知事選直前! 沖縄について考える 元NHKスクープ記者 立岩陽一郎のLIFE SHIFT 第10回

これまで華々しい実績を残してきたNHKを49歳にして去り、その翌日単身渡米、巨大エリートメディアを去った一人のジャーナリストによるエッセイ。第10回は沖縄の基地問題について。9月30日投開票の沖縄県知事選挙(13日告示)の前に、NHKでの沖縄駐在(1990年代前半)を経て、その後も幾度と沖縄を追いかけてきた筆者による普天間基地レポートを公開する。


普天間基地に潜入

坂道は左右交互にコンクリートの巨大なブロックが置かれ、我々の乗ったタクシーは蛇行しながらでないと前に進めない。

「普天間基地のゲートって、こんな感じだったかなぁ」

そう私がつぶやくと、ディレクターの上久保大輔君が反応した。

「立岩さんが前に来た時は、こんなじゃなかったんですか?」

「10年以上前だからね。記憶にないなぁ……911で警戒が厳しくなったのかもしれない」

2016年2月。私は、取材班を引き連れて沖縄県宜野湾市にある普天間基地のゲートに向かっていた。

タクシーは左右交互に大きなコンクリートの塊が置かれた坂道を上がる。イラクの自衛隊の駐屯地もそうだったが、爆薬を積んだトラックが突っ込む自爆テロなどを警戒しての造りなのだろう。

普天間基地に入るのが初めてとなる上久保君と曽根光カメラマンが緊張しているのは当然だろう。それはここが米軍の基地だからではない。この20年余り、ここが日米両政府と沖縄県が衝突する現場であり続けているからだ。

ゲートで、海兵隊広報の車に乗り換えて中に入る。すると3機のオスプレイが既に両翼についたプロペラを回転させていた。両翼が垂直に立ち、プロペラがヘリコプターの様に水平に回っている。その音の凄いのなんのって……これは私のボキャブラリーでは説明できない。耳元で大声で話さないと会話はできない……と言ってもイメージがわかないだろう。

整備士からヘルメットとライフジャケットを渡され、一通り使い方を教わる。ヘルメットをかぶると音が遮断されるので幾分落ち着く。

暫くして同じ格好をした海兵隊の広報官とともに轟音を発している1機に乗り込む。そこからは早い。我々へのサービスなのか、ハッチを開けたままオスプレイは上昇する。斜め上に向かっている感じだが、その感覚は飛行機ではなく、ヘリコプターのそれだ。

ハッチから見える滑走路が小さくなり、その周辺に芝生の緑が一瞬見えたと思ったら、直ぐに宜野湾市の街。あらためて市街地の真ん中に位置する普天間基地の存在を感じさせる。那覇市のベッドタウンである宜野湾市の中心部を貫く普天間基地。東京で言えば、世田谷区の真ん中にあるようなものだろう。

暫くすると、ヘリコプターから飛行機になる。変な表現だが、垂直に向いていた両翼を水平にするのだ。ここで事故になる可能性があると指摘されており、一瞬、身構えた。しかし、さほどの揺れも感じずに水平飛行に移行……つまりヘリコプターから飛行機にトランスフォーマーしたということだ。

そしてそれまで開いていた後部のハッチを閉め、オスプレイは速力を増した。

と、その時だ。

目の前に座っていた上久保の頭にピンク色の液体が落ちてきた。ドサッといった感じだ。彼が驚くのは当然だが、驚く以上に既に顔は真っ青だ。

「何の液体だ?」

轟音で会話ができないので表情で尋ねる。

「わかりません」

というポーズ。どうも、配管が故障して何かしらのオイルが漏れたようだが、飛行中で立つわけにもいかない。

何度も米軍の飛行機に乗っているが、こういう体験は初めてだ。

「やはりこの飛行機は事実上の試作品ということか……」

暫く飛行を続けると、後ろのハッチを開けてくれた。洋上だ。暫くすると、洋上に大きな船が見える。

強襲揚陸艦ボナム・リシャールだ。これが海兵隊の洋上の基地だ。大きい。形も大きさも、航空母艦とほぼ変わらない。ただし、航空母艦にはない機能がある。強襲揚陸機能だ。つまり、海兵隊を載せて海から上陸作戦を行うためのLCAC=上陸用舟艇などが船体の後部から発進できるようになっている。

