栗山英樹監督に見る リーダー(上司)の仕事とは何なのか!? <後編>

リーダーの仕事とは何か。 「結果を出し、選手も育てる」。それを実践するのが北海道日本ハムファイターズ・栗山英樹だ。中田翔、大谷翔平、清宮幸太郎そして吉田輝星……選手を成長させながらチームを勝たせる秘密はどこにあるのか。現役最長となる監督8年目の「リーダーの仕事」を徹底解剖する短期連載3回目。

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人が歴史、人がデータ

データ全盛の時代である。多くはデジタル化がもたらしたそれらは、ビジネスにおいてもスポーツにおいても新たなチャンスや価値を生み出してきた。

栗山英樹率いるファイターズが先日、対戦したメジャーリーグ・アスレチックは「マネーボール」と呼ばれる「データ野球」で一世を風靡した。以降、野球界におけるデータの進歩はすさまじい。

ただ、それ一辺倒で果たして勝てるか、といえば「肌感覚」として疑問を持つ向きもあるだろう。

栗山英樹が著書『稚心を去る』の中でこう言っている。

「人が歴史、人がデータ」

ファイターズと栗山ほど数字化されたデータを大事にする人はいない。事実、「これからの野球は、データをどう使うかということがますます重要になってくる」(『稚心を去る』)と指摘もしている。

それでも、人が経験した感覚的なこと、事実、その積み重ねを「データ」と捉え、学ぶことは重要になる。栗山は言う。

「だから人が何をしたのか、そこでどういう失敗をして、どういう成功をしたのかが知りたくて、本を読む」

指揮官が「データ」から読み取ったものを紹介してみたい。

リーダーの仕事3:「データから学び続ける」

本書の中では、12人の「データ」を引き、指揮官の責任を考察、解答を示している。それは、星野仙一、根本陸夫ら球史に名を残した人たちから、孟子、吉田松陰ら歴史上の人物、渋沢栄一、渡部昇一ら近現代に活躍した思想家なども含まれる。

なかでも、もっともリーダーが心にとどめておきたいのが橋本左内の言葉であり、本書のタイトルにもなった『稚心を去る』だ。

「『稚心』とは『子どもっぽい心』のこと。それを捨て去らない限り、何をやっても決して上達はしない、とても世に知られる人物となることはできない」

わずか25年という短い生涯を駆け抜けた武士・橋本左内は、数え年で15歳のときに、このようなことを書いたことを栗山は敬意を持って記しながら、自らとチームに置き換える。

「みんな心の中に「大人の心」と「子どもっぽい心」が共存していて、うまくいかないと、すぐに「子どもっぽい心」が出てきて、人を「わがまま」にさせる。そして、余計なことまで考えて、いつもイライラしている。はっきり言って時間の無駄、何もいいことがない」

つまり、誰にでも子供っぽさはあり、それは調子が悪かったり、疲れていたりと何かネガティブな状況にあると顔を出してしまうもの。逆に調子がいいときは、誰でも「大人の心」になれる、というわけだ。

この指摘だけでもうなずけるが、リーダーとしてチームを率いるには栗山の指摘する次の言葉を忘れてはならない。

「「子どもっぽい心」を出させてしまったときは、いつも責任を感じてしまう。どうして「大人の心」を引き出してあげられなかったのか、と。結果が出ていないときにどうやって「大人の心」を引き出すか。きっとそれを引き出すのが、監督の仕事なんだと思う」

組織とは、チームにおいては、どこかで、誰かの「子どもっぽい」心が出てしまう可能性がある。それを出させないこと、そして「出てしまうだろう」ことを想定してマネジメントをする必要があるのだ。常に、誰もが「大人」でいることを想定していては、前に進むことができない。

栗山が学んだ「データ」は今でも生きる、金言である。

『稚心を去る 一流とそれ以外の差はどこにあるのか』
栗山英樹(北海道日本ハムファイターズ監督)
価格:1350円


Text=森田智彦(ゲーテWEB編集部)