【特集サイバーエージェント】クリエイターとマネジメントは理解し合えるのか?

藤田 晋率いるサイバーエージェントは今年で創業20年。いまや社員数4500人以上、IT業界のリーディング企業だ。サイバーエージェントとはどんな会社か――という問いに対し、多くの人が「人材」の会社だと答える。そこでサイバーエージェントで活躍するキーパーソン8人にインタビュー。第7回目は執行役員で、クリエイティブ統括室 室長の佐藤洋介さん。サイバーエージェントの強さとは何なのか――。


それ、ふつうになってない?

サイバーエージェントからは日々、さまざまなジャンルのサービスやプロダクトが生まれ、運営されている。それらは膨大な数に上るというのに、どこか統一感や「らしさ」を感じさせるのは不思議だ。

これはユーザーの目に触れる部分のデザイン、その部分のクオリティとテイストがきちんとコントロールされているゆえではないか。

「そうですね。単に洗練させるというだけではなくて、そのサービスやプロダクトに触れる相手の心のどこかを揺さぶるものであること、驚きをもたらすものであることを念頭に置いて、全体のUI(ユーザーインターフェイス)デザインを注意深く見ているのはたしかです」

執行役員で、自ら設立したクリエイティブ統括室の室長を務める佐藤洋介さんが言う。

「サイバーエージェントが出すサービスのデザインに触れることが、ユーザーにとってひとつの新しい体験であってほしい。市場の一歩先を行くようなもの、他のデザイナーから真似したいと思われるものを目指しています。

AbemaTVやAmebaなど、自社サービスを運営するメディア統括本部のクリエイター向けのミッションステートメントは『それ、ふつうになってない?』という一文から始まります。メディアサービスのUIデザインは、なんとなくきれいに整ったものをつくることはスタート地点にすぎません。いまはデザインツールも豊富なので、それらしい造形は多少の知識があれば簡単にできてしまうものですが、そこを超えていくものを常に出していかないと」

なるほど、しかし「ふつうにならない」ことを、クリエイター全員に徹底させるのは、かなりの難問ではないか。

「浸透させるのはたしかにたいへんです。そこで僕は、デザイナーの特性を利用して、お互いに横の関係を重視するよう促しています。自身がデザインしたものをアウトプットして意見をぶつけ合う場をつくったり。デザイナーというのはとかく自分の世界に深く潜って、内省するタイプが多いんですね。そういう時間も必要ですが、自分のつくったものをとにかく人目に晒すこと、人の成果物もしっかり見て自分の中に評価軸を持つこと、作品を通して人とつながりを持つことも意識的にしていかないと、レベルアップは図れません。

社内限定のデザインコンペもよくしています。幅広いアウトプットの場を用意しておくのです。募集すると思いのほかたくさん作品が集まって驚くほど。この文化はサイバーエージェントの大きな資産ですね。デザインが好きで、新しい課題があればまずはとにかく挑戦するという姿勢は、業務でおこなうアウトプットにも必ずいい影響を及ぼします」

社内コンペなどには、自身もできるかぎり参加し、作品を提出する。そこでは他のデザイナーとまったく同じ条件で、さまざまな評価を受けることとなる。つまりはクリエイティブ部門のトップが、現役バリバリのデザイナーとしても勝負しているということ。

「あまりに忙しくて提出できないことがあると、メンバーから言われますよ。『あれ、今回なんで出してないんですか?』と。すぐ突き上げをくらいます(笑)。僕がアウトプットを続けて、皆に技量を見せ続けるのは大事なことです。というのも、クリエイターやデザイナーをマネジメントするときには、指揮する側のスキルが見えないと人はついてきません。だから僕も機会を見つけてアウトプットをします。マネジメントとの両立はたいへんですが、結局は好きなことだから、ついついやってしまうんですよ」

クリエイターを束ねるトップがクリエイターだからこそ気づくことも、職場環境に反映されている。

「オフィス内の座席位置にも細かくリクエストを出します。クリエイターの席は新人であれ誰であれ、なるべく人が通らない奥のほうにしてもらいます。クリエイターは、つくっている途中のものが人の目に触れるのを、極度にいやがるもの。集中力を高めていいものをつくるには、最低限の環境が必要になります。

彼らはそういう思いをあまり言葉にしたがりませんから、僕のほうから積極的に働きかけていく。とはいえ職人気質に黙々と仕事をしていればいいというわけでもなく、サイバーエージェントではたとえばサービスを立ち上げるとき、事業責任者たるプロデューサーと、エンジニア、デザイナーが三位一体になって事業モデルから考えていくことが多い。クリエイターも企画の方針やコンセプトづくりにしっかり関わっているんです」

サイバーエージェントでは2015年、会社全体のリブランディングを実施。アートディレクターにNIGO®氏を迎え、デザイン面の強化・統一を図った。

その際には、藤田社長と緊密に話し合いを重ねながらプロジェクトを進めた。

「サイバーエージェントは場合は経営陣が、クリエイティブの重要性をしっかり理解しているのが強み。藤田とは定期的に、クリエイティブの現状やこれからの方向性について話す時間を設けています。

マネジメントにクリエイティブの理解を深めてもらう働きかけは常にしていますし、逆にクリエイターの側も、マネジメントを深く理解していなければならない。そこは勉強したり情報を得るよう努めていますし、クリエイターたちにもそうあるようによく話をします。サイバーエージェントのクリエイティブに統一感があるとしたら、マネジメントのマインドがどんなアウトプットにも浸透しているところに、その要因があるんじゃないでしょうか」


Yosuke Sato
大学院卒業後、大手印刷会社のWeb制作部門に入社。2012年、中途入社。数々のスマートフォンサービスの立ち上げを経験したのち、クリエイティブ統括室を設立。現在はクリエイティブの執行役員として各サービスのUIデザインを監修。


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