原晋監督は箱根の敗戦からどんな未来をつくるのか? 〜ビジネスパーソンの実践的言語学26

最近、説明や謝罪時の、違和感のある言葉遣いが話題になりがちだ。当コラムでは、実際の発言を例にとり、公私の場で失敗しない言葉の用い方を考える。ビジネスパーソンのための実践言語学講座、いざ開講!


「現状維持は退化でしかありません。常にチャレンジ精神がないと勝ち続けられません」ーーー5連覇を目指した箱根駅伝で2位に終わった青山学院大学 陸上競技部・原晋監督

青山学院大学の箱根駅伝5連覇の夢は、大会新記録を叩き出した東海大学の前に砕け散った。10月に出雲駅伝、11月に全日本駅伝を制し、"史上最強"との呼び声が高かった青学大。個々の選手の力だけを比べれば、5連覇は確実と思われた今大会だったが、往路での小さなミスにより優勝を逃すことになった。

「甘えがあった。50歳を過ぎて優しくなってしまった。こだわり、しつこさがなくなった。私自身、もっと心を鍛えないといけない」

敗戦直後、そう語ったのは原晋監督。東海大の優勝を讃え、「われわれは良い負け方ができた」とは言うものの、その後に続くコメントは悔しさがにじみ出るものだった。

「連覇を重ねるごとに進化を恐れてしまった。現状維持は退化でしかありません。常にチャレンジ精神がないと勝ち続けられません」

2004年から青学大陸上部を指導してきた。「箱根駅伝に3年で出場、5年でシード権、10年で優勝争い」を宣言したものの、箱根駅伝出場を果たしたのは就任5年目の2009年。結果は22位だったが、この33年ぶりの出場から青学は箱根の常連となる。以後は、8位、9位、5位、8位、5位と徐々に順位を上げ、2015年に初優勝を果たすとここから破竹の4連覇を果たすことになる。

戦前に「ワクワク大作戦」「サンキュー大作戦」「ゴーゴー大作戦」などと作戦名をあげて、大会を盛り上げる役割も担っていた。ワイドショーやバラエティ番組にも引っ張りだこの明るいキャラクター。選手の自主性を重んじ、モチベーションを上げることにこだわった指導法は、いまの若者たちにフィットした。だが、そんな名将でも学生スポーツで結果を出し続けることは難しい。

大学なら4年、高校なら3年で選手が入れ替わる。トレーニングとスカウティングは常に同時進行だ。選手は若く、肉体的にも精神的にも安定感がない。駅伝は、個々のコンディションや天気にも左右される競技だ。五里霧中で一寸先は闇。今回原監督は、その恐ろしさを知ることになった。勝負に100%がありえないというのは、ビジネスの世界にも似ている。

名将は、いま必死に次の大作戦を考えているはずだ。駅伝無名校を10年余りで日本一にした手腕は疑う余地もない。だからこその復活が楽しみでもある。彼はこの敗戦をどう活かすのか。来年なのか、あるいは2、3年後になるのかわからない。だが、青学大が再び箱根の栄冠を掴んだとき、そこにはビジネス界でも通用するヒントがきっと隠されていることだろう。

Text=星野三千雄 Photograph=AFLO


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