サッカー日本代表・森保監督の言葉に感じる不安な上司像・組織像~ビジネスパーソンの言語学78

最近、説明や謝罪時の、違和感のある言葉遣いが話題になりがちだ。当コラムでは、実際の発言を例にとり、公私の場で失敗しない言葉の用い方を考える。ビジネスパーソンのための実践言語学講座78、いざ開講!    


「勝負勘というものを若い選手が培ってほしい」―――U−23アジア選手権で2連敗を喫しGL敗退が決まった日本代表の森保一監督

見ていて、勝てるような気がしない。圧倒的な実力差があるとは思えないのに、相手に余裕を与えてしまっている。U−23アジア選手権でサウジアラビア、シリアに連敗。まさかのグループリーグ敗退が決まったU−23日本代表。シリア戦では、シュート数が日本21本に対して、シリア7本で、ポゼッション率は7:3。だが、日本はボールを保持しているというよりも“持たされている”といった印象。日本は明らかに攻めあぐねていた。海外組を招集できず、個の力が劣っていたのは事実だろう。それでも目前に迫った自国開催の五輪で金メダルを目指すには、2試合ともあまりにもお粗末な試合内容だった。

「先制点は許したものの勝利できたかもしれないという内容を2試合とも落としているので、勝負強さのところを詰めていかなければいけない」

「最後の時間帯、苦しくなったところを凌ぐというのを試合前からも言っていたが、勝負勘というものを若い選手が培ってほしい」

いずれもシリア戦後の森保一監督のコメントだ。この期に及んで「勝負強さ」や「勝負勘」といった言葉が出てくるあたりにどこか無責任な印象を受けたのは、私だけだろうか。この言葉から選手は何かを感じることができるのだろうか。もっと具体的な指摘、あるいはチームを鼓舞し、選手を叱咤するような言葉があってほしかった。

たとえば、企業において結果を出せないプロジェクトがあったとする。その結果を見たリーダーがこんなことを言ったとしたら、部下はポカンとするしかないだろう。戦略が間違っていたのか、チーム編成の問題なのか、チームのどこを改善すべきなのか。具体的な指示を出せないリーダーがいるとしたら、そのチームの問題点は明らかにリーダー自身にある。こうなると頼りになるのは、そのリーダーを指名した“経営陣”ということになるのだが……。

「自分としては間違った戦い方をしているとは思っていません」(関塚隆・日本サッカー協会技術委員長)

こちらもどこかのん気なコメント。間違っていないのであれば、なぜ結果がともなわないのか。また結果に対してどのようにリーダー、経営陣が責任をとっていくつもりなのか。15日のカタール戦次第では、監督更迭もありうる。そうなれば、その上司たちの責任も問われるべきだろう。森保監督は、「選手たちにも成長の糧にしてもらうために最後まで戦う」と語ったが、まずはこの2試合の敗戦を自らのリーダーシップ、指導力の成長の糧にしてほしい。

Text=星野三千雄 Photograph=Getty Images