岡崎慎司がコパ・アメリカで若手から学んだこと【挑戦の心得③】

ワールドカップロシア大会後、代表引退を表明する選手が相次いだなか、岡崎慎司は2022年のW杯を目指すと宣言。コパ・アメリカで、約1年ぶりに日本代表に選出されたストライカーの魂を伝える短期連載「岡崎慎司 挑戦の心得③」。


森保一監督率いるチームには、空いているポジションがある

2年ぶりに出場したコパ・アメリカで、日本のグループリーグ敗退が決まった。

代表に招集優先権のないこの大会(通常のAマッチデーなどでは、クラブは協会の要請に応じて選手を貸し出すが、コパ・アメリカはそれに当たらない)では、来年の東京五輪代表が中心の編成だった。

0-4と大敗した初戦に続く第2戦には、GKの川島永嗣とともに岡崎慎司も先発フル出場し、2-2と引き分けた。

「ひとりのサッカー選手として、純粋にコパ・アメリカという大会に出場できるチャンスがあるのなら」と参加した岡崎だったが、すでに担うべき仕事を把握していた。コパ・アメリカ前の親善試合2試合をスタンドで見ながら思ったという。

「森保一監督率いるチームには、空いているポジションがある。それは今後の自分自身のテーマでもある、”ペナルティエリア内でのスペシャリスト”という仕事だ」

先発したウルグアイ戦で日本が決めたのは2ゴール。そのどちらにも岡崎のプレーが影響を与えている。1点目は自身のランニングで相手DFを引き寄せた。2点目は、ニア(近く)でつぶれてDFを抑えた岡崎のプレーにより、得点者のシュートチャンスをより有利に演出したのだ。

そして、第3戦のエクアドル戦の先制点は、絶妙な飛び出しでパスを受け、ゴールへ向かった。慌ててゴールキーパーが弾いたボールを中島翔哉が決めている。

ゴールへ向かうアグレッシブな動きだけでなく、従来の守備や後方からのパスを引き出す動きも見せた。

残念なのはゴールを決められなかったことだが、それでも1年間のブランクを感じさせず、若い選手にはない仕事を随所に披露し、その存在感を示すことはできた。

「岡崎慎司という選手がいるということを世間に認知してもらえた。(所属クラブで)試合に出ていない選手を招集してくれたことに感謝している」

2試合ともにベンチ外となった先の親善試合後の岡崎の言葉を思い出す。当然ピッチに立った今は、悔しさもあるだろう。それでも、多くの学びが得られたはずだ。

「コパ・アメリカを戦う選手の多くが、近い将来、日本を背負っていく選手になる。そういう彼らにとって、今回のコパ・アメリカは、今後『あの大会があったから今がある』といえるであろう重要な大会。そこに参加する意味は大きいと思うんです。かつての自分たちがそうだったように、10代後半から20代前半は選手として伸び盛りの時期。求められるままに、やれるがままに自分の特長を発揮しようとする彼らの姿は、僕に刺激を与えてくれる」

経験を積めば、状況を読み、バランスを取るためにあらゆることを思考する。それこそがキャリアの持つ意味だが、そんな経験を持たず、ある種怖いもの知らずのまま奮闘する若手の持つ真っ正直なほどの純粋さはベテランになれば忘れがちだ。

「僕の姿を見た若い選手が何かを感じてくれれば、うれしいこと。でもだからこそ、僕は僕のことに集中していきたい」

レスターを退団し、これから8月末までに新たな移籍先を模索し、挑戦する岡崎にとって、若い選手たちとの時間は非常に有効だったに違いない。

若手とベテランとの融合は、若手がベテランの背中を見て学ぶだけではない。ベテランもまた、若手の姿を見て学び、なにかを取り戻す。それができるのもまた、岡崎慎司が純粋だからだろう。先輩だからという意識なく、

いつもの通り競争に身を投じる。

生き残るため、必死に力を尽くす岡崎の背中に若手が何を想ったか、それは将来の日本代表の姿に反映されることを祈りたい。 

Shinji Okazaki
1986年兵庫県生まれ。2018年、ロシアワールドカップのメンバーに選出され、W杯3大会連続出場を果たす。2019年、キリンチャレンジカップのメンバーに選出され、森保体制での代表初招集。コパ・アメリカ2019のメンバーにも選出された。国際Aマッチ 115試合 50得点 (2019年6月1日現在)。


Text=寺野典子