直ぐに着艦。開いたままのハッチからエスコートされて艦内に入り、ヘルメットとライフジャケットを返して食堂に案内された。

食堂ではコーヒーが出され、海軍と海兵隊の広報官から一通りの説明を受ける。一般に海兵隊は小規模ながら、陸上兵力と航空兵力、海軍力を併せ持つ特別部隊と理解されるが、その基地となる強襲揚陸艦は海軍に所属する。

これから2泊3日、洋上での海兵隊の活動に密着するわけだが、この艦がどこにいるのかは教えられていない。時あたかも、北朝鮮が長距離弾道ミサイルを発射し、核実験を行っていた時期だけに、朝鮮半島近くとも考えられたが、逆に、そういう状況だっただけに位置情報については答えることを拒否された。

独立戦争で英国軍が所有する戦艦を奪うために組織されたのが始まりだという海兵隊。米軍は3部隊を展開している。これをMEF(メフ)=海兵遠征軍と呼ぶ。そのうちの第一、第二海兵遠征軍は米本土に駐屯している。3rd MEF(サード・メフ)=第三海兵遠征軍が沖縄に駐屯しており、普天間基地はそこに属する。

この艦に乗っている部隊がその主力で、31 MEU(ミュウ)と呼ばれる。日本語にするなら、第31海兵遠征部隊ということになる。その数2000人余り。沖縄から出たり入ったりしながら活動を行っているということだ。

みな、プロレスラーのような腕っぷしをしている。それもそうだと思うのは、多くの兵士が暇さえあれば艦内のジムでダンベルを持ち上げているからだ。

加えてルーティンの訓練もある。銃の分解、組み立てといった訓練や、格闘技の訓練。空母同様に広い甲板を使った救護の訓練も行われていた。

そんな隊員の訓練を広報官に付き添われながら取材していて、ふと目に入ったのが犬の世話をする隊員だった。2匹の黒い犬を、それぞれ2人の隊員が世話していた。

「あれは?」

「軍用犬です」

「行って良いですか?」

「ちょっと待っていてください」

広報官が犬を世話している隊員に話しかける。

「OKです」

近づいて隊員に話しかける。

「この犬は勿論、軍用犬?」

隊員がニヤっと笑って、「ええ、ペットじゃないですよ。彼女らも勇敢なマリーン(海兵隊員)です」

「彼女……メスかぁ」

すると、そのうちの1頭が私のところに来て身体を摺り寄せてきた。犬好きな私がしゃがんで抱いてやると嬉しそうな表情を見せた。

すると近くにいた広報官が口を開いた。

「驚いた。彼女らが隊員以外になつくなんて……」

直ぐに、「彼女」らの訓練が始まるという。それを見せてもらった。

前方に全身を厚手の布で覆った兵士が銃を構えている。犬を従えた隊員が、「止まれ」と言うが、兵士は前に進んでくる。

「行け!」

と言ったかどうかは聞き取れなかった。何かしらの合図が出され、その前まで私になついていた黒犬が獰猛な悪魔になっていた。猛スピードで兵士に襲い掛かる。その間僅か数秒だ。兵士は倒され、悪魔は兵士の首に巻かれた厚手の生地を噛み続けている。その激しさに息をのんだ。

そして相図。犬がまた隊員のもとに戻ってくる。

近づくと、また「彼女」はもとの可愛い犬に戻って私の足元に寄ってきた。その豹変ぶりに、「やっぱり犬って人間に似ている……」と、これは冗談。

これは、敵の勢力下で敵に出くわした時の訓練だという。海兵隊は敵の中に割って入るケースが多い。敵に囲まれている中で銃を使えば敵に気付かれてしまう。そういう時に、犬で敵を殺傷するのだという。

