プロフットボーラー久保裕也 「マリ戦、ウクライナ戦を振り返って」 BORDERLESS STRIKER 第3回

世代交代が進むサッカー日本代表において、24歳、久保裕也は間違いなくキーパーソンに挙げられるだろう。5年前から単身海を渡り、周囲に日本人がほぼ誰もいないスイス、ベルギーで武者修行を続ける道を自ら選択。なぜ、この男はあえて厳しい環境に身を置くのか。なぜ、この男は国境に捉われることなく成長を求める道を歩むのか。6月に開幕するロシアW杯を前に、苦悩し、進化し続けている若きストライカーが、その知られざる思いを「ゲーテ」だけに綴る連載エッセイ。

「ワールドカップは夢の舞台ではない。夢を実現し、さらに大きな夢を抱くための場所だ」

日本代表として2試合の国際親善試合を戦った。ご存知のように1戦目のマリとは1−1で引き分け、2戦目のウクライナとは1−2で敗れた。ワールドカップ本戦まで残り2ヶ月のタイミングで、結果が出なかったことはとても悔しいし、この2試合の日本代表の戦い方にさまざまな批判があり、議論を巻き起こしていることは、僕を含め選手全員が理解している。

チームとして機能しなかった部分、反省すべき部分はもちろんある。言い訳になるかもしれないが、どこかチグハグだった理由は、今回の2試合で選手たちが2つの“テーマ”を抱えて戦っていたことのように思う。ひとつはワールドカップに向けてチームの連携を高め、勝利すること。そしてもうひとつは、それぞれが自分のプレーでアピールをして、日本代表の選考に生き残ること。この2つのテーマのバランスが選手個々で異なったことが今回の結果につながったのではないかと感じている。

監督が求めるサッカーと、自分がやりたい、やるべきだと思うサッカーが違うというのは、代表チームに限らず、クラブチームでも起こりうることだ。むしろ一致していることのほうが珍しいかもしれない。同じチーム、同じポジション、同じ監督であっても、対戦相手やチームの状態によって、求められる役割は変わる。

たとえば僕の場合、ストライカーとして100パーセント攻撃のことだけを考えていればいいこともあるし、70〜80パーセント守備に時間を割かなければならないこともある。僕はもともと攻撃に集中したいタイプなのだが、いまのクラブでは守備やゲームメイクの役割も求められる。クラブチームのように常に一緒に練習し、毎週1〜2試合同じメンバーで戦う環境であれば、それぞれの意識が徐々に修正され、個を活かしながらチームとしても成熟していくことができるが、時間が限られている代表チームでは、そんなことも言っていられない。

もちろん誰もこのままでいいとは思っていない。練習や食事のときに、選手同士で話し合うことは多かったし、なにより試合を通して互いを理解することもできた。チームのなかでそれぞれが自分をどう活かしていくべきか、2試合を通して考えることができたように思う。最終選考が終われば、「代表に残れるかどうか」という不安は消える。そうすれば、あとはチームとして結果を求めるだけだ。

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僕自身としても、2試合のなかでいくつかのチャンスがあったものの、ゴールを奪うことができなかったことを悔しく感じている。1本でも決めていれば、チームの雰囲気が変わったかもしれない。ただチャンスを作れたこと、そのためのアクションを起こせたことには手応えも感じている。スプリントや仕掛けのタイミング、右サイドでのボールの受け方など、課題や改善の余地はあるが、久しぶりに攻撃的な姿勢でのぞめたし、自分が取り組んでいることの方向性が間違っていないということも感じられた。コンディションは悪くない。上向きだと言っていい。あとは自分のプレーの精度を高め、ゴールを決めるだけだ。

ワールドカップのピッチに立てるかどうかは、まだ分からない。いま僕にできるのは、チームに戻り、自分の“仕事”をやり続けることだけだ。もし選ばれたときには、全力で点を取りにいきたいし、チームの勝利にも貢献したい。ワールドカップは夢の舞台ではない。夢を実現し、さらに大きな夢を抱くための場所だ。そこにたどり着くために、自分の課題を意識しながら、ポジティブな気持ちでサッカーを楽しんでいきたい。

第4回に続く

第1回「ハングリーな環境で強くなりたい」
第2回「オフの時間の過ごし方」
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Composition=川上康介

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久保裕也
久保裕也
1993年山口県生まれの24歳。京都サンガF.C.のU-18に在籍していた2010、'11年と2種登録でトップチームに登録され、チームに帯同。高校3年だった'11年はJ2で10得点と活躍した。19歳だった2013年6月に単身欧州に渡り、スイス1部スーパーリーグのBSCヤングボーイズに移籍。昨年1月からはベルギー1部、ジュピラー・プロ・リーグのKAAヘントに所属し、移籍後7試合5ゴールの活躍でチームを上位プレーオフ進出に導いた。日本代表は、高校生だった'12年のキリンチャレンジカップでA代表初選出。昨年W杯最終予選では2試合連続ゴールを決めるなど、日本の本選出場に貢献した。
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