岡崎慎司、移籍を語る。「帰国という選択肢はない。新たな壁を求めて新天地へ!」

ワールドカップロシア大会後、代表引退を表明する選手が相次いだなか、岡崎慎司は2022年のW杯を目指すと宣言。コパ・アメリカで、約1年ぶりに日本代表に選出されたストライカーの魂を伝える短期連載「岡崎慎司 挑戦の心得④」。


4大リーグといわれる舞台で戦い続けたい

ブラジルで行われたコパアメリカで2試合に先発し、若い日本代表のなかでその存在感を示した岡崎慎司。グループリーグ敗退で日本代表の大会は終わったその直後、一部報道でJリーグのヴィッセル神戸への加入の可能性が報じられた。もう33歳、帰国すると考える人がいるのも当然だろう。

2011年にドイツへ渡り、その後4シーズン、プレーしたプレミアリーグのレスターを退団。現在、新たな所属先を探している状態だが、岡崎の胸中には、帰国という選択肢は一切ない。欧州の、できれば4大リーグと言われる舞台で戦い続けたいと話した。

「レスターに来て、一番良かったのは、ハングリーさを思い出したことです」

岡崎がレスターへ移籍したのは29歳のときだった。日本代表としてふたつのワールドカップ出場を経験し、代表チーム内には若い選手たちも増えた。自然と日本代表の未来、若い選手たちの成長……そんなことを考える年齢になっていた。

「僕が加入する前シーズン、残留争いを戦っていたレスターには、2部や3部などの下部クラブでプレーしていた選手も多かった。でも、チームメイトの誰もが上を目指す貪欲さに満ち溢れていた」

リーグ得点王に輝き、イングランド代表入りも果たしたFWのジェイミー・ヴァーディは、アマチュアリーグからそのキャリアをスタートさせた。現在はチェルシーでプレーするカンテもフランス3部リーグからレスターへ移籍。今やフランス代表の中心選手だ。無名の存在から飛躍した例はこのふたつに限らない。そんなチームメイトの姿が気づかせてくれた。

「若手にかまっている場合じゃないだろうって考えるようになりました。まだまだ、自分の可能性を貪欲に追求し続けたい」

4年間過ごしたプレミアリーグでは、思うような出場機会が得られず、結局は「豊富な運動量での献身的な岡崎慎司」というイメージを覆すことができなかった。本来ならそこに「得点力」も付け加えたかったのだが……。

「プレミアリーグでの挑戦を続けたいという気持ちもあります。ただ、自分の33歳という年齢を考えると、『いろいろなリーグでプレーしたい』という欲を優先させるべきなのかもしれません。日本、ドイツ、イングランドでプレーしてきた僕が、たとえばスペインやイタリアなどでプレーすれば、また違った発見があると思うんです。リーグが変われば、サッカーも変わるし、監督や選手も違う。経験したことのない新たな環境に挑戦すれば、新しい僕と出会えるかもしれないから」

プロとしてのキャリアのなかで、さまざまな壁にぶつかってきた。それを攻略するたびに成長を実感できた。環境を変えるというのは、壁を探しに行くことなのかもしれない。

岡崎がレスターで「反骨心」や「貪欲さ」を自身に課すことができたのは、壁を前にして、その必要性を感じたからだ。壁にぶつかり、歯がゆさ、悔しさ、理不尽さ、やりきれない想い……あらゆるネガティブな感情を味わいながら、打開策を思考し、挑戦する。

そんな実体験こそが、キャリアとなる。成長にとって「壁」は欠かせない。

だから、22歳以下の東京五輪代表世代と過ごす時間について訊いたとき、岡崎は「壁」という言葉を口にしたのだろう。

「結構、僕が若い選手にいろいろな質問することも多い。僕自身、彼らのいる環境に興味があったりもするので。僕らの思考や意識というのは、10年分の体験を経て生まれたもの。でも、彼ら若手はまだその体験をしていない。話を聞きながら、『これから先、きっとこんな壁が待っているのかもしれないな』と感じることもあります。でも、彼らにそんな『壁』については話さない。今、話しても意味がないから」

先輩面をして、経験談を披露する。それはある種、親心のようなものかもしれないが、未だ目にしていない壁について、話したとして、説得力は乏しい。聞く側が「必要だ」と思わなければ経験談は活きない。なにより「壁」を発見し、それを攻略したいと考えることこそが大事だからだ。

もちろん、「いつかこういう壁が来る」と将来に備えることも重要だ。けれど、どんな準備をしても避けられない壁は必ずある。いかに有効なアドバイスであっても、決断し、行動するのは、自分自身でしかない。そういう厳しさを味わってきた岡崎だから、新たな壁を求めて、新天地へ挑戦するのだろう。

Shinji Okazaki
1986年兵庫県生まれ。2018年、ロシアワールドカップのメンバーに選出され、W杯3大会連続出場を果たす。2019年、キリンチャレンジカップのメンバーに選出され、森保体制での代表初招集。コパ・アメリカ2019のメンバーにも選出された。国際Aマッチ 115試合 50得点 (2019年6月1日現在)。


Text=寺野典子