【社長インタビュー】全米シェアNo.1のシャークは本当に"ダイソンキラー"なのか?

日本の住環境に合った掃除機を日本人よりもよく知る英国人、ゴードン・トム氏。20年前に英国メーカー・ダイソンがサイクロン式掃除機で日本上陸を果たした際に、英国の外交官の肩書きを捨て、本国のダイソンに入社後、日本法人の社長に就任。「吸引力の変わらないただひとつの掃除機」という有名なコピーとともに日本での躍進の礎を築いた。その後、スウェーデンの総合家電メーカー・エレクトロラックスでは、スティック掃除機「エルゴラピード」を人気機種へと押し上げる。そんな彼が今度は米国の家電ブランド・シャークの掃除機「EVOFLEX(エヴォフレックス)」を引っ提げて再び日本へやってきた。


日本人が満足すれば世界中で認められる

米国の家電ブランド、シャークをご存知だろうか? 延長パイプが折れ曲がるユニークな掃除機「EVOFLEX(エヴォフレックス)」が今夏日本上陸。前モデルは、米国でその高性能とコストパフォーマンスが評価され、ダイソンから全米掃除機市場のトップシェアを奪取。“ダイソンキラー”なる異名もついた家電メーカーである。その日本法人、シャークニンジャの社長に就任したのがゴードン・トム氏だ。

「 “ダイソンキラー”と呼ばれていますが、あの異名は私たちが言ったことではありません(笑)。本国でしっかりとしたモノを作りの成果が出たから、2014年にダイソンから米国シェアナンバー1を奪えたというだけのこと。野心は、あくまで消費者を満足させるところにあります」

日本のためにデザインされたコードレススティッククリーナー。高い掃除能力と使い勝手の良さを兼ね備えるだけでなく、米国で発売されたモデルから小型軽量化させた日本専用モデル。『S30』(市場想定価格70,000円前後)と『S10』(市場想定価格60,000円前後)の2ラインを8月7日発売予定。

ゴードン氏がダイソン日本法人社長に就任したのが今から約20年前。当時、日本の掃除機市場は約600万台で、海外メーカーはたった2万台程度だったという。それがダイソンやエレクトロラックス、アイロボットなどの躍進により、現在は約830万台の市場へと成長。さらに台数だけでなく掃除機一台あたりの単価も当時の倍にまでなった。

「当時はパナソニック、東芝がトップ2を独占。それ以外の三洋電機、日立、三菱電機、シャープといったメーカーが残りのシェアを同じような割合で売り上げ、競争があまりない状態でした。よりよい製品を開発し、消費者が選べる状態が健全。メーカーにとってもより革新的な製品を生み出すためには、競合は大切な存在です。だからこそダイソンは当時、そういった市場にサイクロン式掃除機という選択肢を与えたことで、消費者から支持されたのだと思います」

日本の家電市場はなかなか海外メーカーを受け入れてこなかったが、現在はインターネットの普及、オンライン販売の発達だったり、さまざまな要因からその形を変えようとしている。現に2018年現在の国内掃除機市場はダイソンやアイロボットといった海外メーカー製の各種掃除機が、大きなシェアを獲得。とはいえ、実は海外メーカーにとって日本市場はシェアを取る以上に重要な存在である、とゴードン氏は語る。

「日本人は世界一製品の良さをしっかりと理解し、そこに価値を見い出してくれる国民です。でも逆にその目線は非常に厳しく、少しでも使いにくかったりする部分に対しては、しっかりとダメ出しをします。だから、日本で製品を発売することは、自社で製品開発テストをする以上に、リアルな製品開発に直結するのです。長期的な視野で製品を出し続ければ、自然と良い製品ができあがり、それは結局グローバルでも評価されるという仕組みがあるんです」

日本の住環境は世界的に見ると狭小な住環境と言われるが、実はニューヨークやパリ、ロンドン、上海といった多くの人々が住む都市部は、同じように狭小な住環境。なので、そういった場所に住む人々に向けて、過去、エレクトロラックス日本法人社長時代に自ら本国を説得し、「エルゴスリー」と呼ばれる小型の紙パック式キャニスター掃除機を開発。日本主導で開発したその製品を、そういった大都市向けに日本から逆輸入する形で送り込み、大成功させた経験もあるゴードン氏だから、こういった意見にも強い説得力が感じられる。

 5つ星を目指すモノづくり

そんなゴードン氏が今回エヴォフレックスを日本でどのように成功に導くのか、非常に興味があるところだ。実際にエヴォフレックスは昨年9月に米国本国で発売しているが、実は日本のそれとは大きく異なること点が多くあることも、その本気度が感じられる所以だ。

「延長パイプが曲がるなど、ベースの機能は変わりませんが、日本専用のモデルとして、日本人が使いやすいように全体的にコンパクト&軽量化を図りました。当然ですが、米国モデルのままだと、日本人には大きすぎますし、重すぎる。だから、日本までエンジニアを連れてきて、日本国内で、細部まで何度も改善を繰り返しました」

