たゆまぬ努力がいつか実を結ぶ! 昭和的価値観を証明した徳勝龍の優勝~ビジネスパーソンの言語学80

最近、説明や謝罪時の、違和感のある言葉遣いが話題になりがちだ。当コラムでは、実際の発言を例にとり、公私の場で失敗しない言葉の用い方を考える。ビジネスパーソンのための実践言語学講座80、いざ開講! 


  「もう33歳じゃなくて、まだ33歳と思って頑張ります」―――33歳5ヵ月で初優勝を果たした大相撲の徳勝龍誠  

この初場所前から徳勝龍という力士を知っている人がいるとしたら、かなりの相撲ファンだろう。幕内と十両を行ったり来たりの西前頭17枚目のベテラン力士。"幕尻"での優勝は20年ぶり。上位陣の休場や組み合わせの妙に恵まれた部分はあっただろうが、14勝1敗という成績は、まぐれではあげられない。

「私なんかでいいんでしょうか?」

場内の笑いを誘った優勝インタビューは、前夜風呂場で練習していたという。初土俵から11年間一度も休まず場所をつとめてきた苦労人だけに、そのうれしさもひとしおだっただろう。

「もう33歳じゃなくて、まだ33歳と思って頑張ります」

優勝インタビューでは元気にそう語ったが、ここまでの道のりはたやすいものではなかっただろう。一夜明け会見では、本音も垣間見せた。

「同年代みんな強くて三役経験してるんで、置いていかれている思いもあったが、自分は自分と思ってしっかり切り替えて、やれることだけやろうと。周りは関係ない。人は人と思ってやってきた」

「自分は本当に弱いんで。周りの人はもっとやっていると思うんで、自分ももっとやらないといけないと思った。自分が稽古していても、周りはもっとやっている。稽古でも満足せずにもっと、もっと」

33歳というと、大きな企業ならせいぜい中堅。人生まだこれからという年齢だ。だが、スポーツ界ではそうもいかない。科学的トレーニングの進化によって、競技寿命が伸びているが、実際、同じ年齢の豪栄道は今場所での引退を示唆。ひとつ上の横綱白鵬や鶴竜はここしばらく年間通して出場することすらままならない状態だ。

「一生懸命な子。最後はそういう人が勝つもんなんですよ」

今場所中に亡くなった徳勝龍の恩師、近畿大学相撲部の伊藤勝人監督は、若き日の彼をこう語っていたという。圧倒的な才能に恵まれずとも、腐らず努力を続けていけば、いつかいいことがある。そんな昭和的価値観が令和の時代にも通用することを、休まず真面目に相撲を取り続けてきた徳勝龍が教えてくれたような気がする。


Text=星野三千雄