スコッチウイスキーの王道、バランタインのDNAを継承するマスターブレンダーの仕事とは?

ブレンデッド・スコッチウイスキーの雄、バランタイン。特に「バランタイン 17年」はThe  Scotchと称され、華やかな香りとまろやかな味わい、いつまでも続く余韻の完璧なまでのバランスが、世界中のウイスキーファンを魅了し続けている。その1827年より始まるバランタインの伝統や品格、秘伝のブレンド技術を現代に継承してきたのが、歴代5人のマスターブレンダーたちだ。約190年という長い歴史の中で、マスターブレンダーの名を記すのは、たったの5名。その5代目であるサンディー・ヒスロップ氏に、マスターブレンダーという稀有な仕事について聞いた。


ブレンデッド・スコッチの王道、バランタイン

1827年、スコットランドの首都エディンバラで幕を開けた「バランタイン」の歴史。創業者であり、初代マスターブレンダーでもあるジョージ・バランタインが追究したブレンディング技術は、イギリス王室も認めるものとなり、世界中で愛されるようになった。

それを礎に、2代目マスターブレンダーのジョージ・ロバートソンが、1937年に完成させたのが「バランタイン17年」である。17年以上熟成させた40種類以上ものモルト原酒を、卓越したセンスと確かな技でブレンドした“スコッチの王道”だ。この銘酒を、現代に引き継ぐのが、サンディー・ヒスロップ氏。2006年に5代目マスターブレンダーに就任、'16年にはインターナショナルスピリッツチャレンジで「マスターブレンダーオブザイヤー」に輝いた人物である。

伝説のマスターブレンダー、ジャック・ガウディー氏との出会い

ヒスロップ氏のキャリアは、1983年、バランタインの関連会社からスタートした。18歳だった彼は、平日はウイスキー作りに従事し、週末は大学で化学を学ぶ生活を約5年間続ける。

「小さな会社だったのでウイスキー作りの工程すべてに携わっていましたが、メインだったのはボトリング作業。サンプルをテストし、品質報告を担当していた時に、バランタイン3代目マスターブレンダーであるジャック・ガウディー氏に声を掛けられたのです」

バランタイン5代目マスターブレンダーのサンディー・ヒスロップ氏。

ヒスロップ氏の報告書には、その才能の片鱗が如実に見て取れたのだろう。週1回、ガウディー氏のもとで仕事をするよう要請され、半年後には週2回通うように。そしてその1年後、ブレンダーとして正式に採用された。「1年間かけて面接されていたようなものです」と笑うヒスロップ氏。

才能や仕事振り、そしてその人柄を長い時間をかけて見定める。このエピソードは、バランタインの次世代を担う人材選びは、それほど慎重に行われるということの証でもある。なかでも、マスターの称号を名乗れるのは、社内でたったひとりだけ。先代が引退する際、後継者を指名するのだという。ヒスロップ氏は、ガウディー氏の跡を継いだ4代目のロバート・ヒックス氏引退に伴い、その地位に抜擢された。

「私自身は、ブレンダーを目指して入社したわけではありません。そもそもブレンダーは、なろうと思ってできる仕事ではない。優れた嗅覚、それを記憶する力、そして的確かつ豊かな表現力。さらに、ウイスキーへの情熱、歴史への興味がないと務まりませんから」

マスターブレンダーの仕事の75%はマネジメント

マスターブレンダーの仕事は幅広い。蒸溜所に足を運んで原酒の管理をし、ブレンディングを行うのみならず、樽の仕入れやケア、在庫管理まで一手に担う。

「仕事のうち、新しい製品を生み出すのは25%、残り75%は、既存の製品が毎年同じ品質を維持できるようにする、いわばマネジメントです」

ウイスキーの原酒づくりは、大麦を原料とする麦芽に仕込み水を合わせて麦汁にするところから始まる。これに酵母を加えて発酵させた発酵液は「もろみ」と呼ばれ、それを蒸溜した後、樽の中で長時間熟成させたものが原酒となる。この原酒をブレンドし、“ウイスキー”として完成させるのが、ブレンダーだ。