昨年4月頃から、合計3回ほどのモニターテストを繰り返し、日本での発表2週間前まで調整を行った。改良を重ね、延長パイプが曲がることで家具の下まで深く屈むことなく掃除ができ、ノズルには絨毯用とフローリング用の2本のブラシを搭載させ、利便性をグレードアップさせた。また、コンパクトに収納できる点も大きな魅力。そこには、シャークならではのユーザーに対する強い想いが存在する。

「我々は日本だけでなく、米国でも徹底した市場調査を行い、ユーザーがどのような機能を求めているのか、その声に耳を傾けてきました。私たちは、 “充電するときは、壁に穴を開けて、充電器をネジ止めして充電してください” などと、製品の使い方を消費者に押し付けることはありません。エヴォフレックスの充電池は着脱式。2本あるので、片方の充電が切れても掃除を中断する必要がありません。ユーザーの住環境は十人十色で、それぞれが使いやすい製品をつくることが重要です」

ユーザーに選択肢を与えることを考えたモノ作りこそが、シャークの強み。そのためには、ユーザーの不満の声を聞き続け、開発につなげることが重要と語る。それだけ聞くと、他社でも同じようなことを言いそうだと感じるが、他社とのレベルの違いが次の発言からわかる。

「日本国内で50軒の家庭内テストを行った際に、2軒が気にされた部分があり、私たちは改良を行いました。少数の意見にも耳を傾けることで、皆さんから星5つをいただけるような製品ができると信じています」

成功の秘訣はスピーディーな世の中への柔軟性

ただ、日本の掃除機市場だけでなく、世界はどんどん進化している。しかも時代の移り変わりはよりスピーディーであり、これまでの成功体験は通用しないと言われて久しいが、その点を経営者として、ゴードン氏はどのように捉えているのだろうか?

「私が戦う日本の掃除機市場に限っていえば、戦いやすい時代になりましたね。かつての障壁や人々の海外メーカーに対する先入観も減りましたし。インターネットの発達で数多くの情報が入るようになり、ソーシャルメディアなどの口コミで、人々の考えもより可視化される。スピーディーに良い製品を作れる企業にとっては追い風ではないでしょうか。何よりすでに海外メーカーが受け入れられる土壌が形成されていることも大きいですね」

ということは、販売戦略に関しても、ユーザーにより近いオンラインでの販売に重心を置くのだろうかと思いきや、日本の掃除機市場を攻略していくためにシャークが重要視していくのは、量販店などのリアルな店舗だと断言する。

「確かに、現在の日本の掃除機市場の2割はオンラインでの販売というデータが出ています。その割合は今後増えていくことでしょう。ただ、日本におけるシャークの認知度はまだまだ低い。いくら革新的な良い製品でも、おそらくオンラインではなかなか買ってもらえないでしょう。消費者が、自分の知らない製品を購入するきっかけとなるのは、量販店などの店舗で、実際に使い勝手を試した場合に限られるのではないでしょうか。だからこそ、量販店や百貨店、スーパーマーケットなどで、消費者がエヴォフレックスに触れる機会を増やしていく戦略を取っていくつもりです」

最後に、これまでさまざまなビジネスを成功に導いてきたゴードン氏に、仕事で成功を収めるにあたり大切にしている秘訣を聞いてみた。

「まず、ビジネスはずっとうまくいくものだと思わないことです。私が常に心に留めている言葉は、七転び八起き。1回の失敗などで絶望しないこと。絶望すると気持ちで負けてしまうから。失敗しても情熱を持って再び立ち上がれる人なら、いつか必ず成功します」

とはいえ、口で言うのは簡単だが、人は弱いものであり、実践するのは至極難しい。

「努力してもうまくいかなかった時に、その失敗から学ぶものは常に多くあるものです。その次に向けて情熱を持って、どうするか? どう商品開発に生かすか? どうしたら売れるか? を必死に考えて実行に移す。特に会社のリーダーたる経営者にとっては、それに尽きます。あとはスピーディーに移り変わる現代だからこそ、柔軟性のある考え方を持つこと。これまでは3〜5年の長期計画で事業に臨んでいましたが、今はそれでは長すぎる。最長でも、1年先のことしか読めません。これまでよりもペースを速めてモノ作りをしていかなければ、市場から置いてかれてしまうのではないでしょうか」


Gordon Thom
掃除機が日本メーカーの寡占状態であった1999年代に、ダイソンを日本市場に展開。バッグレスのサイクロン掃除機を初めて日本のマーケットに導入し、同社の日本市場でのNo.1ブランドへの成長、成功への礎を築く。その後、エレクトロラックス日本法人の社長に就任。コードレススティッククリーナーを導入、日本の家電市場に新しいカテゴリーを創出する。「これまでで最高の掃除機に出会えた」ため、自らメンバーを集め、シャークニンジャ日本法人を創立し社長に就任。現在に至る。


問い合わせ
シャーク カスタマーサポート TEL:0120-522-552

公式サイト
https://www.shark.co.jp/


Text=滝田勝紀