【中田英寿/に・ほ・ん・も・の外伝】ゼロ・ウェイストの町に誕生した「HOTEL WHY」<徳島③>

2009年から’15年の約6年半、のべ500日以上をかけて、47都道府県、2000近くの場所を訪れた中田英寿。世界に誇る日本の伝統・文化・農業・ものづくりに触れ、さまざまなものを学んだ中田が、再び旅に出た。

“ごみゼロ化”をテーマした新しい町づくり

阿波晩茶づくりでも訪れた上勝町は、勝浦川上流にある山あいの町だ。人口は、 1494人と四国の町のなかで最も少ない(2020年10月1日現在 )が、そのぶん自然にあふれた魅力的な場所だ。この上勝町に今年5月オープン、話題となっているのが、ゼロ・ウェイストアクションホテル「HOTEL WHY」。県道16号線をクルマで走っていると、濃い緑の景色のなかにレンガ色の個性的な建築物が見えてくる。上空から見ると“?”の形になっているというこの施設は、上勝町ゼロ・ウェイストセンター。?の記号の“・”の部分が宿泊施設「HOTEL WHY」になっている。

ちょっと風変わりな名前の由来は、「なぜごみを捨てるのか?」という問いかけ。実は上勝町は、日本で初めて「ゼロ・ウェイスト宣言」を行い、45種類の分別など、様々なごみゼロ化の取り組みを行っている。この上勝町ゼロ・ウェイストセンターは、町の人がごみを持ち寄る施設で、その一角がホテルになっているのだ。ここに持ち寄られたごみは、約80%がリサイクルされているそう。一般的には、約20%だというからかなり高い数字といえるが、上勝町ではさらなる努力でゼロ・ウェイストを目指しているそう。

「この施設ができる前は、どういう場所だったんですか?」(中田英寿)

「ここではもともと野焼きをしていたんです。でも水源地でもある上勝町がそんなことではいけないということになり、このごみ処理施設がつくられることになりました」(HOTEL WHY・大塚桃奈さん)

「 このホテルも町の廃材が使われているんですよね 」(中田)

「はい、廃材や窓枠など、町の人が持ち寄った資材でつくられています。上勝町ではごみの収集がないのですが、ここにみんながごみや不用品を持ち寄ることで、コミュニケーションや学びの場所にもなっています」(大塚さん)

設計を担当したのは、注目の若手建築家の中村拓志さん。個性的な外観に反してインテリアは落ち着いた雰囲気。部屋の窓からは上勝町の豊かな自然を望むことができ、とても居心地がいい。

「このホテルをつくることで、上勝町の外の方々にもゼロ・ウェイストやSDGsについてについて学んでいただく機会になればいいなと思っています」(大塚さん)

部屋は全4室のメゾネットタイプ。星付きのレストランがあるわけではなく、大きな露天風呂があるわけでもない。使い捨てのアメニティがないのも、ホテルのコンセプトを考えれば当然だ。夕方をすぎればクルマの通りもほとんどなく、一番近いコンビニまでもクルマで30分近くかかる。だが、この不便さが新鮮かつ気持ちいい。ラグジュアリーの新しいカタチを見つけたような気がした。

「に・ほ・ん・も・の」とは
中田英寿が全国を旅して出会った、日本の本物とその作り手を紹介し、多くの人に知ってもらうきっかけをつくるメディア。食・宿・伝統など日本の誇れる文化を、日本語と英語で世界中に発信している。2018年には書籍化され、この本も英語・繁体語に翻訳。さらに簡体語・タイ語版も出版される予定だ。
https://nihonmono.jp/

Composition=川上康介 Photograph=淺田 創

中田英寿
中田英寿
1977年生まれ。日本、ヨーロッパでサッカー選手として活躍。W杯は3大会続出場。2006年に現役引退後は、国内外の旅を続ける。2016年、日本文化のPRを手がける「JAPAN CRAFT SAKE COMPANY」を設立。
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