【シリーズ秘書】あの孫正義を10秒で説得した瞬速プレゼン術<後編>

傍らにいると「焼け死ぬ」と怖れられたほど、アグレッシブに働く孫 正義社長。その元秘書・三木雄信氏は、秘書からプロジェクトマネージャーを任され、現在は独立、経営者として活躍するまさに元祖「2.0の秘書」だ。その彼が会得した最強のコミュニケーションスキル、瞬速プレゼン術〈後編〉を公開!!


⑥情報を与えれば人は動く。情報とは「DIKW」の法則があると知る

承認を得るには相手にふさわしいレベルの情報提示もカギ。情報にはData(データ)、Information(情報)、Knowledge(知識)、Wisdom(知恵)の4レベルあり、役員以上が求めるのは知恵。単なるデータをそこまで加工して提供してこそ、相手を動かせるのです。リスクを怖れる上司や新たな挑戦の提案には、敢えて失敗を織りこんだ説明をするように。そのうえでリスクをカバーする策も用意し、目標達成の道筋を見せれば、了承を得やすくなります。


⑦メールは3回以上やりとりしない

メールは一見便利ですが、コミュニケーションツールとしては非効率的。同じ内容を伝えるなら、文字を打つより口頭のほうが速いし、相手がいつメールを開き、返信してくれるかも不明。質疑応答など始まろうものなら、何度やりとりをすることになるか。メールより電話、電話より対面。相手の表情を見れば、真意がわかりますし、行き違いも起こりにくいはず。居合い斬りは、対面だからこそ成り立つのです。メールするにしても、やりとりは3 回まで。社内なら挨拶文なしで、3行以内に収めるように。


⑧10秒考えても答えが出ないことは、人に聞け

「10秒以上考えるな」。これは、孫社長の口癖のひとつ。「人間ひとりの能力には限りがある。10秒考えても答えが出ないなら、他の人に意見を聞くなり、チームで議論するなりして、即座に解決せよ」というわけです。10秒で判断できない=情報や権限が不足しているということ。ならば、必要な情報を入手し、承認する権限を持つ人に当たれば、道は開けます。最速で成果をあげるためには、短時間で多くの人とコミュニケーションをとりましょう。


⑨他の部署の社員から「便利なヤツ」と思われよ

私の元には、各部署から「この案件について社長に了承をもらってほしい」と、多くの依頼が持ちこまれました。それを処理するうちに〝便利なヤツ〞と認知され、周囲が情報を提供してくれ、社内人脈も広がったのです。秘書の役目は、会社の意思決定に必要な情報と権限を揃え、会社に利益をもたらすこと。秘書道を極めると、プロジェクトマネージャーになるのです。時には、皆
の前で、社長に叱られるような発言をしたこともあります。その結果、周りも遠慮なく意見が出せ、議論が活発化。怒られるのも、秘書の仕事と心得てください。


⑩人に依頼した仕事は「7日」で刈り取れ

人に依頼した仕事の締め切りは1 週間後に設定しています。2 週間後だと、間が空きすぎてペースダウンしたり、忘れる危険性がありますし、1 週間未満だと、時間が足りない、他の仕事と被って手が回らない場合がありますから。もっとも、孫社長からは「経営用語を3 日で1 万語集めろ」といった無茶ぶりをされましたが(笑)。なので自分の仕事も、設定した締め切りはオーバーワークをしても厳守。ひとつ残すと、それが重しになって、次々仕事がたまってしまいますよ。


⑪調べ物はネットでしない。本屋に3時間いればたいていの分野で専門家になれる

孫社長に「3 日で経営用語1万語を集めろ」を仰せつかった時、私が活用したのは書店。経営関連の書棚で、役立ちそうなタイトルの本を手に取り、さらに、そこで目に留まった言葉がタイトルに入っている本を読み漁りました。「財務」を冠した本から「資金調達」といった言葉を見つけ、「資金調達」から「株式発行」というように、ブレイクダウンしながら。ネットは便利ですが、情報は玉石混合。便利なツールに安易に頼らないことも大切です。


短時間で、成果を導く「瞬速プレゼン」術。ソフトバンク時代に培った最強のコミュニケーションテクを、解説。効率よく働くヒントが詰まった1 冊。

『孫社長のYESを10秒で連発した瞬速プレゼン』
三木雄信 著
すばる舎 ¥1,400


Takenobu Miki
1972年福岡県生まれ。東京大学卒業後、三菱地所を経て、ソフトバンクに入社。社長室長やプロジェクトマネージャーを務めた後、2006年「トライオン」設立。現在は英語習得プログラム、「TORAIZ」運営のほか、他社のプロジェクトマネジメント支援なども行っている。

Text=村上早苗 Photograph=Getty Images