引退後初の著書、刊行!桑田真澄が語る、「努力」の作法

巨人を退団し、メジャーリーグ挑戦を表明した時から、ゲーテでは連載「心の野球」で桑田真澄氏を追い続けた。そして今、メジャー挑戦の日々、そして引退から約2年を経た今だからこそ言える、桑田氏の人生哲学、野球哲学を書き記した著書が発売された。「24時間“野球”バカ!」の神髄に「24時間仕事バカ!」たちは武者震いするだろう。

がむしゃらな努力は無駄。努力は超効率的にすべき

「甲子園で活躍した投手は大成しない」
 野球ファンの間で言われ続けた言葉だ。ところが桑田真澄は違った。誰よりも甲子園で投げたが大成した。その裏には桑田真澄ならではの努力の解釈が存在していたのである。
「引退後にいろいろな方に言われる。“桑田さんはがむしゃらに練習していたんですってね。どれくらい練習していたんですか?”と。でも真実は違う。確かに僕は努力はしていたけれど、決してがむしゃらではなかった。PL学園時代、清原君よりふた周りも小さい僕は、そのハンディを克服しようと努力を続けた。でも、無駄で無謀な努力はいっさいしなかった。なぜなら怪我をしてしまっては元も子もないから。1年の夏に甲子園で優勝したあとも明らかに投げすぎていたから、“しばらく投げません、ボールは握りません”と監督に伝えたり、練習時間の短縮を直訴したこともある。また、巷でよく言われるような1000本ノックや1000回素振りをするといった無茶な練習も決してしなかった。唯一続けていたことといえば、タオルを使った1日50球のシャドウピッチングだけ。これだけは毎日欠かさなかった」

自宅にて。玄関のとびらを開けると、エンボス加工された「KUWATA 18」の文字が目に飛び込んでくる。巨人、パイレーツでつけたこだわりの番号だ。

 高校時代は野球だけでなく、学業にも真剣に取り組んだ。これはスポーツの特待生が集まっていたクラスのなかでは珍しかったようだ。
「高校時代は卒業後に早稲田大学進学を目指していた。そのためにしっかり準備もしていた。結果的には卒業後に巨人に入団したのだけれど、大学院の面接で教授に“高校時代、野球に取り組みながら、これだけの成績を残しているのはすごい”と言ってもらえた。当時は確かに、朝も夜も練習に時間をとられる。24時間をどうやりくりしても勉強の時間はほとんど捻出できなかった。できて30分。でも、僕は好成績を維持し続けた。どうしていたかというと、毎日授業を真剣に聞く、宿題は休憩時間に済ます、たったそれだけ。授業を真剣に聞いていると、どこが大事でテストに出るのかわかる。眠くなると、自分の手の甲にペンをさして眠気を吹き飛ばしたりもしていた」

僕にはひとつだけ才能があった。それは努力を重ねるという才能

 そもそも、この小さな努力を重ねるという方法に桑田氏はいかにしてたどりついたのだろうか。
「小学生の時に母に“あんた、いいかげん勉強しなさい”と言われて、とっさに口から出ちゃったんですよ。“中学に入ったら勉強するから今はほっといて”と。それ以来、母は勉強しろって一度も言わない。だから中学に入ったら勉強するしかなかった。僕は公立の中学で小学校時代とほぼ同じメンバーでの進学だった。小学校時代は僕の成績は後ろのほうだったのだけど、中学から勉強し始めたらみるみる順番が上がっていく。この体験がとても大きかった。だって、やればやっただけ結果が出るわけだから」

本邦初公開の自宅の書斎。桑田氏は昨年春から早稲田大学大学院スポーツ科学研究科(修士課程1年制)に在籍し、主にスポーツマネージメントについて学んだ。「この部屋で必死に勉強した1年でしたね。息子たちより勉強していた(笑)。宿題やレポートも提出期限ギリギリの24時直前までこの部屋で粘っていた。今ではパワーポイントやエクセルも自由自在に扱えますよ」

 努力の楽しさを体感した桑田氏は、この体験を野球にも結びつけ、プロ野球の世界で173勝という結果へとつなげていくのだ。
「もともと自分の素質、才能などたいしたことないと思っていた。だけど、引退して改めて振り返ってみると、ひとつだけ才能があった。それは努力を重ねるという才能。毎日、短時間でもいい。それをコツコツ、超効率的に積み重ねていくことが大切なのだと思う」

 3月25日。桑田氏は早稲田大学大学院の卒業式に出席する。総代を務め、驚くべきことに成績は首席、卒業論文では「最優秀論文」と「濱野賞(日本スポーツ産業学会からの表彰)」をダブル受賞した。これも中学時代に身につけた“超効率的に努力できる”才能がもたらしたものであった。
 この才能を携えて、桑田真澄はさらなる進化を続け、プロ野球界の発展のために尽力していく。

桑田真澄の全思考全感覚が凝縮!

桑田真澄の全思考全感覚が凝縮!/プロ野球界が誇る、小さな大エースの著書『心の野球 超効率的努力のススメ』が6月11日に発売。努力の天才がたどりついた「成長の法則」、そして、盟友・清原和博との関係と引退の真相が明かされる。日々仕事で苦悩するすべての男たち必読だ。

Text=編集部 Photograph=川口賢典

*本記事の内容は10年5月1日取材のものに基づきます。価格、商品の有無などは時期により異なりますので予めご了承下さい