていて、「あの役を私が?」みたいになったんです。それがきっかけだったんで、実際、過言じゃないと思います。

――もう3年前に演出の経験があって、出演する作品に関しては、多少なりとも、俯瞰して全体を見るっていう習慣ができてるんじゃないですか?

そうですね。特に主演となると、チームのリーダーと言いますか、しっかりとカンパニーを引っ張っていかないといけませんから。もちろん、それはやらなくてもいいことでもあるんですけど、やっぱり責任感もあるし、作品全体を良くしたいという想いがどんどん溢れてくるんです。ここ5年くらいは、そういう想いが大きくなってきていますね。

――生放送ですから、リアルタイムでリスナーのメッセージもたくさん届いているんです。18歳の女の子、さくらもっちゃん。「日本で一番のイケメン俳優で、コメディーもシリアスなものも、歌も演技も全部素敵。王子様みたいにかっこよくて大好きです」って。そうだよ〜、僕は今王子様と一緒にいるからね〜

ハハハハ!!

――「マチャオさんと並んだら、絵になりそうですね」とありますけど、どうだろうか。

濃い〜ですね、我々は。

――濃いのは濃いんですけど、なにしろ身長差がすごいですから。僕は身長に関しては顔のわりに、完全に平均的日本人ですから。

そうなんですか? なるほど。ま、でも、僕は突然変異でこんなに大きくなっちゃってるんでね。

――ハハハハ!! 優さんが昨日ディナー・ショーをされていたということで、この方は堺市の女性、こーたさんという方。「大阪に来てくれて、ありがとう。昨日のショーは楽しかったです」って、ディナー・ショーは東京だったんでしょ? 堺から参加したってのがすごいな。

いやぁ、ありがたいですね。他にも、札幌から、沖縄から、岩手から、福井から……。いろんなところから来てくださって、すごく楽しかったです。

――大阪市のゆりかごさんは、28歳の女性なんですが、「城田さんがゲスト出演されると聞いてから、ソワソワしてずっと仕事に集中できません」って書いてますよ。

あらま。

――これはしょうがないですよね。職場にもその旨伝えておいた方が良いかもしれませんが(笑)、「ミュージカルに出演されれば、必ず観劇しています。『ピピン』も素晴らしかったです。大阪でも、コンサートもやってほしいな」とありますが、実は吉報がございまして。

そうなんですよ。昨日の夜に発表しました。

――これは後ほど、改めてアナウンスしましょうか。で、今回来ていただいたのは、このゆりかごさんも触れているんですが、12月7日(土)から梅田芸術劇場メインホールで上演されるミュージカル『ファントム』でございます(東京は11月9日からTBS赤坂ACTシアターにて)。

ございます!

――今、BGMを変えました。こちらは昨年のアルバム『a singer』に収録されているもので、まさに『ファントム』の歌ですよね?

そうです。このミュージカルの中で僕が実際に歌っている『母は僕を産んだ』というナンバーです。

――その『ファントム』ですよ。『オペラ座の怪人』はご存知という方が多いと思います。フランス語で言えば、「ル・ファントム・ドゥ・オペラ」。これを原作とするミュージカル作品ということになります。

はい。『オペラ座の怪人』という戯曲を原作としたミュージカル作品です。世界には、同じ戯曲をもとに作られている作品がたくさんあるんですけれども、その中で代表的な、皆さんがわりと知っている、日本だと劇団四季がやられている『オペラ座の怪人』という作品もあるんですが、この『ファントム』に関しては、家族愛ですとか、人間らしさが注目すべきポイントになってくると言いましょうかね。エリックという名前がこの怪人にはありまして、なぜそのエリックがオペラ座の地下に住むことになってしまったのか。そして、両親との絆、別れなどを描いていて、非常に人間味のあるものになっています。『オペラ座の怪人』と聞くと、ちょっとファンタジックなイメージを持たれがちなんですけれども、人間味がしっかりと描かれているので、涙なくして観ることはできない物語です。

――『オペラ座の怪人』は、演劇もあれば映画化もされていてと、いろんなメディアで繰り返し作品にされてきたわけじゃないですか。面白いもので、当てる光の向きを変えると、違うテーマが浮かび上がるんですね。

そうなんですよね。

――そのうちのひとつが、この『ファントム』になります。先ほど読んだゆりかごさんがこんなことを書いてます。「前回の『ファントム』をされてから、ずっと大好きです」。

あらら。素晴らしいですね。5年前だ。

――ただ、大きな違いは、今回は演出もされるということ。一度出演されているから勝手はわかっていらっしゃるとは思いますが、自分が演出をするならどうしてやろうというアイデアはあるんですか?

来月から稽古が始まるので、ほぼほぼ土台みたいなものは既にできています。セットですとか、美術まわりですね。あとは、こういう方向で進めていきたいという全体のプロダクションについての詰めをしている最中です。ここ5年、10年で、ミュージカル人口と言いますか、ミュージカルを観たことのある方、ハマってくださる方がすごく増えてきてはいるものの、「突然歌い出す」なんてのが毛嫌いされてしまうことも、やはりまだあるんですよね。そういうところを払拭するためにも、僕が心がけているのは、お芝居と歌のバランスです。なるべく滑らかにしたいんです。はい、歌い終わりました。はい、次はお芝居ですとするんではなくて、歌から芝居に戻る時、そして芝居から歌になる時に、なるべく感情が変わらないというか、表現を変えないようにしたいんです。なるべく、喋ってるように歌って、歌ってるように喋るということを今回の『ファントム』では全キャストに求めたいなというのが、ひとつ大きなこととしてありますね。

――それって、難度は上がりますよね?

