経団連会長がついに口にした「日本型雇用システム」の終焉 ~ビジネスパーソンの言語学㊶

最近、説明や謝罪時の、違和感のある言葉遣いが話題になりがちだ。当コラムでは、実際の発言を例にとり、公私の場で失敗しない言葉の用い方を考える。ビジネスパーソンのための実践言語学講座、いざ開講!


「正直言って、経済界は終身雇用なんてもう守れないと思っているんです」ーーー中西宏明・経団連会長が日本の雇用形態の変革について発言

たとえば20年後、私たちはiPhoneを使い、Amazonでショッピングをし、GoogleやFacebookでコミュニケーションしているだろうか? 答えは、恐らくNOだ。これからもどんどん新しいテクノロジーが生まれ続け、恐らく20年後にはいま生まれてすらいない企業、ブランドが提供する新しいライフスタイルを送っているだろう。いま現在、世界を牛耳っているGAFAですらそうなのだ。どんな大企業もその未来は不透明だ。

ここにきて、経団連の中西宏明会長が就活ルールの見直しにあわせて、日本独自といわれる雇用形態について言及を続けているのは、その危機感のあらわれと言っていいだろう。

「正直言って、経済界は終身雇用なんてもう守れないと思っているんです」

「産業が新陳代謝していくなかで、社会の仕組みが変わらなきゃいけない時代に来た」

「終身雇用うんぬんっていうことは元々、ルールであったわけじゃなくて、企業から見ると『あなたを一生、雇用を続けます』という保証書を持っているわけじゃない」

誰もがうすうす気付いていたことをついにおおやけに口にしてしまった。年功序列と終身雇用は、日本企業の特長といわれてきた。入社しさえすれば、年齢に応じて昇進し給料が上がり、定年までそれが続き、その後は年金で生活する。日本を高度経済成長に導いたこの雇用システムは、残念ながらとっくに幻想となっている。バブルの崩壊以降、どんな大企業であろうと安泰ではない時代に突入した。年齢ではなく、実力主義を採用する企業も増えた。リストラ、非正規雇用、年金システムの崩壊、高度プロフェッショナル制度など、労働者をとりまく環境は、どんどん“悪化”し続けているといっていいだろう。

経営者側に言いたいのは、終身雇用を守れないというなら賃金システムについても見直してほしいということだ。海外では、非正規雇用は正規雇用よりも高い賃金が支払われるというのが常識だ。定年まで働けないというのなら、退職金の積立も必要ない。リスクは増やすけど、支払う金は増やさないというのは、あまりにも都合が良すぎるではないか。企業が社員を守る気がないのだから、社員も愛社精神、忠誠心なんて持つ必要はない。持つべきは、いつ会社を追われるかわからないという危機感といつでも辞めてやるという覚悟だ。

恐らくこの流れが今後変わることはないだろう。ひとつ疑問なのは、この変化が日本企業、日本経済を活性化するかどうかということだ。労働者が将来に不安を抱えながら働かなければならない社会に、明るい未来があると思えないのは、私だけだろうか。

Text=星野三千雄 Photograph=Getty Images