ライバルに競り勝った坂本花織の底抜け"本番力" 〜ビジネスパーソンの実践的言語学25

最近、説明や謝罪時の、違和感のある言葉遣いが話題になりがちだ。当コラムでは、実際の発言を例にとり、公私の場で失敗しない言葉の用い方を考える。ビジネスパーソンのための実践言語学講座、いざ開講!


「いままでは視線がジャッジより下でしたが、フリーは『跳ぶから見てろ』という感じで、めっちゃジャッジを見て(笑)、ガッツリとノックアウトしました!」ーーー全日本フィギュアスケート選手権で優勝した坂本花織選手

トップアスリートの戦いは、技術や実力だけでは決まらない。本番のプレッシャーをはねのけ、自分のポテンシャルをどれだけ出せるか。12月23日に行われた全日本フィギュアスケート選手権で優勝した18歳の坂本花織選手は、そんなメンタルの強さを感じさせるスケーターだ。

大会5連覇を目指した2歳年上の宮原知子選手と、シニアデビューしていきなりグランドファイナルで優勝した2歳年下の紀平梨花選手の2人が注目されていた大会。先輩を追いかけていたつもりが、後輩に追いつかれ、追い抜かれかねない状況。坂本選手としては、「なにくそ」という思いもあったはずだ。

もともとダイナミックなジャンプには定評があった。だが、フィギュアスケートは"跳ぶ"競技ではない。歯を食いしばって必死の形相で高く跳ぶよりも、涼しげに、あるいは楽しげに跳び、"魅せる"演技をすることが重視される。平昌五輪では6位。さらに上を目指すために今シーズンは演技力を磨いてきた。その成果が大舞台で見事に発揮され、女王の座に輝いたのだ。

「いままでは視線がジャッジより下でしたが、フリーは『跳ぶから見てろ』という感じで、めっちゃジャッジを見て(笑)、ガッツリとノックアウトしました!」

この言葉だけを見れば、気の強い選手に思えるかもしれない。だが、実際は「鼓動が聞こえるくらい緊張していた」という。先に演技を終えた宮原、紀平の得点を抜くには、ノーミスの演技が求められる状況。そんなプレッシャーを力に変えて演じきったのは見事だ。さらにそのことを会見でケラケラ笑いながら話せる底抜けの明るさも彼女の武器。昨年の同大会でもダークホース的に2位に飛び込み、平昌五輪代表の座を得ている。ここ一番の勝負で力を発揮するタイプのアスリートなのだろう。

自分の言葉で、自分の気持ちを素直に表現できるのは、自信があるからこそだ。優等生的なコメントに終止するアスリートが増えてきたなかで、このくらい“やんちゃ”な言葉はむしろ気持ちいい。真面目に、謙虚に。もちろんそれは大切なことだ。だが、スポーツでもビジネスでも、ライバルを蹴散らし、大きな壁を突破するのは、「自分を見ろ!」というくらいの強い気持ちなのかもしれない。


Text=星野三千雄 Photograph=Getty Images


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