めちゃくちゃ高いですね。歌って、きれいに歌い上げたほうが喉にも負担がかからないし、聴いている方は気持ちが良いんですけど、僕はそういう気持ち良さよりも、生々しさだったり、つまりは汗とか血とか涙とか、そういうものを感じられる歌が聴きたいんです。役を演じる時に、きれいに歌うよりも、その役として声を出すことを意識しているので、今回は自分が常に心がけていることを全キャストにやっていただきたいなと。

――大変だなぁ、これは。

衣裳:BLACK Scandal Yohji Yamamoto STYLIST:DAISY 石橋瑞枝(DAISY M’S OFFICE)

難度は正直上がりますが、一度共演者の皆さんにそんな体験をしてもらいたいです。ただ、もちろん、実際に歌の中で叫ぼうとすると、喉に負担がかかるんです。それを毎日続けるとなると、作品のクォリティーにも影響してきますから、そこはバランスを取ってというところではあるんですが、最初から諦めて「じゃあ、ここは歌ってください」とかっていうことではなくて、そのバランスを含めて稽古をしながら、その人のポテンシャルや伸びしろに合わせて、演出をその都度ベストな選択にできるような演出家になりたいなと思っています。

――つまり、今後も演出はずっと手掛けていきたいと思ってらっしゃるんですね?

正直、この『ファントム』次第ってところは大きいですね。

――それぐらいの意気込みなんだと。

自分の中では、賭けてやってます。

――数あるミュージカルの中でも、『ファントム』は大きな作品でもありますしね。だって、作詞・作曲はモーリー・イェストン。大御所じゃないですか。映画化もされた『NINE』も彼の手によるものなわけですよ。それこそ、ミュージカルが初めてという方にも、「城田優さんがそこまで言うなら、苦手意識を持っていたけど、いっちょ行ってみようか」と思っていただきたいですね。

来てみてください! あの、城田の回じゃなくてもいいですから。

――ハハハ! そう、そこなんですが、今回はダブルキャストなんですよね。ファントムに関しては加藤和樹さんとのダブルキャスト。そして、ファントムの愛するクリスティーヌ役も、愛希れいかさんと木下晴香さんの豪華ダブルキャスト。だから、観に行く回によって味わいにも変化が生じますね。

めちゃくちゃ違います。本当に人によって役作りがまったく異なるんですよ。赤を象徴したような役作りをする方もいれば、同じ役でも青に見える役者さんもいますし、そこがこのダブルキャストの面白さです。だから、僕を観なくてもいいんですよ。僕としては、この作品を観てさえくれれば、僕の見せたいものはもうそこにあるので。

――はぁ……すごいなぁ! すごい言葉だ。ミュージカル『ファントム』は12月7日(土)から16日(月)まで。場所は梅田芸術劇場メインホール。全15公演。チケットの一般発売は9月7日(土)です。どの日のどの回が城田さん、あるいは加藤さんなのかというスケジュールや、回によってはアフタートークもあるようですので、いつ観に行こうかというところはホームページをチェックいただければ。そして、コンサートの吉報についてもおつたえしなくては。昨日発表になったのが「城田優Concert Tour 2020 〜Mariage〜」。今年3月に行われたホール公演に続いて、初の4都市ホールツアーの開催となります。大阪は、来年2月29日(土)フェニーチェ堺の大ホール。ラジオネームゆりかごさん、だから吉報ですよ。

吉報ですよ〜

――ミュージカルとは違う魅力が楽しめます。

そう、こちらはいわゆるポップスですね。歌い方も違いますし。

――初めてお会いして、こうしてラジオでお話したわけですが、優さんもかつてラジオ番組を担当されてましたよね。

そうですね、某、オールナイトなんちゃらってのを。

――ハハハ ほぼ言っている。

2年間やってましたけど、僕はほんとにラジオが大好きで、生のこのリアクション、リスナーとの掛け合いみたいなのが楽しくて。

――喋っていて、ラジオが好きな方だってよくわかりますよ。そして、思い出してきた。当時、僕は裏番組を802でやってましたからね。「城田優め!」って思ってたんですよ。

ハハハ!

――でも、こうしてお会いすると、素敵でやさしい人でした。

いやいやいや。一緒に特番やりましょうよ。

ーそうか。特番か!

我々の時代ですよ。

――またご一緒できればと思います。ありがとうございました。

ぜひぜひ。ありがとうございました。

vol.37に続く


衣裳:BLACK Scandal Yohji Yamamoto STYLIST:DAISY 石橋瑞枝(DAISY M’S OFFICE)



野村雅夫
野村雅夫
ラジオDJ/翻訳家。1978年、イタリア生まれ、京都在住。大人のためのミュージック・ステーションとして人気を博すFM COCOLOで、モーニングショーCIAO 765(mon-thurs. 6:00-11:00)を担当するほか、イタリア文化を紹介する京都ドーナッツクラブの代表を務め、映画や小説の翻訳を行う。訳書や映画評、エッセイなど多数。
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