「それ、会社病ですよ。」日本発のグローバル成功企業が出ない原因 Vol.18


サントリーによるジムビームの巨額買収が話題になりました。振り返ってみると、日本の海外企業の買収は死屍累々(ししるいるい)です。成功例は少ない。最大の要因は、経営モデルの違いです。
 日本以外の国の多くの株式会社は、強いリーダーシップのトップダウンモデル。一方、日本はボトムアップでコンセンサスを重視する会社が多い。買収した海外の会社の決定が、日本でずるずる先延ばしにされたり、誰が責任者かわからないようななかで曖昧な決断がなされたり。これでは、海外の優秀な経営者も思うような経営ができなくなります。
 さらに、陥りがちなのが「買収した会社とシナジー効果でお互いにメリットを」という幻想です。経営がトップダウンvsコンセンサスと真逆のままなら、それは無理な話。オペレーションは任せて、黙って株主をやっていたほうがよっぽどお互いに幸せです。
 日本企業は変わっていくしかない。実際、ブリヂストンやダイキンなど、海外で買収を成功させている日本企業はトップの顔がよく見える会社です。こうならないとグローバルマージャーの世界でもうまくいかないということです。

ところが、こんな声が止みません。「日本人には日本の経営モデルが合う。合議制や長期志向こそ日本の文化。生え抜きや年功だから、やる気が出る……」。しかし、何を根拠にそんなことを言っているのでしょうか。
 名経営者と言われた土光敏夫や石坂泰三は生え抜きだったでしょうか。今のような日本的経営モデルが一般化したのは、高度成長以降のせいぜい30年ほどに過ぎません。江戸時代という安定期に、徳川家を頂点とする独特の封建的統治機構がうまく働いたのと同じ。もっとも一般の領民にすれば、頻繁に国替えがあったため、領主など誰でもいいと思っていた時代ですが。
 今、日本企業が巻きこまれているのは、世界を舞台にしたグローバルな“戦国時代”です。だから、日本モデルは途端にワークしなくなった。経営力の弱さから多くのリストラ犠牲者が出ました。これは昔でいえば、殿様がひどいから領民が飢え死にしてしまったのと同じです。
 日本企業は20年間、試行錯誤を積み重ねてきましたが、所詮は“アプリケーション”をいじってきただけでした。成果主義を入れたり、委員会設置会社を入れたり。しかし、問われているのは、組織の“OS”そのものを変えることです。一番触りたくなかったものを、変えねばいけない時代になった。
 人材がいなければ、優れた経営者を外部から招けばいい。実際、資生堂や武田薬品などは着手しています。飢え死にするよりも、よほどましでしょう。人事や評価の体系も、居心地のいい仕組みから変わらないといけない。合議や年功序列などにこだわっていたら、攻め滅ぼされてしまう。
 大変なチャレンジかもしれない。しかし、明治維新に比べたら大したことはありません。そしてアメリカも、日本に追い詰められて、サラリーマンモデルから変貌しました。日本にも、待ったなしの時期が来たのです。


Text=上阪 徹 Illustration=村田篤司
*本記事の内容は14年2月取材のものに基づきます。価格、商品の有無などは時期により異なりますので予めご了承下さい