「奥さまは、なぜ、よそのパパや家庭と比較して責めてくるの?」 ~夫婦の悩みはアドラー心理学で解決①

仕事に情熱を燃やし、持てる力を精一杯発揮しているという自負はある。けれど、家庭でのパフォーマンスはというと……、なんだかビミョー。世間でもてはやされている育メンやイケダンを目指して努力しているのに、妻からの評価は、いっこうに上がらない。そんなパパたちに贈るアドラー式「夫婦関係の改善策」。 第一回は、「よその夫や家庭と比較される理由とは!?」。 

他者との比較の裏にあるのは、「自分をわかって」という気持ち

「○○さんの家は、毎週末ドライブに出かけるんだって」「毎朝保育園に送るのはパパの役目で、お迎えも平日2日はパパが担当しているそうよ」「○○さんのパパは、しょっちゅう子供と公園で遊んでいるのよね」。そんな妻の言葉からうかがえるのは、「それに比べてあなたは……」という、自分に対する不満。よその家庭や夫と比べられては、男のプライドはズタズタだ。

「そこで、『あそこのご主人は自営業で、時間が自由になるんだから当たり前だろ』などと妻を論破しても、事態は好転しません。というのも、妻がやっているのは、表層的には他者との比較ですが、その裏にあるのは『毎日家事と育児に追われて大変な自分のことをわかってほしい』『一生懸命頑張っている自分を認めてほしい』という気持ち。

つまり、“自分への共感”。

それを上手に表せないから、他者を持ち出して比較しているだけなのです」と語るのは、『アドラー式働き方改革 仕事も家庭も充実させたいパパのための本』『アドラー式子育て 家族を笑顔にしたいパパのための本』の著者である熊野英一さん。

共感ファーストが、相手を勇気づける

ここで夫がとるべき行動は、妻を論破することでも、「君だって」と非難することでもなく、彼女の気持ちに寄り添うこと。

「まずは、妻の言うことを黙って聞きましょう。途中で口をはさんだり、自分の意見や気持ちを述べたりするのはNG。話を聞きながら、頭の中で『次はこう言ってやろう』などと考えていては、妻にすぐ見透かされてしまいます。妻に憑依するようなイメージで、『○○さんのところは、毎週末ドライブに行くんだね』『○○パパは育メンなんだね』と、話を聴くのが大切。相手の目で見、相手の耳で聴き、相手の心で感じる。『共感ファースト』こそが大切なのです」

妻がどう思っていて、何を伝えたいのか“感じてみる”。それだけで妻は、「私を理解してくれた」と、心が少し和むはずだ。

「共感によって『自分のことをわかってくれた』と確認できれば、夫婦の問題解決に取り組む勇気が持てるようになります。アドラー心理学は、“勇気づけの心理学”とも言われますが、“勇気づけ”とは、困難を克服する活力を与えること。妻といっしょに前に進むためにも、共感ファーストで妻を勇気づけてください」

ちなみに、“勇気づけ”の反対語は“勇気くじき”。「どうせ~できない」「やっぱり、ダメだ」「うまくいきっこない」といったネガティブワードは、困難を克服する力を奪ってしまうと言う。

「勇気づけが家庭をはじめ、周囲に連鎖するように、勇気くじきもまた連鎖します。勇気づけを心がければ、きっと家族の笑顔が増えますよ」

共感はしても、同意や同情するのはNG

妻の気持ちを理解したら、次は、「○○さんのパパが公園で子供と遊んでいる時にどう思った?」「君はどうしてほしいの?」と、妻に“インタビュー”を。
「ただし、妻の意見に100%同意する必要はありません。妻の気持ちに本気で理解を示した後なら、『君の立場に立てば共感できるけれど、自分の立場からみると、その意見には同意できない』と言っても、相手は聴く耳を持ってくれるでしょう」

心しておきたいのは、共感は同意とは異なり、ましてや同情とも違うということ。同情は、相手を哀れむことから始まる“上から目線”の発想。それでは、かえって妻の反感を買うことになりかねない。妻との関係を改善しながら、こちらの意見を伝えるためにも、共感ファーストを忘れずに。

「共感ファーストもインタビューも一見難しいように思うかもしれませんが、すでに仕事では実践していると思いますよ。クライアントの立場になって求めるものを探り、考えや想いをヒアリングし、ゴールに向かって具体的に行動する。ほら、やっているでしょう?」

妻=クライアント。そう捉え、今日から早速実行すべし!

Today’s Advice
「夫婦関係を好転させるカギは“共感ファースト”」


Eiichi Kumano
アドラー心理学に基づく「親と上司の勇気づけ」のプロフェッショナル。日本アドラー心理学会正会員。1972年生まれ。早稲田大学政治経済学部を卒業し、メルセデス・ベンツ日本勤務の後、アメリカのインディアナ大学ケリー経営大学院に留学、MBAを取得。帰国後、保育サービス業などを経て、2007年、株式会社子育て支援を創業。著書に、『アドラー式働き方改革 仕事も家庭も充実させたいパパのための本』『アドラー式子育て 家族を笑顔にしたいパパのための本』(共に小学館クリエイティブ)などがある。
もっと悩みを解決したいなら、熊野英一さんの著書『アドラー式子育て 家族を笑顔にしたいパパのための本』(小学館クリエイティブ)をチェック。


Text=村上早苗 Photograph=鈴木克典