時計界のカリスマ、ビバーの成功原則とは? 新刊『間違える勇気。』を手に取れ!

「ゲーテ」ではフランス語によって書かれた1冊の翻訳本を手がけた。それが名だたる高級時計ブランドを飛躍させた、時計界のカリスマによる『間違える勇気。』だ。「革新のアドレナリンが好き」「疑念は最高の友」「情熱には限界がない」等々、ジャン-クロード・ビバー氏が語る“成功法則”を詰めこんだこの1冊は、時計好きでなくても心に突き刺さる! 

ゲリラ兵であれ!

戦線の外で待ち伏せや奇襲を行い、敵軍をかく乱したり少数で効率的な打撃を与えたりすることを任務とする兵士、ゲリラ兵――。

時計界のカリスマとは、LVMH時計部門プレジデントのジャン-クロード・ビバー氏のこと。1980年代や90年代に日本のクオーツ式腕時計の到来に直面し、次々とブランパンを再生、オメガを一新、ウブロを飛躍させ、スイスの時計製造の名を高らしめた立役者だ。ゲリラ兵について彼はこう語る。

「資金がない時には、近道を見つけなければならない。パリに一番に到着するためにレースをしていると想像してみよう。もし私のクルマがあなたのクルマよりも馬力がなく、速く走れなくて、あなたより10分遅れで出発した時、あなたと同じルートをたどったら、決してあなたに追いつくことはできない。反対に、もし私が別の道を選んだら、もしかするとあなたよりも先に到着できるかもしれない。私たちに資金がない時、私たちは別のやり方をし、他の道を見つけなければならない。これが私が『ゲリラ戦法』と呼ぶものだ」

”ゲリラ兵”という成功法則だけではない。成功を掴んだ彼の、仕事に対する情熱や姿勢、企業や経営、革新についての非常に強いビジョンを取材し、これまでのキャリアを描いた本書は、ビジネスマインドを高める多くのヒントが隠されている。

フランス人の著者、ジェラール・ルラルジュ氏による「まえがき」をここに全文掲載しようと思う。

まえがき  ある人物との出会い

当時、ウブロのCEOで、現在はLVMHグループの時計部門(※ウブロ、タグ・ホイヤー、ゼニス)のプレジデントを務めるジャン-クロード・ビバーに、私が初めて出会ったのは、彼がワインビジネスクラブに招待され、腕時計におけるゴールドとラバーの組み合わせについて話していた時だった。

時計界の巨匠である彼は、スイスラグジュアリー産業のイメージを引き上げるのみならず、チーズまで製造していた。しかもそのチーズは、販売するためではなく、ニューヨークや東京、北京、ローザンヌなどで行われる彼の講演や取材、イベントの後に振る舞うためだそうだ。

この大物経営者は、友人ジャック・ピゲとともに1983年にブランパン社を2万2000スイスフラン(約1万9000ユーロ)で買収し、その約10年後に6000万スイスフラン(約5200万ユーロ)で売却したと大笑いしながら説明した。

ワインの愛好家でもあり、グラン・クリュ(※特級格付けワイン)をコレクションしている。そのなかには、1811年以降のすべてのヴィンテージのシャトー・ディケム(※フランスのソーテルヌ地区で育まれたブドウで醸造される世界3大貴き腐ふワインのひとつ)も含まれる。どんな時も笑顔を絶やさない68歳のこの男は、父であり、祖父である喜びにも溢れていた。

経営者である彼が代表を務めていた会社の売上高や利益率を見る限り、その経営哲学には高い競争力があるようだ。1983年にブランパンを復興させ、1993年からオメガを再編し、2004年にウブロを軌道に乗せた高級時計界の立役者である。また、タグ・ホイヤーのスマートウォッチ「コネクテッド」を開発し、責任者を務めるLVMHグループの売り上げを劇的に上昇させた実績ももつ。

彼の短いスピーチが終わると、私は少しでも彼と話して自分の名刺を渡したくて、 人ごみを押し分けながら彼のほうに向かった。彼は気さくに自身の名刺を差しだしてくれた! 後に私は、「ビバーの伝記を書きたい」という自らの企画を詳しく提案するために彼に手紙を書いた。数日後、黒インクで品のあるしっかりとした筆致の、美しい斜めの書体で綴られた直筆カードを受け取った。さらには、彼から朝の5時23分(!)に送信されたメールを受け取り、私たちはパリの高級ホテルで午前11時15分に会う約束をした。そして、11時に彼のアシスタントがSMSを送ってきた。

「15分ほど遅れそうです。ビバーは心から申し訳なく思っています」と。

いったいどれだけの大物経営者が、そんじょそこらの面会相手に対してそうした敬意を示すことができるだろうか。

彼は、バッグから私が送った企画書の紙を2枚取りだし、すべてを承諾してくれた。そして私は、後ほど答えてもらえるように、「プルーストの質問表」(※フランスの作家マルセル・プルーストによって有名になった、人生観や価値観を知るために考案された質問群)について話した。

「なぜ後ほどなんだ? 今やってしまおう」

私の企画は彼を魅了したのだ。

こうして、その後数ヵ月にわたって行われる取材が、パリや、ウブロの本社・工房があるジュネーブ近郊の町ニヨンで始まった。
 
個人的にはそれらの取材と本書の執筆は非常に楽しかった。ビバーも、彼ならではの経歴を、いかにも彼らしい情熱と熱狂で描きだせたことを楽しんでくれたと思う。

読者の皆様にとっても、高級時計製造の仕事やビジネス界において、個性的で誰もが認める立役者と出会うことができる、あるいはより深く知ることができる素晴らしい体験になればと思う。まさに彼は、スイス時計製造業の真の魔術師なのだ。

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LVMH部門グループ時計部門プレジデント
ジャン-クロード・ビバーの経営学
『間違える勇気。』
幻冬舎 ¥1,400