「他にはどういう役割を担うのですか?」

「地雷が疑われる時は先を歩かせます」

つまり……犬が歩いた場所の後を隊員が歩く。当然、犬が地雷を踏めば爆死する。そうしたら、別の道を行くということだ。

翌日、その具体的な事例を見ることになる。

翌朝、広報官から起こされた。これから襲撃訓練が行われるという。150人の海兵隊員が数で上回る敵の制圧している飛行場を奪還するのだという。

場所はオスプレイで1時間の島だという。恐らく米軍が飛行場を持っている伊江島だろう。

「行きますか?」

「当然です」

「では、30分後に出ますので準備してください」

上久保、曽根は既に準備をすませている。どんな状況になるかわからず、最小限の機材でオスプレイに乗り込んだ。

我々が甲板に出た時は既にオスプレイが次々に飛び立ち始めていた。地上を攻撃するハリアー戦闘機の姿はない。それらは既に「出撃」しているのだという。

そして完全装備の海兵隊員とともにオスプレイの最後の機に乗り込む。すし詰めだ。隊員は、みな愛想良く目で挨拶をしてくれ、その後は目をつむって静かにしている……もっとも騒音が凄くて会話ができる状況ではない。

そして1時間……しかし着陸しない、どころか降下のそぶりも見せない。オスプレイはヘリコプターのような垂直着陸ができるから、いきなり高度を下げて着陸することも可能だろう。しかし、周囲のオスプレイの動きを見るに、どうも旋回しているらしい。同じ場所をぐるぐる回っていることになる。

重装備の隊員達は、じっと目をつむっているが、これは正直、きついだろう。クッションのない椅子の上で同じ姿勢でいるのもきついが、先ずもって睡魔に襲われる。しかしいつ戦場に降りるかわからないので寝るわけにはいかない。

そしてほぼ2時間後だろうか、後ろのハッチが開き、1人がハッチの横に備え付けられていた機関銃を構えた。と同時に、急にオスプレイが揺れるエレベーターのような動きを始めて下降。直ぐにハッチの外が地上となった。

小隊長だろう。「外に出ろ」と手で合図している。次々に出る隊員。みな背中に大きな装備を抱え、小銃を構えながらオスプレイを出る。そして膝をついて銃を構える。

曽根にはカメラで隊員の動きを追ってもらい、私は上久保とともに指揮官が集まっている場所に小走りで向かった。

全隊員を吐き出したからだろう。オスプレイがこれまたもの凄い音を出して飛び立つ。上空には攻撃型のヘリコプターとハリアー戦闘機が舞っている。展開する海兵隊員。そこは戦場だった。

指揮官のところに全ての部隊から報告が寄せられてくる。そして指令が無線で発せられる。そのうち上空の航空機は全ていなくなった。艦に戻ったのだろう。

すると不思議なことが起きる。静寂さが辺りを包んだのだ。150人の重装備の隊員がその数倍の敵を攻撃する訓練なのだが、音ひとつ立てない。銃声もしない。聞こえるのはマイクに向かう指揮官の指示と、各地から無線を通じて聞こえる状況報告。

指揮官の場所から部隊が二手に分かれているのが見える。左手に飛行場。右手には草原が広がりその先に敵の陣地らしきものが見える。

実際の戦場は既に激しい銃撃戦となっているだろう。訓練は当然、それを想定している。面白いのは、それがコンピューター上で行われ、それに応じて実際に部隊が前進する点だ。だから誰一人走り回ったりはしない。当然、銃も撃たない。指示される通り前に進み、次の指示が出るまで静かに待つ。

副官が説明してくれた。

「数的に有利な相手を攻撃する際には、無駄な動きを一切なくす必要があります。その訓練です。マリーンの動きは全てGPSで管理しています。こちらの指示に従って動いているのか、その動きに無駄がないのか、全てチェックします」

