本田圭佑の言語論『個の力をひとつにまとめるツールとなるのが言葉である』【本田思考。③】

サッカー選手 兼 監督 兼 投資家 兼 起業家・本田圭佑は、言葉を使うことで、自らをインスパイアし、 世界にサプライズを起こす。その脳にはどんな 言葉=「本田思考。」が隠されているだろうか。

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いつか英語圏でサッカーをしてみたいと思っていた

なぜ僕がオーストラリアリーグを選んだのか? その理由は、英語でサッカーができるということです。

これまで僕は、日本、オランダ、ロシア、イタリア、メキシコでプレイしてきました。日本以外は、まずは言語を覚えることからのスタートでした。英語は、ずっと勉強してきましたから、問題なくコミュニケーションできます。どの国に行っても、語学を身につける努力はしますから、ある程度の会話は可能になるのですが、やはり短い期間では限界があります。

サッカーはチームスポーツですから、コミュニケーションが大切です。FCバルセロナの全盛期を支えたメッシ、イニエスタ、シャビ・エルナンデスなどは、みなチームの下部組織カンテラで子供のころから一緒に過ごした仲間です。彼らの”あうんの呼吸"は、言葉を超えた関係性から生みだされていたのです。でも世界中から選手を寄せ集めたチームではそうはいきません。それぞれ違う環境で育ち、違う背景を持った選手が互いをリスペクトし、時には自分をサクリファイス(犠牲に)しながら、チームの勝利を目指します。

僕は、さまざまな国で、さまざまな言語でプレイをするなかで、いつか英語圏でサッカーをしてみたいと思うようになりました。言葉が不自由だと、自分のなかにどうしてもぬぐいきれない"もどかしさ"が残る。「言葉が通じれば、もっといいサッカーができるはず」という自分のなかの仮説を証明したかったのです。

この仮説は、代表チームでの経験から思いついたものです。代表はクラブと異なり、短い時間でチームを作り上げていかなければなりません。そのためにピッチの中でも外でも積極的に言葉を交わします。同じ日本語で話すから、細かいところまで追求でき、チーム力の向上につながる。この感覚はクラブチームにはないものです。サッカーでは、個人の技術やフィジカルを言葉でまとめて、チームができあがっていくのです。

12日の「AFCチャンピオンズリーグ2019」グループステージ第2節・サンフレッチェ広島戦では、後半に左足で滑り込みながら同点ゴールを決めた。試合は1-2で敗れたが、久々の日本凱旋試合で存在感を見せつけた。Licensed by Getty Images

メルボルン・ビクトリーというチームに来て、僕はこの仮説を証明できているような気がします。僕は英語を駆使して、これまで以上に選手同士や監督とのコミュニケーションを図るようにしました。それがチームの開幕からの好調にもつながっていたと自負しています。これからも、プレイと言葉でチームをまとめていきたいと思っています。

自動翻訳が進化すれば、言葉の壁はどんどんなくなっていくことでしょう。でも大切なのは、その先。言葉を使い、いかに互いに理解しあうことができるか。これはサッカーだけの問題ではありません。互いを思いあい、”あうんの呼吸"が生まれれば、世界から争いごともなくなるはず。これもまた僕が思いついたひとつの仮説です。いつか証明できればと思っています。

本田思考。④に続く

Composition=川上康介 Photograph=HONDA ESTILO





本田圭佑
本田圭佑
1986年大阪府生まれ。J リーグ名古屋グランパスエイトでプロデビュー。W杯に3大会連続で出場し、全大会でアシストと得点を記録。2020年2月、ブラジル1部ボタフォゴに入団。カンボジア代表の監督も兼務する。
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