単なるジョークが悲劇を招く! 今は想像力を働かせて行動すべき時期~ビジネスパーソンの言語学87

最近、説明や謝罪時の、違和感のある言葉遣いが話題になりがちだ。当コラムでは、実際の発言を例にとり、公私の場で失敗しない言葉の用い方を考える。ビジネスパーソンのための実践言語学講座87、いざ開講!  

「もっと真剣に受け止めていればよかった。皆さんがそうしてくれることを望む」ーーー新型コロナウイルス検査で陽性と判明したNBAユタ・ジャズのルディ・ゴベール選手

先日、知り合いに電話したところ、まわりが騒がしい。あとでかけ直すかと尋ねると、驚きの答えが返ってきた。

「スポーツジムなので大丈夫です。ほとんど人もいないですし」

世間が新型コロナウイルス問題で右往左往しているこのタイミングで、危険とされているジム通い。もともと彼に会うアポイントをとるための電話だったが、話を適当に切り上げ、彼とは直接会わないことにした。

過度に恐れることはないと思う。特に子どもや若い人は、家に閉じこもっているなんて無理だろう。若くて健康で自分が重症化しないと思っていれば、普段通りに過ごしたいというのも理解できる。ただ忘れてはいけないのは、この新型コロナウイルスは感染力が恐ろしく強い病であり、まだ治療薬もワクチンも存在しないということだ。

NBAユタ・ジャズのルディ・ゴベール選手もこのウイルスの脅威を真剣に受け止めていなかった。だからこそ彼は、新型コロナの検査を受けたあともジョークのように他の選手の道具に触っていたという。そしてその後に陽性が判明。チームメイトの1人も感染していることがわかり、NBAはシーズンを中断することになった。渦中のゴベール選手は、NBAがSNSに投稿した動画で反省の弁を述べている。

「自分自身、そして周りの人を守ることが重要だ」

「この件についてもっと真剣に受け止めていればよかった。皆さんがそうしてくれることを望む。みんなが一緒になってできることだと思うから」

彼は新型コロナの被害者支援のために5万ドルの寄付を発表。自らの行動を心から反省しているのだろう。もちろん彼のせいだけでNBAが中断したとは思わない。世界中のスポーツの流れを見ると、彼の感染がなくても遅かれ早かれ中断の決断が行なわれていたのは間違いない。それでも彼の不用意かつ不用心な行動が中断のトリガーになったという事実は変わらない。

 私たちは感染されることと同様に、感染させることも恐れなければならない。もし会社員が感染してしまったら、その会社は否応なく仕事が停滞することになる。自分は大丈夫でも家族は大丈夫か? 同僚は大丈夫か? 友人は大丈夫か? そうやって想像力を働かせ、できるだけ危険から自らを遠ざける行動をとるのが、この時期のそれぞれの責任だ。「これくらいいいだろう」が、とんでもない結果を招きかねない。そうなってからでは遅いということを、私たちはゴベール選手から学ぶべきだろう。

Text=星野三千雄