【小山薫堂×小池アミイゴ】恋草、炎節、昧爽……羽田空港ロビーで見かける「旅する日本語」って?

羽田空港の出発チェックインロビーで頭上を見上げると、 壁面に巨大なアートギャラリーが広がっているのに気づくだろう。 放送作家・脚本家の小山薫堂が旅にまつわる小さな物語を執筆し、 イラストレーターの小池アミイゴが 色鮮やかな絵画を描いた「旅する日本語」展、全11作品だ。 旅の物語に命を吹き込んだふたりが羽田空港に集い、互いの作品への想いを語り合った。


「日本語って面白いな」と、感じてもらうために

小山薫堂(以下、小山) アミイゴさんと最初に対談したのが、2年前でしたよね。見た目通り個性的で、破天荒で、アーティスティックな方という印象でした。でもそういった人となりとは裏腹に描く絵には温もりがあって、その土地に向けられた優しさに溢れていました。

小池アミイゴ(以下、小池) その点は確かに意識していますね。東日本大震災の後に被災地を巡った先で、自分が何をしたいのかを考えて出した結論が、美しいものを描こうということでした。悲惨なものを描くのは他の人にまかせて、ぼくは美しいものを探して次の時代に必要とされる絵を描いていこうと決めたんです。ここにけっこう本気で向き合ってきて、やっと辿り着いたのが今の絵柄なんです。

小山 そのアミイゴさんらしい機微を伝えるタッチの優しさが、羽田空港を訪れる人の心にも、旅情をほのかに立ち昇らせることを期待して、今回の絵をお願いしました。ただ、後で知ってびっくりしたのですが、実は「旅する日本語」展を知っていたとか。

小池 はい。もともと、片岡鶴太郎さんが担当されていた一昨年の絵を羽田空港に来た際に目にしていました。それこそ一緒にいたカミさんと「作品がこんな風にダイナミックに飾られるのってすごくいいよね。いつかぼくもやりたいな」と話していて。以来、空港という特別な場所で、もしぼくの作品が飾られるなら、どういった絵が求められるのかという視点が頭の片隅に芽生えました。だから、薫堂さんから今回の話を依頼されたときは「やります」と即答しました。

小山 実際に描く際はどこを意識しましたか?

小池 羽田空港を利用する方々が絵を見た先で、自分のストーリーと絡めて想像を膨らませていただくには、どういったものを描かなければならないのか。ぼくの絵がどういう役目を果たすべきなのかを考えました。結論として、空港を利用する方のストーリーと小山さんが紡いだ言葉との間をしっかりとリンクさせる絵になることを意識しました。そのため絵を絵空事なものにしないように、自分の記憶の一片にも触れるものにしようと、常日頃から色々な風景を素材として撮りためている、ざっと4万枚の写真の中からモチーフになるものを精査していく作業が辛かったです。

でも素材さえ絞り込めたら、後の描く過程は、喜びそのもの。自分の人生へのご褒美でした。それこそ羽田空港と愛し合うように向き合って一気に描き上げました。薫堂さんは、こうしてふたりで作った作品を、空港を利用される方にどんなところに注目して見て欲しいですか?

小山 今年は「旅する日本語」展に協賛いただくクライアント企業各社のイメージと重ねてエッセイを書いた点が昨年までと異なります。例えば、富士フイルムさんの場合は、イメージとしてカメラや写真を想起しました。僕自身が子供の頃から写真を撮るのが好きで、「カメラのことは全部祖父から教わった。」という書き出しは幼少期の実際のエピソードを投影させたものです。やはり、作品を見ることによって、日本語って面白いなと感じてもらい、辞書を捲る気にでもなってもらえたら嬉しいですね。その先にお気に入りの言葉との出会いがあればなおさらいい。

そういった意味では、今年もまた読者の皆さんにも参加していただける投稿キャンペーンを行います。今回はイメージをどう膨らませるか妄想の扱い方に心を配ってほしい。妄想というのは、えてして心の中の憧れを表出させたものだったりします。だから、自分が旅先で経験したいことや出会ってみたい人を妄想しながら言葉を探してほしいですね。その先に自分が物語の主人公だという意識が芽生えて、実際に出会いに彩られた、旅のドラマを引き寄せていただけたら幸いです。

小池 いいですね。僕が風景を描く理由も、やっぱり人との出会いなんです。絵の裏には自分のアナザーストーリーが埋まっている。どの絵にも思い浮かべられる顔がある。慎ましやかで心優しい、あるいは心弱き人。その出会いが、ささやかだけれども劇的な風景に出会わせてくれる。そして、なんでもない風景が愛おしいものになる。だから、自分を信じて、自分が主役になって「旅する日本語投稿キャンペーン」に投稿してほしいと思います。


旅する日本語展 2018
国内線第1旅客ターミナル2階南北出発チェックインロビーにて「11」の日本語をテーマにした放送作家・脚本家の小山薫堂による旅の物語と、イラストレーターの小池アミイゴが色鮮やかな絵画を展示中(2019年の3月31日まで)。旅する日本語投稿キャンペーンも、2018年7月1日から開始予定。詳しくは公式HPまで。
https://event.tokyo-airport-bldg.co.jp/tabisuru/


Amigo Koike
1962年群馬県生まれ。長澤節主催のセツモードセミナーで絵と生き方を学ぶ。1988年よりフリーのイラストレーターとして活動。併せて音楽家や地方発信のムーブメントをサポート、展覧会や音楽イベント、ワークショップ開催を重ねる。2011年3月11日以降日本各地を巡り個展「東日本」に結実。絵本「とうだい」(作:斎藤倫、福音館書店)作画担当。東京イラストレーターズソサエティ理事。


小山薫堂
小山薫堂
放送作家、脚本家。1964年熊本県生まれ。『料理の鉄人』など多くのTV番組を企画。脚本を手がけた映画『おくりびと』では、アカデミー賞外国語映画賞受賞。名レストランの経営手腕にも注目が集まる。
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