本田圭佑「僕らアスリートは希望や勇気を与える存在でなければならない」

本田圭佑は、言葉を使うことで、自らをインスパイアし、世界にサプライズを起こす。その脳にはどんな言葉が隠されているのだろうか。連載【本田思考。17】

生きづらいと思っている人たちに少しでも勇気や元気を与えたい

ドイツのブンデスリーガはいち早くリスタートし、日本でもJリーグなどが再開。どんな混乱のなかでも人々はスポーツを求める。スポーツも含むエンタテインメントは、この状況においては“不要不急”の代名詞のような存在だ。それでも世界の誰もがスポーツを求め、再開を望んでいる。僕はスポーツを求めるのは、人間の本能なのではないかと思っている。

スポーツのいいところは、勝ち負けがはっきりしていて、そのプロセスが可視化されているということだ。ピュアでありフェア。だが、実社会はそうはいかない。ビジネスの世界においても、目に見えない力が働いたり、ルールぎりぎりのアンフェアが横行したりするのが当たり前だ。僕もビジネスをやっているので、それはそれで面白いと思うのだが、どちらがわかりやすく、ストレスがないかといえばやはりスポーツだろう。

だが、そんな社会で生きていればどうしてもストレスが溜まる。そこで人々は、その溜まったストレスをスポーツ観戦で解消するのだ。古代オリンピックが始まったのは、一説には紀元前9世紀だといわれている。はるか昔から、スポーツは人々の心を癒やしてきた。この混乱した、ストレスフルな時代だからこそ、人間の脳はスポーツを求めているのではないだろうか。

スポーツが果たすべき役割は大きい。だからこそ僕らアスリートは、常にピュアでフェアで、希望や勇気を与える存在でなければならない。僕自身は、このサッカーができない2ヵ月間、地球や人類のために何ができるかを考え、発信してきた。それが微々たる力だということは自覚している。自分の影響力がまだまだ足りないということもわかっている。それでも誰かがやらなければならないことだ。

責任感というよりは、使命感。自分がやることで生きづらいと感じている人たちに少しでも勇気や元気を与えることができればと思っている。

匿名のSNSで誰かを攻撃、誹謗中傷したいという人がいれば、僕のところにくればいい。何かを与えたり、教えたりすることはできないかもしれない。それでも彼らに寄り添うことくらいはできる。

僕は小さいころにサッカーに出会い、それに打ちこむ環境を与えてもらった。たくさん努力もしたが、それも環境を与えてもらったからこそ。もしそんな環境がなかったとしたら、僕も今ごろ誰かをSNSで攻撃していたかもしれない。そう思うからこそ、彼らに寄り添っていたいと思う。ストレスが溜まって誰かを攻撃したくなることもあるかもしれない。そんな時僕を攻撃することで少しでも心が休まるならそうすればいい。だが、それに飽きたら前向きに人生を歩いてほしい。小さいことかもしれない。でもそれも本田圭佑という人間に与えられた役割だと思っている。

本田がプロデュースするSOLTILO FAMILIA SOCCER SCHOOLも再開(写真は2017年撮影)©HONDA ESTILO

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Composition=川上康介

本田圭佑
本田圭佑
1986年大阪府生まれ。J リーグ名古屋グランパスエイトでプロデビュー。W杯に3大会連続で出場し、全大会でアシストと得点を記録。2020年2月、ブラジル1部ボタフォゴに入団。カンボジア代表の監督も兼務する。中高生のための月額1ドルのオンラインスクール「NowDo」を開校。
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