【オフィス探訪】"ワーク・ライフ・ハーモニー"を実現したAmazonの新オフィス

目黒セントラルスクエアにアマゾンジャパンとアマゾン ウェブ サービス(AWS) ジャパンの新オフィスが完成した。総面積約2万平方メートルの緑豊かなオフィスには、食堂、ヨガスペース、シャワールーム、ストレッチスペース、ヘルスステーションなど、さまざまな機能を備え、Amazon創業者兼CEOジェフ・ベソス氏が提唱する「ワーク・ライフ・ハーモニー」という思想を表現している。


総面積は約2万平方メートルの新拠点

アマゾンジャパンが世界最大のネット書店として日本に上陸したのは2000年。翌年から、音楽CDやDVD、テレビゲームを皮切りに、家電、生活用品、健康・美容用品などへとジャンルを拡大している。

近年は、EchoやAmazon Dash Button、Amazon Music、Amazon Primeといった既存の発想を覆す革新的なサービスに着手し、新たなニーズを発掘している。

今年3月には品川シーサイドにAmazon Fashionでは世界最大の撮影スタジオをオープンさせ、ファッション部門の日本展開を本格化、まとめて試着し気に入ったものだけ購入できる「プライム・ワードローブ」もスタートした。

24階の会議室のフロア。社外の方と打合せできるスペースが個室以外にも数多く配置されている。

日本での事業拡大に合わせて9月には、アマゾンジャパンとAmazonのクラウドコンピューティングサービスを提供するアマゾン ウェブ サービス(AWS) ジャパンが東京・目黒の目黒セントラルスクエアに三つ目の拠点となる新オフィスを開設した。

両社が入居するのは17~27階の11フロアで、総面積は約2万平方メートル。クラウドとデジタルのチームを中心に、現在は約千人が働いているが、その2倍の人数を収容できる広さがある。

オフィスデザインのテーマは「ゆらぎ」

オフィス内部は、豊富な植物とカーブを描くように配置された家具やパーテーションを使い、流線形をイメージした空間になっている。

 デザインのテーマは「ゆらぎ」だ。米国シアトルの新本社の横にある植物園「The Spheres」と同様に640種類の植物を配置し、全体的に自然を感じることができる空間になっている。

「オフィスレイアウトとグリーンコーディネートそれぞれにデザイナーを起用しました。自分が旅行した時に撮影した崖や山、緑がある場所など素敵だと感じる場所の写真を共有し、それらをデザインに取り入れてもらいました」(アマゾンジャパン ファシリティーマネージャー 平岡恭子氏)

オフィスにはフロアの床から木が生えていたり、壁にかかっていたり、窓辺に植えられているなど、さまざまな場所に植物が配置されている。

植物の持っている匂いや葉がそよぐ際の音、湿り気などは人間の五感に訴え掛けるものがあり、本能的に人間をリラックスさせ、生産性を上げる効果があるという。

執務室にある植物に囲まれた半個室のブース。完全な壁に囲まれているわけではないため人目を避ける業務で利用する人が多い。

「私たちは、インターネット上の市場で膨大な量のアイテムを扱っています。自然環境を守るのではなく、自然と共存するという基本理念のもと、ビジネスを展開しています」

このように自然と人間がイーブンな関係になるように設計された空間は、AWSのサポートチームなど特定のスタッフ以外はフリーアドレスとなっている。

会議室。テレビ会議が多いためカメラが必ず設置されている。

「テクノロジーが進化し、ワークスタイルも大きく変化しています。若い世代には、デスクで仕事するよりもカフェやソファで仕事した方がはかどる人がたくさんいます。そのため、各々が働きやすいと感じる空間を選べるようにフリーアドレスにしています。またいつでもどこでもパソコンでもスマホでもテレビ会議に参加できるため、リモートワークで仕事することも可能です」(アマゾンジャパン パブリック・リレーションズ本部長 金子 みどり氏)

同社では、周りに気を遣わずとも当たり前にリモートワークができる環境だという。例えば、子育てをしている人が、子どもが熱を出したため急きょ出社できなくなった時に、「すみません」と謝るのではなく、今日はリモートワークにしますと自然に言え、周りも「お大事に」と返答できるそんな文化が育まれているという。

