ビジネスと教養の親和性 ~中野信子 Passionable Brain~ 第3回

Passionable(常熱体質)とは、Passionとableを組み合わせた造語。仕事や遊びなど、あらゆることに対して常に情熱・熱狂を保ち続けられる=”常熱体質”である。今回は、戦国時代随一の教養人、蒲生氏郷(がもううじさと)をキーパーソンに「ビジネスと教養の親和性」について、脳科学の視点から解き明かす。

Key person:蒲生氏郷

テクノロジーが日進月歩で発展を続ける現代では、何事にも効率が優先し、即効性のある知識ばかりがもてはやされ、教養は軽視される傾向にあります。しかし、一流のビジネスパーソンを目指すのであれば教養は欠かせません。効率ばかりを追い求めていると、ものの見方がどんどん短期的、表層的になっていきます。

また、教養のない人はどんなに仕事ができたとしても周りから尊敬されることはありません。真の意味で成功を収めているリーダーたちはみな例外なく、幅広い知見や教養を身につけているもの。教養とは一見、仕事の成果と直接的な関係はないと思われがちですが、新たなアイデアのもととなり、さらには豊かな人間力を育み、周りからの尊敬を集めることにつながるのです。

安土桃山時代の戦国武将である蒲生氏郷は、織田信長と豊臣秀吉に仕え、その類まれなる才能を愛された人物。彼は数々の戦で武功をあげて名を馳せる一方で、当代きっての文化人でもありました。

特に茶の湯に関しては茶聖・千利休に学び、「利休七哲(しちてつ)」(利休の弟子のなかでも極めて優秀だった七名)の筆頭格とされるほど。戦国時代において茶の湯は武将に必須の教養。その静寂重厚な雰囲気は男たちにとって精神を休める癒しであると同時に、己の教養の高さを示す絶好の場でもありました。

戦場では自ら先陣に立ってリーダーシップを発揮しつつ、教養人としても誉れ高かった氏郷はまさに典型的な”文武両道”の人であり、家臣からの信頼も絶大なものだったのです。

充実した人生を送るためには、生涯を通して広い視野で学び続ける姿勢がとても大切。氏郷は利休七哲のひとりとして数えられるほどの教養人ですから、芸術をこよなく愛し、常に向上心を持って何事にも積極的に学んでいたのでしょう。

また、学びによって得られる発見は脳に刺激を与え、ドーパミンの分泌を促します。ドーパミンには集中力や創造力を高める働きがあるので、新しい発想なども生まれやすくなります。継続的な学びを実践し、豊かな教養を身につけることこそが、ビジネスで成功するための近道なのかもしれません。


中野信子
中野信子
脳科学者。1975年東京都生まれ。東京大学大学院医学系研究科脳神経医学専攻博士課程修了フランス国立研究所にて博士研究員として勤務後、帰国。現在は、東日本国際大学特任教授。脳や心理学をテーマに、研究や執筆を精力的に行う。著書に『サイコパス』、『脳内麻薬』など。『シャーデンフロイデ』(幻冬舎新書)が好評発売中。新刊『戦国武将の精神分析』(宝島社)が話題になっている。
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