本田圭佑の言語論「"仕事"とは、幸せをもたらすもの」【本田思考。④】

サッカー選手 兼 監督 兼 投資家 兼 起業家・本田圭佑は、言葉を使うことで、自らをインスパイアし、 世界にサプライズを起こす。その脳にはどんな 言葉=「本田思考。」が隠されているだろうか。

前回はこちら

仕事を楽しむのではなく、自分が楽しいと感じることを仕事にする

サッカーを自分の仕事にできたことは、とても幸せなことだと思っています。サッカーは、世界中で通用する"言語"です。いくら英語を上手に話すことができても、それだけでは人に感動を与えることはできません。

でも、サッカーという言語は、プレイしているだけで世界中の人に伝わり、感動を呼び、ヒーローになることもできる。僕がこのサッカーを仕事にできたのは、物心ついた時から父親がその環境を与えてくれたから。そして僕もその道を選ぶことができた。子供のころからずっとサッカーが好きだったから、それを自分の仕事にしたいと素直に思えたのです。

最近、「仕事を楽しもう」、「楽しみながら働こう」というような言葉をよく耳にします。でも僕は少し違うような気がします。好きではないことを楽しむのは難しいし、ストレスもたまる。仕事を楽しむのではなく、自分が楽しいと感じることを仕事にする。そうすれば、自然と頑張れるし、ストレスもなくなるのではないでしょうか。

音楽が好きなら、音楽を仕事にすればいい。絵を描くのが好きなら、絵を仕事にすればいい。「音楽でメシを食えるのはごく一部」という人もいるでしょう。でも音楽を仕事にするというのは、なにも音楽家、アーティストになるということだけではありません。音楽を教える仕事、楽器を作る仕事、コンサートの演出をする仕事、CDを売る仕事……。うまく歌えなくても、うまく楽器を演奏できなくても、音楽を仕事にして"メシを食う"ことはできるのです。

「音楽ではメシが食えない。だから他の道を探せ」というのをサッカーにたとえるなら、「足が遅いからストライカーにはなれない。だからサッカーをやめて他のスポーツをやれ」と言っているようなもの。

2016年12月、カンボジアを訪問。現地の子供たちとストリートサッカーで交流した。

足が遅くても、パスがうまければMFになれる。身体が強ければDFになれる。サッカーが好きなら、ポジションが変わっても絶対に楽しめる。チームにはそれぞれの役割があるし、そこで頑張っているうちに、もしかしたら足が速くなって、ストライカーになるという可能性もあるのです。

もちろんサッカーを続けたからといって、プロ選手になれるのはごく一部です。それでも指導者にはなれるし、クラブ関係の仕事もあるし、スカウトや代理人のような仕事もある。サッカーひと筋に生きてきた人なら、サッカーをやめて他の仕事に就くより、サッカーを仕事にしていったほうが楽しいし、頑張れる。僕はそう思っています。

仕事とは、金を稼ぐためではなく、自分や他人に幸せを与えるためのものであるべき。自分が本当に好きなことを仕事にすれば、金は自然とついてくるような気がします。僕は、これまでもそう思って生きてきましたし、これからも好きなことだけを仕事にして生きていきたいと思っています。

本田思考。⑤に続く

Composition=川上康介 Photograph=HONDA ESTILO



本田圭佑
本田圭佑
1986年大阪府生まれ。J リーグ名古屋グランパスエイトでプロデビュー。W杯に3大会連続で出場し、全大会でアシストと得点を記録。2020年2月、ブラジル1部ボタフォゴに入団。カンボジア代表の監督も兼務する。
気になる方はこちらをチェック