Yahoo!とLINEの統合が、国境なき時代の到来を告げる〜ビジネスパーソンの言語学71

最近、説明や謝罪時の、違和感のある言葉遣いが話題になりがちだ。当コラムでは、実際の発言を例にとり、公私の場で失敗しない言葉の用い方を考える。ビジネスパーソンのための実践言語学講座71、いざ開講!


「志はひとつ。世界の第三極になることで一致している」ーーー来秋のLINEとの統合を発表したヤフーを展開
するZホールディングスの川邊健太郎社長

利用者数約8000万人のメッセージアプリ「LINE」と約5000万人の「ヤフー」が来秋の経営統合を発表した。利用者数は1億人規模といわれ、国内トップのIT企業が誕生することになる。

「真に重要なのはこれからつくりあげるまだ見ぬ新しいサービス。それにチャレンジしていく」(LINEの出澤剛社長)

出澤社長46歳、川邊社長45歳という若きリーダーたちが意識するのは、アメリカのGAFAや中国のBATなどの巨大ITプラットフォーマーであることは間違いない。

「優秀な人材、データが強いところに集約してしまう。2社が一緒になっても桁違いの差がついている」(出澤社長)

経営統合の根底にあるのは、巨大な波に飲み込まれてしまうという危機感だ。LINEの親会社は韓国のNAVER社。今回の経営統合は、実質的にはLINEがヤフーのソフトバンクグループに入るという形になる。日韓関係が微妙な時期にもかかわらず、彼らは政治の壁を超えて手を握りあった。

「NAVER社は(LINEを)非連結にする判断をしてでもソフトバンクに譲った。志はひとつ。世界の第三極になることで一致している」(Zホールディングスの川邊健太郎社長)

キャッシュレス化が進み、Facebookは価格変動の起こりにくい独自の仮想通貨「リブラ」のリリースを発表している。遅かれ早かれ、金融業務の多くをIT企業が担っていく時代になるだろう。現在世界でもっとも人口が多い中国が約14億人、2番目がインドの約13億、3番目のアメリカは約3億人。これに対してFacebookのアクティブユーザーは23億8000万人(2019年3月)。もはやどんな国をもしのぐ“Facebook民”がリブラを使い始めたら、各国の通貨の存在意義がなくなる。国家の基盤になるのは、国土と国民と通貨だ。通貨が国の手を離れるとなると、国家はそのアイデンティティを失うことにもなりかねない。そんな時代の転換期に来ていることを私たちはもっと認識すべきだろう。

“国境なき時代”化の流れはもはや止めることはできない。ビジネスが世界規模になった時代に「国内シェア」「国内ナンバー1」といった言葉はほとんど意味を持たない。日本という国とソフトバンクという企業、どちらが私たちの資産を守ってくれるんだろう? 日本という国とFacebookという企業、どちらが私たちの生活を豊かにしてくれるんだろう? 花見だなんだと浮かれている政治家たちより、シビアに世界と時代を見ている企業家のほうが信頼できるような気がするのは私だけだろうか。気がつけば、国ごとIT企業に飲み込まれていたなんてことにもなりかねない時代はすぐそこまで来ている。

Text=星野三千雄 Photograph=Getty Images



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