【オフィス探訪】コンサルの概念を根本から変えるアクセンチュアの共創型オフィス

「イノベーションによって世界の人々の仕事と生活をより良くする」をミッションに掲げる総合コンサルティング企業アクセンチュア。今年1月、麻布十番に「アクセンチュア・イノベーション・ハブ東京」(AIT)を完成させた。AITは「お祭りオフィス」「町家オフィス」と呼ばれるなど、そのコンセプトが注目されており、これまでのコンサルティングのスタイルを180度変える革命的な仕組みを持ったオフィスだ。


コンサルは「訪問型」から「共創型」へ

1953年に創業し、現在世界53カ国 200都市以上にオフィスを構えるアクセンチュアは、世界最大級の総合コンサルティング企業である。同社は、戦略から実行までの一貫した支援体制を世界共通で整え、通信・メディア・ハイテク、金融サービス、公共サービス・医療健康、製造・流通、素材・エネルギーなど幅広い産業分野で、企業や組織のイノベーション実現に大きな力を注いでいる。日本では、50年以上にわたって日本企業のイノベーション創出を支えてきた実績があり、アクセンチュア・イノベーション・ハブ東京(AIT)はその名の通り、日本発のイノベーションを生み出すためのハブとなる拠点だ。

アクセンチュア・イノベーション・ハブ東京 共同統括 保科 学世 氏。

「これまでのアクセンチュアでは、各業界のプロフェッショナルがお客様先に常駐して課題を解決するコンサルティングサービスを行ってきました。しかし、急激に競争環境が変化し、先が読みにくい世の中では、たとえ既存事業が良好でも、イノベーションによって生まれ変わり続ける必要があります。こうしたなか、アクセンチュアでは、さまざまな企業や組織が相互に連携することが重要だと考えております。そのため、これまでのサービスに加えて、お客様が弊社の専門家やスタートアップ、行政などと相互に技術やアイデアを提供していく『共創型のコンサル』にも注力すべきだと考え、その拠点としてAITを構想しました」(アクセンチュア・イノベーション・ハブ東京 共同統括の保科学世氏、以下同)

AITには、データサイエンティストやCXデザイナーなど新しいサービスを開発・設計するスキルを持った専門家が集まっており、こうした専門家とともに圧倒的なスピードで戦略やサービスを市場に展開することができるのだ。

AITの概要。アクセンチュア記者発表資料より抜粋。

人材やテクノロジーがただ集うだけではイノベーションは実現しない。アクセンチュアでは、それらに働きかけてイノベーションへと導く仕組みを「アクセンチュア・イノベーション・アーキテクチャ」としてまとめている。AITは、その考え方を具現化した拠点だ。

「イノベーションを創出するためには、まず世の中のトレンドを把握したうえで、スピード感を持ってビジネスのシーズとテクノロジーをつなげます。そして、プロトタイプとして具現化させ、精緻化させるプロセスを重ねていくことが重要です。特に、オープンイノベーション、研究・開発、プロトタイピング、実証についてはスピード感を持って行う必要があります。AITにはこれらの専門家が常駐し、素早くサービスを構築するためのテクノロジー、プラットフォーム、その他、多くのアセットが集約されています」


偶然を誘発する共創オフィスのデザイン

AITはビルの8階と9階に分かれている。8階フロアは「The Hub」と呼ばれており、コンセプトは「界隈」だ。顧客をはじめ、スタートアップ、大学・研究機関、行政などさまざまな人が集い、アクセンチュアの専門家と出合う場だ。

このフロアには、ワークショップやデモを展示するエリアや顧客と協働するための会議室が用意されている。また、同フロア内にアクセンチュアのセキュリティチームのエリアや、デジタルテクノロジーの専門家によるインターナルエリアがあり、専門家とともに、圧倒的なスピードで戦略やサービスを市場に展開する環境をつくっている。

8階のオフィスに入り、まず目に入るのがAITを象徴する「やぐら」

9階フロアは「The Studio」と呼ばれており、コンセプトは「町家」だ。生活と商売が一体化した空間を目指しており、カフェやライブラリーエリア、多様な会議室やフリースペースなど、感性のままにアイデアを出してモノをつくる場となっている。 

「AITがある麻布十番は、もともと町家と呼ばれる住宅が密集したエリアでした。また、麻布十番では毎年、納涼まつりが行われています。先ほど述べたようにAITには、人が集い交錯し、共創していく場としての役割があります。そのイメージからオフィスのコンセプトを定めました。8階のエントランスの正面には、日本のまつりを象徴する『やぐら』を配置し、その周りには我々が『屋台』と呼んでいるデモを展示する可動型のブースがあります。ブロックチェーンやAI、VR/ARなど、最新のテクノロジーを体感していただくことで、新規ビジネスやサービスのヒントを持ち帰ってもらえることを意識しております」

8階のデモやワークショップでビジネスの着想を得たら、「協創エリア」でアクセンチュアの専門家やパートナー企業らとともに短期間でプロトタイプを開発し、9階のより落ち着いた雰囲気のスタジオで、新規事業や新規サービスのアイデアをさらに具現化できる。

工場などの製造現場で使われるソリューションのデモが並ぶエリア

「今成長している企業は、企業間のコラボレーションを非常にうまく取り入れています。イノベーティブなビジネスのシーズが偶発的に生み出されることもありますが、偶発をただ待ってもいられません。そこで偶発すら意図的に生み出すのが、今求められるオフィスの一つの形ではないでしょうか。だからこそAITは、自身がカタリスト(触媒)となり、人(企業)とテクノロジーを結び付けているのです。日本は少子高齢など、課題先進国と言われていますが、サービスをつくり出す立場からするとチャンスでもあります。今本気で課題と向き合って開発されたサービスは、いずれ同様の課題に直面する国々の課題解決に適用できるからです」

「時代が求める知見とテクノロジーが世界中から集まり、イノベーションを生み出していく場にしていきたい」と展望を語る保科氏。アクセンチュアの新オフィスは、イノベーションのプロ集団が10年、20年先を見据えて次のビジネスの兆しを見つけ育てる、まったく新しいスペースだった。

アクセンチュア
代表取締役社長 :江川 昌史
本社所在地:東京都港区赤坂1-8-1 赤坂インターシティAIR
設立: 1995年12月
資本金:3億5千万円
従業員: 約1万人(2018年4月1日時点)
事業内容:「ストラテジー」「コンサルティング」「デジタル」「テクノロジー」「オペレーションズ」の5つの領域で幅広いサービスとソリューションを提供
https://www.accenture.com/jp-ja

アクセンチュア・イノベーション・ハブ 東京
所在地:東京都港区三田1-4-1 住友不動産麻布十番ビル 8階・9階
https://www.accenture.com/jp-ja/accenture-innovation-hub-tokyo

Text=稲垣 章(MGT) Photograph=松川 智一