【起業家インタビュー】ABCash児玉隆洋 「事業のブレイクスルーとローラ登場」(後編)

専属のファイナンシャルコンサルタントが、資産形成について3カ月間のマンツーマントレーニングを行ってくれるお金のジム「ABCash」。今年2月、モデルのローラがブランドアンバサダーに就任したことでも話題を集めているが、なぜ創業まもないスタートアップ企業が彼女と組むことができたのだろうか。前編に引き続き、ABCash Technologies代表の児玉隆洋氏に話を聞いた。

女性がクールに金融を学ぶ

お客様ひとりひとりに専属のファイナンシャルコンサルタントがつき、1対1でお金のトレーニングを積んでいく「ABCash」。ターゲットはミレニアム世代の女性に絞りました。社会では女性の活躍が求められているし、新しいサービスに対する反応は男性よりも女性のほうが速い。そんな考えから、女性向けサービスとして立ち上げましたが、2018年6月6日のスタートから最初の半年は、まったくと言っていいほどお客様が来ませんでした。

なぜ客が来ないのか? それは、「お金について学ぶことはカッコいいことなんだ」と伝える意識が足りなかったことが一因でした。「カッコいいから、身につけたい」。そう思っていただくことが重要なんです。

赤字続きの中、最後の一手として、表参道と銀座にWeWorkを借りました。ご存知の方も多いと思いますが、WeWorkは洒落た雰囲気のレンタルオフィス。自然光が差し込むラウンジや打ち合わせスペースが用意され、スタイリッシュな気分に浸れます。WeWorkで「ABCash」のトレーニングを開始したところ、一気に申し込みが増加しました。

どんなに苦しくても人材育成は継続

事業が好転し始めたもうひとつの理由は、赤字続きの苦しい状況でも人材育成だけはおろそかにしなかったことだと思います。これも前職のサイバーエージェントから学んだことですが、会社にとっていちばん重要なのは「人」。人材に投資をすれば、いつか必ず戻ってくる。その理念を胸に刻み、人材投資のお金は一切絞りませんでした。どんなに苦しくても給料はきちんと払ったし、社員同士がお互いを高められるようなイベントや懇親会も積極的に実施しました。

2018年に一人で始めた会社は、約2年で30人強までメンバーが増加。離職率は低く、やむを得ない事情がある人を除いて、ほとんど辞めていません。あと、「ABCash」の特徴として、お客様が当社の社員になるケースが多いですね。特に目立つのが、大手銀行や金融機関の出身者。「ABCash」で3カ月のトレーニングを積んだ後、「今度は私が教える側にまわりたい」と言って勤務先を辞め、当社の採用試験を受けるのです。それだけ、金融リテラシーを向上させることの重要性を感じ取っているのだと思います。

なぜ、金融リテラシーの向上を目指さなければいけないのか。将来のお金に対する不安が大きいと、「現在」を元気に生きることができません。仕事でも、プライベートでもチャレンジができなくなる。人は不安があると、一歩先に踏み出せません。お金の不安がなくなれば、各個人はもちろん、日本全体が元気になります。

ローラをチームの一員に迎える

2020年2月には、モデルのローラさんがブランドアンバサダーとしてチームに加わりました。私は彼女のことを、新しいことに挑戦し、世の中の流れを変え、さらに人を導ける方だと思っていました。「ABCash」のブランドを広く発信していくには彼女の力を借りるしかないなと。直筆で手紙を書き、彼女が暮らすロサンゼルスへ送ったのです。

手紙には「ABCash」が抱いているビジョンと熱い思いを記しました。でも、ローラさんが引き受けてくれる自信なんて、まったくありません。彼女は大スターですし、「ABCash」は創業2年の小さなスタートアップ企業。釣り合わないのは一目瞭然でした(笑)。

それが、まさかの結果です。「ABCash」の理念に共感し、チームの一員になってくれるとの返事がありました。それも、単なる広告塔ではなく、トレーニングを受けたうえでブランドアンバサダーに就任してくれるとの答え。何事も無理だと諦めずに、大胆に行動してみることが大切なんですよ。

今、世界は新型コロナウイルスの感染拡大によって、たいへんな状況になっています。「ABCash」のトレーニングは1対1ですから、在宅リモートでも進められます。現在は、100%がZoomなどを用いたリモート受講。映像や音声が乱れるなどやりにくい部分もありますが、逆に「通う時間が減ってありがたい」とおっしゃられる方もいます。リモート受講になり、入会数も創業以来の過去最高を更新しました。

これまで指導したお客様は、約5000人になりました。今年3月からは大阪、名古屋、福岡でも事業をスタート。全国展開を目指しています。さらに、4月からは法人向けサービスも開始しました。「ABCash for BIZ」というタイトルで、100本の動画を使って金融リテラシーを学んでもらいます。

働く女性に向けてスタートしたサービスですが、今後は男性や学生にも展開していきたい。お金について学ぶことの重要性は日本でもようやく高まってきていて、2022年には高校の教科書に採用されることが決まりました。そうした状況ですから、始めるなら、早いほどいい。今を元気に生きるためにも、ぜひともお金について勉強してください。

Takahiro Kodama
大学卒業後、サイバーエージェントに入社。Amebaブログ事業部長、AbemaTV広告開発局長を歴任。2018年、海外に比べて遅れている日本の金融教育の必要性を強く感じ、株式会社ABCash Technologiesを設立。代表取締役社長に就任。趣味はサーフィン。

お金のトレーニングジム「ABCash」
https://www.abcash.co.jp/  


Text=川岸 徹 Photograph=大森 直