活動休止会見で見せた、嵐の時代を読む力 ~ビジネスパーソンのための実践的言語学29

最近、説明や謝罪時の、違和感のある言葉遣いが話題になりがちだ。当コラムでは、実際の発言を例にとり、公私の場で失敗しない言葉の用い方を考える。ビジネスパーソンのための実践言語学講座、いざ開講!


「2017年6月中旬ごろ、メンバー4人に集まってもらって自分の思いや気持ちを話させていただきました。嵐としての活動をいったん終えたいと」ーーー2020年いっぱいでの活動休止を発表した嵐のリーダー大野 智

企業広報などの教科書に載せたくなるような、完璧な記者会見だった。1月27日、2020年いっぱいでの活動休止を発表した嵐が5人揃って会見を行った。夕方にまずファンクラブに発表してからの記者会見という段取りや、約2年間の猶予をもうけるという時間的配慮も見事だが、ここまでの過程を明らかにするという姿勢が起こりうるハレーションを最小限に抑えたと言っていいだろう。

30歳代後半の男たちが、自分たちの好きな道を歩む。本来なら誰に遠慮することもないようなことなのだが、スーパーアイドルという立場ではそうもいかない。彼らは自分たちの選択がどのような事態を引き起こすかを理解した上で、会見を行っていた。驚いたのは、活動休止の発端がリーダーの大野智であることを、大野自らが明らかにしたことだった。

「2017年6月中旬ごろ、メンバー4人に集まってもらって自分の思いや気持ちを話させていただきました。嵐としての活動をいったん終えたいと。自分の思いとしては、自由に生活をしてみたいとメンバー4人に伝えて、その後、何度も何度も話し合いを重ね、期限を設けて、2020年をもって、嵐を休止するという形になりました」

「疲れちゃったとかではなくて、一回立ち止まって自分を見つめ直したいというのがでかいですね」

自分が活動休止を言いだしたことをわざわざ言う必要はない。「5人で話し合って、この結論を導き出した」という説明でもよかったはずだ。それでも大野は、この“悪役”を引き受けた。そうしなければ、メンバーの不仲や隠れた不祥事など、さまざまな憶測が巻き起こり、ネットやSNSが大騒ぎになっていただろう。そして、あえて泥をかぶったリーダーに対する他のメンバーのフォローも絶妙だった。

「最初はすごく驚きましたが、誰か一人の思いで嵐の将来を決めるのは難しいと思うと同時に、他の何人かの思いで誰か一人の人生を縛ることもできないと。(中略)どれだけ時間をかけても全員が納得する形の着地点を探していかなきゃならない、それは僕の役割だろうなと。その瞬間に思いました」(櫻井 翔)

「初めてリーダーから聞いたときはひっくり返りましたね。現実で突きつけられたとき、最初は準備がいりましたし、リーダーと二人で話す中でどうにか嵐を続ける方法はないかと話をしました」(相葉雅紀)

「自分たちがいい形の状態でグループを閉めるということを実際考えたこともあったし、その話をメンバーにしたこともありました。具体的な時期を提示したりはなかったですけど。なので、一番最初にリーダーに呼ばれて話を聞いたとき、僕は驚きはしませんでした」(松本 潤)

「僕らはみんなでやりたいと思ったときにやるし、みんなでやりたくないときはやらない。でも、一人がやりたくないというときは、どうしてそう思うのかみんなで話し合って決めていく。もしリーダーが悪者に見えるのであれば、それは我々の力不足です」(二宮和也)

メンバーは自らの戸惑いの過程も含めて率直に語ることで、活動休止にいたる過程を明らかにした。だからこそ、好感度を保ったまま、ソフトランディングに成功したのだ。

企業や組織は、責任を問われる“悪役”を作ることを避け、自分たちに都合のいい「表向き」の説明だけを行いがちだ。だが、もはやそれがまかり通る時代ではない。原因と過程と結果をつなぐストーリーが明らかでないと、すぐに炎上し、その火は延々とくすぶり続ける。統計不正問題をごまかそうと躍起になって厚生労働省の担当者は、すぐにでも嵐の記者会見を見て、勉強すべきだろう。


Text=星野三千雄 


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