トップ100入りで冠大会新設! プロテニスプレイヤー内山靖崇の青写真【コロナ禍のアスリート】

新型コロナウイルスの影響で日々の暮らしが激変するなか、アスリートはどのような決断をし、どのような行動をしているのだろうか。約1年の延期が決定した東京五輪を目指す選手、体力の限界を感じて競技を終える選手、スポーツの専門家として情報を発信をする選手……。さまざまなトップアスリートのスペシャルな思考とは――。

国内トップクラスの規模「ウチヤマ・カップ」を開催予定

新たな一歩を踏み出したアスリートがいる。男子テニスで世界ランキング90位の内山靖崇(27=積水化学)が、故郷の札幌市で国内テニストーナメント「ウチヤマ・カップ」を新設した。北海道テニス協会との共催で、第1回は今年9月に開催予定だ。賞金総額300万円は国内トップクラスの規模。自らトーナメントディレクターを務め、スポンサーや出場選手の確保に奔走している。

「前々から地元に何か恩返ししたいと考えていましたが、成績が出ていないうちは"テニスに集中しろ"という意見が絶対に出る。世界ランキングが100位に入ったので形にしてもいいかなと思いました。自分のキャリアで得たことを下の世代に還元したい」

昨年10月21日発表の世界ランキングで初めて100位以内に突入。その後は2桁順位をキープしている。日本男子で100位の壁を突破したのは錦織 圭(最高位4位)、杉田祐一(同36位)、松岡修造(同46位)、西岡良仁(同48位)らに続き8人目。プロ転向直後の18歳からの目標をクリアしたことで、トーナメント新設の構想を形にした。

これまでにテニスの普及などを目的とする全国各地のイベントに出演。ジュニア選手とラリーなどをこなしたが、思い出づくりの側面が強く、強化に直結するのか疑問を抱いていた。トッププロを集めた大会の開催が北海道テニス界への最大の貢献になると判断。国際大会にしたい意向もあったが「運営側としては分からないことが多いルーキーなので」と国内大会からスタートする。

コロナ禍により、計画通りに事は運んでいない。外出自粛要請の影響もあり、スポンサー側との交渉は停滞。国際テニス連盟のガイドラインは無観客試合や、シングルスのみの開催を推奨しており、観客を入れての通常開催も危ぶまれる。内山は「正直、苦しいスタートになっています」と明かした上で「開催に向けてあらゆる可能性を模索しています。基本的には開催する方向で、どういう形にするべきかシミュレーションをしています」と前を向いている。

中学1年から米IMGアカデミーに留学。錦織 圭と同じ道を歩み、技術を磨いた。2011年にプロ転向。'15~'17年にはバルセロナに拠点を置き、赤土コートでストローク強化に励んだ。昨年10月のATP(男子プロテニス協会)下部ツアー大会・寧波チャレンジャーで優勝を果たし、悲願のトップ100入り。1月の全豪オープン中にはATPのツアーマネジャーから「100位へようこそ」と歓迎を受け、記念のトロフィーを受け取った。「100位以内は多くの選手の1つの目標だと思う。自分が100位以内の選手をリスペクトしていたこともあり、そこに入れたことで自信が生まれました」と実感を込めた。

トーナメントディレクターの肩書きがついても、コート内で進化を目指す姿勢は変わらない。17歳から師事する増田健太郎コーチ(48)に加え、昨秋から新たに鈴木貴男コーチ(43)を招いた。ラリー中のミス減に重点を置いた従来の方針から、サーブやネットプレーなど長所を伸ばす練習にシフト。非常事態宣言中は屋外練習は週2回程度で、感染予防のためにコートに入る人数も最大4人に制限した。自宅用のエアロバイクを購入するなど限られた環境でトレーニングを積む日々が続いたが、緊急事態宣言解除を受けて日常に近い形の練習に戻れる可能性が出てきている。

今季の目標は世界ランキング50位以内。7月13日まで休止が決定しているツアー大会の再開時期は不透明だが、ターゲットはブレない。東京五輪が今年開催された場合は全仏オープン後の6月8日発表の世界ランキングでシングルス64枠などの出場権が決まる予定だった。大会の1年延期と、ツアー大会の中断による世界ランキングの凍結で、今後の選考法は白紙だが「五輪出場権獲得が最優先になるのは変わらない。五輪までにツアー大会でベスト4に入れる力をつけておきたい。そうじゃないと五輪に出るだけで終わってしまう。東京で開催される五輪は特別。勝てる実力をつけて臨みたい」と力を込めた。2桁ランカーの自覚を胸に、ツアー再開を心待ちにしている。


Text=木本新也