「マリーン」とは海兵隊員のことだ。なるほどと思うついでに、副官に疑問をぶつけてみた。

「1時間で着く予定が2時間かかったのはなぜですか?」

「ハリアーと攻撃ヘリで敵を制圧する予定でしたが、それが思いのほか、敵の反撃が強固で、制圧に時間がかかったのです」

「それで更に1時間、上空で待ったわけですか。それも訓練ですか?」

「実戦は予定通りにいきませんから」

その間も指揮官と副官はパソコンを見て指示を出す。その時、飛行場を進む黒い犬が目に入った。

「あ!」

思わず声が出たのは、その行動の意味がわかったからだ。2匹の犬は飛行場の滑走路をゆっくりと進む。その後を銃を構えた隊員が腹ばいになって少しずつ前に進む。勿論、これは訓練だから犬が地雷を踏むことはない。しかし実戦では……。

「もういい。もう前に出るな」

2匹のけなげな姿を遠目に追いながら、心の中でそう叫んでいた。

そして1時間。飛行場を制圧。今度は敵の陣地に進む作戦が始まる。飛行場を制圧した部隊はそのまま側面から陣地に向かう。挟み撃ちだ。こうして2時間後には敵の陣地も制圧。

遺体の処理や捕虜の確保など、実際の戦場を想定した訓練が続く。そして夕方になると、我々を迎えるオスプレイが再び飛来。しかし隊員はそのまま残る。彼らは72時間、その場を死守することが求められるという。

艦に戻った私は、31MEUを統括するダスマルチ司令官に話をきいた。

「72時間あの飛行場を死守するというのはどういう意味があるのか?」

「海兵隊は何かあれば直ぐに動けます。それが海兵隊です。大統領が指示を出せば、直ぐに部隊が動く。それを即応戦力と呼んでいます。しかし、陸軍は動かせません。陸軍が動くのには数日かかります。そのため、海兵隊は奪還した地点を少なくとも72時間は死守しなければなりません」

「何があっても?」

「何があっても、です」

なるほど海兵隊とは軍事作戦をするのには使い勝手の良い部隊ということになる。しかし、知れば知るほど、疑問に思う点が出てくるのも事実だ。それを素直に尋ねてみた。

「海兵隊は陸、海、空の全てが揃っている部隊ということですよね?」

「そうです。全てが揃っているわけです」

「しかし、海軍といった場合ですが、この強襲揚陸艦は沖縄にはいないですよね」

司令官は頷いた。実は、海兵隊の洋上での基地となる強襲揚陸艦ボナム・リシャールは沖縄にはいないのだ。長崎県の佐世保が母港だからだ。そして洋上で隊員と合流するか、沖縄県勝連町にある米海軍基地ホワイトビーチに接岸して隊員や物資を載せる。オスプレイは我々がそうだったように、洋上で艦と合流する。

「ということは、普天間基地は沖縄になくても良いですよね? 強襲揚陸艦の母港である九州にあったって良いわけですよね?」

司令官の端正な顔を見る。彼は黙って質問を聞いていたが、こう言って返した。

「部隊と飛行機は近い方が良い。訓練するのにもその方が便利だ」

「近い方が良い?」

「近い方が便利なことは間違いない」

さすが、この翌月に首都ワシントンの海兵隊司令部に栄転した大佐だ。失言はしない。しかし彼は、「絶対に沖縄に必要だ」とは言わなかった。あくまでも、「近い方が便利」とだけ言った。これは、私は大事な点だと思った。つまり、普天間基地の代替施設は沖縄県内にあった方が海兵隊にとって便利だ。それはわかる。しかし、必ずなければいけないか? と問われればそうではないということなのだろう。

今、普天間基地の名護市辺野古への県内移設については、日米両政府ともに「普天間基地の危険を除去する唯一の解決策」としている。しかし以前は、米政府はそうは言っていなかった。沖縄県内移設を推進していたのは専ら日本政府であって、米政府は、「それ(普天間基地の代替施設をどこにするか)は日本の国内問題だ」としていた。

そう直接話してくれた米軍の専門家がいる。国防次官だったジョン・ヘイムレ氏だ。辞めて直ぐに首都ワシントンにあるシンクタンクCSISの代表に就任した生粋の国防官僚に2014年、私は取材で次の様に質問した。