フリーアドレスの執務室。曲線や植物がゆらぎを感じさせる

仕事と生活の調和を目指すワーク・ライフ・ハーモニー

Amazon共同創設者ジェフ・ベソス氏が提唱する「ワーク・ライフ・ハーモニー」という考え方も、オフィスデザインに色濃く表れている。

仕事と生活のバランスを取る「ワークライフバランス」ではなく、そもそも仕事と生活を分けて考えるのではなく、一つの環として捉えて全体の調和を目指すというものだ。

それは、オフィスを構成する食堂、ヨガスペース・シャワールーム、ストレッチスペース、ヘルスステーションなどのファシリティーに散りばめられている。

「オフィスは、完成と同時に新しさが徐々に失われていくものですが、私たちは“今”の働き方にその都度合わせていくことで、新鮮さと働きやすさを保つことを意識しています。それには、従業員のフィードバックが欠かせません。今後も半年ごとに調査して見直していきたいと考えています」(平岡氏)

従業員の声を聞き、さまざまな要素を採り入れたり改善し、オフィスづくりに反映させるコンシェルジュのような存在であるリアルエステート アンド ファシリティーズという部署も、よりワーク・ライフ・ハーモニーを実現するために、このオフィスで初めて採り入れた組織だ。

27階ワンフロアを占める食堂には豊富なメニューが用意されているキッチンがある。宗教上の理由や好み、体調に合わせて選択できるよう配慮されている。お皿の裏にICチップがあり、お皿を載せたトレイをかざすだけで集計され、Amazon Payでの決済が可能となっている。なお、テイクアウトも可能で、テイクアウトの場合、おもちゃの食品サンプルをお皿代わりに載せて支払いを行う。

また、食器の返却場所には、誰もが食器やゴミを正しく分別できるよう、従業員の発案で、食品やお箸の模型を各ゴミ箱に配置し、言語に関係なく誰でもビジュアルで理解できるように工夫されている。

食堂フロアのカフェスペース脇にあるヨガスペース。ヨガだけではなくストレッチや併設された防音室で楽器の練習を行うなどリフレッシュ空間として利用されている

自由に使える広いヨガスペース。インストラクター資格を持つ従業員が講師となり、レッスンも行われている。ヨガだけではなくストレッチをする人や併設された防音室で楽器の練習を行うなどリフレッシュ空間として利用されている。ホテルのようなきれいなシャワールーム男性用、女性用、オールジェンダー用で完備しており、多くの従業員が利用している。

ホワイトボードには、このオフィスから徒歩圏内で行ける散歩コースがイラスト付きで描かれている。従業員が自主的におすすめのレストランなどを記入する場合もある。

土足禁止の場所にはダミーの靴が描かれており、張り紙などをせずともルールを守れる工夫をしている。

オフィス内の通路脇やフリースペースに、ストレッチができるポールやバーが設置され、ブレストしながら、また、オフィス内の移動中のちょっとした時間でストレッチができる。まさに仕事とリフレッシュが調和された空間である。

オフィスの各所に設置することで、仕事の合間の気分転換や打合せしながら利用する社員もいる。ジムに通うことを推奨するよりも日々仕事をする環境にあることが大事だと考えられているのだ。

ヘルスステーションにある仮眠室※本来は薄暗い照明で使用されている

ヘルスステーションには、マッサージルームやマザーズルーム(搾乳室)、レストルーム、保健室、仮眠室などを完備。保健室は男性用、女性用、オールジェンダー用が用意されている。マッサージは、退社後に行こうと思ってもなかなか行けないことも多いが、オフィス内にあれば空き間時間に利用することが可能だ。

こうして誰もが働きやすい環境を目指し、理解を広めるLGBTのイベントを行うなどダイバーシティーに対する意識が高いのも、さまざまな国籍やジェンダー、年齢の人が働いているアマゾンジャパンの特徴。

仕事と人生はトレードオフではない。ベソス氏のワーク・ライフ・ハーモニーの思想が息づく新オフィスは、誰もが人生の一部として仕事を楽しむことができる環境を備えている。

アマゾンジャパン
代表者:ジャスパー・チャン、ジェフリー・ハヤシダ
本社所在地:東京都目黒区下目黒1丁目8−1
設立:2000年7月
売上高:11,907 million USドル(日本事業の2017年度実績)
従業員:6,000人
事業内容:2億種を超える和書、洋書、CD、DVD、PCソフトウェア、ゲーム、エレクトロニクス、文房具・オフィス関連用品、 ホーム&キッチン、おもちゃ&ホビー、スポーツ、ヘルス&ビューティー、コスメ、時計、ベビー&マタニティ、 アパレル&シューズ、ジュエリー、食品&飲料などの商品を取り扱う総合オンラインストアアパレル&シューズ、ジュエリー、食品&飲料などの商品を取扱う総合オンラインストア
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Text=稲垣章(MGT)  Photograph=三浦康史