ヘアアーティストMASSATO「パリの人にとってヘアサロンは今まで以上に特別な場所になる」

コロナ禍のフランス・パリ(5月11日よりロックダウンが一部解除)で暮らす日本人に、現地在住のカメラマン、松永 学が取材。 今回はパリで3店舗のヘアサロンを経営する、ヘアアーティストのMASSATO(マサト)さんに話を聞いた。
    

多くの気づきを与えてくれた2ヵ月間

マサトさんはパリで有名な日本人ヘアアーティスト。すでに45年間、フランスで生活をされています。VOGUE、ELLE等のファッション誌、ファッションショーで活躍し、1993年、MASSATO SALONをパリ7区にオープン。現在パリに3店舗、日本で2店舗を展開しています。独自のドライカット技術は、女優、セレブリティ、モード関係者からの高い支持を得ています。

フランス人にとってはヘアサロンは特別な場所。お客との距離が近い職種だけに、コロナが収まってからサロンは元のようになるのか。マサトさんが今思っていることをうかがいました。

「フランスでは、3月17日からロックダウンに入りましたが、その前の週末から田舎のウイークエンドハウス(パリから80kmのフォンテンブロー)に来ていたので、パリに戻ることなく、ずっとそこで過ごしました。

この2ヵ月間で人生観がかなり変わりました。今までこんなに長い休みを取ったことがありませんでした。ロックダウンと聞いた時にはすごくショックで、パリの3つのサロンのこと、20人以上いる従業員のこと、この先どうしたらいいのか不安になりました。

しかし、フランス政府がすぐに様々なことに対しての方針を提示してくれたので、少し安心することができ、気持ちに余裕が生まれました。そして、これからの与えられた2ヵ月間を有意義にしようと頭を切り替えました。

まず考えたのは、今まで放っておいた田舎の家を整理すること。ペンキ塗りに、納屋の大掃除、庭の手入れなどです。そして、大好きな陶芸です。

友人の陶芸家に教えてもらって以来、興味がわきました。一生の趣味にしたいと思い、この田舎の家に陶芸のためのアトリエをつくり、道具も揃えました。そして今回、腰を据えて陶芸に向き合うことにしたのです。まるで引退後の生活のシミュレーションのよう。陶芸は本当に奥が深くて面白い。やっている間は、心配事や不安な気持ちを忘れ、無心になれます。

私は自分の仕事が大好きですが、今回の2ヵ月間で仕事がすべてではない、ということを考えさせられました。この充電期間とでもいえる間に、スローライフの重要性を感じたのです。ゆっくり楽しむ時間をつくる。陶芸のような趣味を持っていて本当に救われました。

5月11日から、フランスは段階的にロックダウンが解除されました。ただ、再開後のヘアサロンでの仕事に対して、国からは細かい指示があります。マスク、アルコール消毒、距離間を記すテープはもちろんのこと、サロンの密集を避けるために、予約の数もかなり制限されています。これからは、今までのようにクライアントの髪をカットすることは難しくなるでしょう。

ただ、今後またロックダウンにならないよう、それらに従うことは非常に大切なことだと思っています。特にスタッフに徹底させるのは私の義務です。

これからは髪を伸ばしてアクセサリーを飾ったり、カットする方もされる方も、今までとは違う新しいスタイルを探す必要があるかもしれません。各々が楽しむことができるものを提案したいと思います。

それから今回のコロナにより、多くの人が家で仕事をするようになりました。もう、都市にいなくても仕事はできるのです。これによって、地方が活性化されるといいなと思いました。

街は人や車が少なくなったからか、空気がキレイになって、温暖化が少し収まったように感じます、田舎生活の間、毎日天気にも恵まれ、太陽が燦々と照り、夜は星がすごく輝いています。それを見ていたら、自然、エコロジーについても考えさせられました。

一人一人が、この自分達が住む地球に優しくなることを考え、日々を暮らすことが大切なのだと思います。自分にできること、たとえどんな小さなことでも、何十億の人がやれば大きいことになるのは間違いありません。

今回、フランスの医療機関が、医療従事者とワクチン研究のために寄付を募ったので私も寄付したのですが、最近になってそれに対する御礼のメールが届きました。

『あなたの寄付に心から感謝いたします。私達は、この数週間で約22億円の寄付を集めることができました。なんと素晴らしいことでしょう。私達は感動を抑えきれません。本当に感謝いたします』と、50€の寄付にこの返答。結果も素晴らしい! 一人一人の力は小さくても、たくさん集まれば大きいものになるのです。まだまだウイルスとの戦いは続きますが、心から医療従事者の方達に感謝とエールの気持ちを送りたいと思います。

最後に自分の夢についても改めて考えました。私の夢はエコロジーでビーガンなMASSATOプロダクトが世界に広まること。コロナが収まったら、そのために力を注ぎたいと思います」


Text & Photograph=松永 学