「普天間基地の沖縄県外への移設は、米国側の要望だというのが日本政府の立場だが?」

「普天間基地の危険を除去しようというのは我々の立場だが、その代替地をどこにするかは日本の判断だ。我々は内政に干渉することはない」

「では、米側から見て、普天間基地の機能が沖縄からなくなると、何か懸念されることは有るのか?」

「こう答えたい。一般論だ。ある軍事施設がある場所からなくなる時、そこに力の真空地帯が生まれる。そうすると、そこに外部の軍事力が入り込む隙を与えることになる。それが最も懸念される問題だ」

「中国の活動が活発になるということか?」

「活発になる。それが最も適切な表現だろう」

「逆に問いたい。では、真空地帯が生まれない様にすれば、沖縄から普天間基地を移設する。つまり沖縄県外に持っていくことは可能か?」

ヘイムレ氏は少し考えている。数秒だろうが。そして言った。

「可能だ。少し時間をかけて、それと少し頭を使わないといけないけどね」

そういうことなのだ。「辺野古が唯一の解決策」などと言っているのは頭を使っていないからだ……と言って良いだろう。

海兵隊は台湾海峡での有事をにらんでいるという説もあるようだが、何れにせよ、普天間基地が沖縄県の外にあろうが、主力部隊である31MEUは沖縄に残る。そういう意味では、ヘイムレ氏が懸念する力の真空地帯が本当に生じるかも明確ではないかもしれない。

仮に、作戦が始まれば佐世保から強襲揚陸艦が出る。そこに九州のどこかから、或いは山口県の岩国基地からか、オスプレイが飛んできて洋上合流。そして沖縄のホワイトビーチで2000人と物資を積み込んで目的地に向かう……それだけのことだ。

私は別に日米安保条約に反対する立場というわけではない。しかし、海兵隊の行動パターンを見ていると、日本政府が強硬に主張する「普天間基地の危険性を除去する唯一の解決策は辺野古」というのは、事実とは思えない。

3日間の密着が終わり、我々は沖縄に戻る。部隊はそのまま米韓軍事演習に向かうので北上するのだろう。否、既に朝鮮半島に近い場所にいることを私は確認していた。艦橋に上がった際に航海データをチラ見したからだ。

そして、上久保らとオスプレイに乗り込んだ。どんな取材もそうだが、名残惜しいから不思議だ。そして艦を離れるオスプレイ。そして上空でヘリコプターから飛行機にトランスフォーマーして高速で沖縄へ。

ところが我々が着いたのは普天間基地ではなかった。普天間基地から更に北へ行った海兵隊の基地キャンプ・ハンセンだった。後で聞くと、普天間基地でトラブルが発生したとかで滑走路の利用を停止したのだという。

ところで、キャンプ・ハンセンも広大な敷地だ。その敷地内に難なく着陸するオスプレイ。それを見て上久保に言った。

「別に、新たに辺野古に基地を作るんじゃなくて、このキャンプ・ハンセンでもよかったんじゃないのかなぁ」

「そうですね。広さも十分ですよね」

一緒に降りた広報官が車を準備するという。オスプレイがまた宙を舞った。

「そう言えば、上久保君、あの液体って何だったのかな?」

思い出したくない話を持ち出されたのか、上久保が嫌な顔をして言った。

「エンジンオイルっぽかったです」

「それって、事故につながるような話だよな?」

「そうですよね」

我々はフラフラと空高く舞い上がっていくオスプレイを見上げていた。

立岩陽一郎
立岩陽一郎
調査報道を専門とする認定NPOを運営「ニュースのタネ」の編集長。一橋大学卒業。NHKで初めて戦場特派員としてイラク、クウェートを取材。社会部記者、1年間の米国留学の後、国際報道局デスクを経験するなど華々しいキャリアを築くも「パナマ文書」の取材を最後に49歳にしてNHKを辞職しその翌日渡米。現在は公益法人「政治資金センター」理事や毎日放送「ちちんぷいぷい」のレギュラー・コメンテータ、ニュースメディアへこれまで培ってきた報道の世界の鋭い目線で記事を提供するなど活動の幅は多岐に渡る。『トランプ王国の素顔ー元NHKスクープ記者が王国で観たものは』などの著書がある。近著は『トランプ報道のフェイクとファクト』。
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