「それ、会社病ですよ。」ローカル経済件で食べている人を救うならゾンビ企業をこれ以上延命させるな Vol.19


グローバル化の進展で、先進国の雇用に起きたこと。それは、ローカルな経済圏で働いて給料をもらっている人の比率が上がったことです。これはアメリカでもドイツでも日本でも同じ。
 グローバルな経済圏の競争者はどの機能を世界のどこに置くか、徹底比較した結果、そのエリアを選択します。そしてグローバル経済で本当に必要なのは、高度人材だけ。量的な雇用吸収力はない。
 では、どこで国民は収入を得るのかというと、空洞化が起きない産業。つまり、国内のサービス産業です。日本でいえば、ここで食べている人が8割にのぼる。
 ところが、アベノミクスで語られているのは、グローバル経済圏の話が中心です。だから、8割の人には恩恵がない、というような話になる。しかも、グローバルな経済圏で働く高度人材はそうそう増えない。維持が精一杯です。
 今、本当に必要になっているのは、ローカルな経済圏で働く8割の人の賃金や雇用をどう持続的に増やすか、という議論なのです。全員でグローバル人材を目指せ、ということではない。なぜなら、それはとんでもなくハードルの高いことだから。実は、グローバル経済に巻き込まれる必要などない人たちのほうが圧倒的に多いのです。
 また、グローバル経済圏で潤っても、今やローカル経済圏にすんなりトリクルダウンしてくることもない。かつてのような、大手のグローバルメーカーを頂点に中小下請け、孫請けといった産業構造ではないからです。ローカル経済圏は、ほとんどが独立したサービス産業。グローバル経済圏の潤いは直接、下りてはこない。

では、どうすればいいのかというと、答えはシンプルです。ローカル経済圏の産業の労働生産性を上げること。これこそが、賃金を上げ、雇用を拡大させる方法です。そして、そのために有効な方法があります。産業の密度を高めることです。端的に言えば、M&Aによって、高密度の寡占状態を作る。効率のいい経営をしているところに雇用や事業を集中させ、ベストプラクティスアプローチで、生産性を高めるのです。
 逆に、生産性の低い会社やブラックな会社は退出してもらう。税制優遇や補助金で低生産性の企業を守ってきたのが、これまでの日本でしたが、もうゾンビ企業は延命させない。過去、確かに製造業が衰退するなかで、他の産業が雇用の受け皿になるという存在意義はありましたが、もうそれも必要ない。なぜなら今、サービス業では、労働力はまったく足りていないから。
 都内のファストフード店が、人手不足で閉店というニュースがありましたが、実は地方都市ではもっと早く人手不足が起きていました。今、地方で大規模なショッピングセンターなど、作ろうと思っても作れません。なぜなら、従業員を確保できないから。
 ゾンビ企業に退出を願うという政策の大転換は、「従業員が路頭に迷う」という経営者の大反発に合うかもしれません。しかし、このセリフはもう通用しない。なぜなら、路頭に迷わないから。
 自律的な力を持っている企業を応援し、事業や雇用を収斂(しゅうれん)する。そうした地に足のついた政策こそが今、求められているのです。


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