15歳の張本智和が教えてくれる 世界との戦い方 〜ビジネスパーソンの実践的言語学24

最近、説明や謝罪時の、違和感のある言葉遣いが話題になりがちだ。当コラムでは、実際の発言を例にとり、公私の場で失敗しない言葉の用い方を考える。ビジネスパーソンのための実践言語学講座、いざ開講!


「研究されても自分のプレーを貫くのと、試合中に常に変化することが大事だと思う」ーーー卓球男子シングルス ワールドツアー・グランドファイナルで優勝した張本智和選手

15歳で世界を制するのは、どんな気持ちなのだろうか。12月16日、韓国・仁川で行われた卓球グランドファイナルで張本智和選手が史上最年少の15歳でシングルス優勝。決勝では世界ランク4位、中国の林高遠を4−1で下したが、この大会で失ったセットは決勝も含めてわずかに2。世界の強豪が集まる場で圧倒的な強さを見せつけた。

優勝直後のインタビューでは、「(お母さんが初めて海外の試合に来て、)優勝を見せたいと思っていたけど、こんなにすごいものを見せられて自分もびっくり」と15歳らしく初々しい発言もしていたが、凱旋帰国した際のインタビューでは、「ますます研究されるなか、どのように対応していくか」と問われ、次のようにこたえた。

「研究されても自分のプレーを貫くのと、試合中に常に変化することが大事だと思う。相手の変化にもしっかり対応していきたい」

「チョレイ!」のかけ声の印象か、強気一辺倒の選手に思えていたが、やはりそれだけでは世界を制することはできないのだろう。イチローも大谷翔平もメジャーに行ってからフォームを変えたが、それは自分のプレーを貫くためだ。自分を貫くことと、状況に応じて変化すること。スポーツでも、ビジネスでも、あるいは他の分野でも、このアンビバレントな状態を保てなければ、大きな舞台で勝つことはできないだろう。

張本は優勝賞金の10万ドルについて、「貯金です。せめて自分が19、20歳になるまで、すべて貯金だと思います」と語り、自分へのご褒美は「この優勝で十分です」。だがもちろんここで満足はしていない。

「今回みたいに100点の時もあったし、20点や30点の時もあった。(来年は)安定して80、90点台のプレーを出せるようにしたい」

100点ではなく、「80、90点」というあたりが冷静だ。相手やコンディションによっては、100点を出せないこともありうる。それでも勝てるのが「80、90点」ということなのだろう。決しておごらず、常に謙虚。ひたむきに前に進む勝者に死角はない。自分を貫いているか、状況に柔軟に対応できているか、謙虚か、ひたむきか……。15歳の彼を見て、我が身を振り返ってみてはどうだろうか。

次回に続く

Text=星野三千雄 Photograph=Getty Images


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