「ウイスキーのフレーバーに与える影響は、原酒と樽が半々。まず原酒ですが、蒸溜所によって、さまざまな特徴があります。バランタインの主要原酒だけとっても、グレンバーキー蒸溜所はフルーティーな甘みを持ったパワフルな風味、グレントファーズ蒸溜所はナッツのような豊かな味わい、スキャパ蒸溜所はフレッシュでデリケート、ミルトンダフ蒸溜所はフルーティーでスパイシーな甘みという具合です。樽も同様で、ホワイトオークやスパニッシュオークなど木材の種類のみならず、年によって材質の違いも出てきます。これらの違いを認識し、微妙に組み合わせを調整しながら、常に同じ味わいを持つウイスキーを世に送り出す。これが私たちブレンダーの役割であり、そのブレンドのレシピを決めるのがマスターブレンダーの仕事です」

マスターブレンダーは、万に一つも判断を誤ってはいけない

ブレンディングがそのウイスキーの風味を左右するだけに、マスターブレンダーの重責はかなりのものだ。

「ガウディー氏からは『ブランドを確立するには30年はかかるが、評判が崩れるのは一瞬。だから、マスターブレンダーは、万に一つも判断を誤ってはいけない』と諭されました。けれど、彼はこうも言ってくれました。『それを肝に銘じ、真摯に仕事に取り組んでいれば、決して間違いは起きない』と」

現在、バランタインの深い味わいをつくりだせるのは、5代目マスターブレンダーのサンディー・ヒスロップ氏ただひとりだ。

この言葉は、ヒスロップ氏の仕事の指針となっている。と同時に、彼を突き動かしているのは、バランタインが育んできた伝統へのリスペクトだ。

「バランタインは世界に認められた、伝統あるブランド。その最大の魅力は、なんといっても、複雑なフレーバーが織りなす完璧なバランスです。それは、『バランタイン17年』に限らず、すべての製品にバランタインのDNAとして刻みこまれています。先達たちが積み上げてきた素晴らしい味わいと品質を現代に伝える役割を担っているのは、とても光栄で誇らしいこと。プレッシャーはありますが、喜びの方が大きいですね。この仕事に携わって35年になりますが、今でも、毎日仕事に行くのがとても楽しい。私にとって一番居心地のよい場所は、(原酒のブレンドを行う)サンプルルーム。仕事は私の人生そのものなのです」

日本にのみ届ける限定品へのこだわり

10月9日、日本限定となる「バランタイン17年 トリビュート リリースリミテッドエディション」が販売開始された。日本に造詣が深いヒスロップ氏が、日本人の味覚により合うようにバランスを微調整した、特別なバランタインである。

『バランタイン17年 トリビュートリリース リミテッドエディション』¥10,000 (数量限定)

「ファーストフィルと呼ばれる1度しか使用していないアメリカンオーク樽やヨーロピアンオーク樽を使用し、冷却濾過を行わないノンチルフィルタード製法を採用しています。そうすることで、原酒の豊かな味わいを際立たせました。バランタイン17年らしい華やかさとまろやかさはそのままに、通常よりもスモーキーさを控えめにし、バニラやホワイトチョコレート、はちみつのような甘みとクリーミーさを強調しています。スコッチ・ウイスキーに親しんでいる日本のお客さまに、きっと楽しんでいただけると思います」

卓越した嗅覚と味覚を持つマスターブレンダーが贈る究極の逸品、この機会にぜひ味わいたい。


Sandy Hyslop
1965年生まれ。バランタインの5代目マスターブレンダー。’83年から30年以上にわたってウイスキー業界に携わる。’92年にバランタインのブレンダーとなり、先代のロバート・ヒックス氏引退後、2006年に5代目マスターブレンダーに就任。’16年にはISC(International Spirits Challenge)にて「マスターブレンダー・オブ・ザ・イヤー」を受賞。


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Text=村上早苗 Photograph=太田隆生